狭い風呂場にアキラと二人。
立ちすくむアキラの腕をヒカルは引いた。
「お前ホントバカだよな。オレちゃんとここにいるだろ?」
安心させるように言ってポンポンとアキラの背に腕を回すとアキラを
抱きしめられた。その瞬間ヒカルは顔を染めた。
肌が直接触れればヒカルの状態なんてすぐにわかる。
ヒカルは小さくため息をついた。
たぶんちゃんと言わないとアキラにはわからないんだろう。
「あのな、お前・・・オレの中に入れただろう。
あのままほっとくとさ、まずいんだ。
だから、ほら・・・。」
それ以上は察してほしいとヒカルは風呂場から出て行け
とばかりにアキラに小突いた。
「不味いこと?」
それでもわからないアキラにじれてヒカルは怒鳴った。
「だから、・・・腹壊すんだって、お前頭いいんだから
察しろよ。」
顔を真っ赤にしてアキラを風呂場から追い出しにかかったが
アキラは動こうとしない。
「もう、お前がいたらオレ処理できねえだろ。そんなに心配だったら
風呂の前で待ってても・・・・、」
ヒカルが最後まで言う前にアキラに腕を掴まれた。
そのままアキラの全身と壁に押さえつけられた。
「あっ?」
アキラの欲情が伝わってくる。
「お前まさかまだ足りねえのか?あんなにやっただろ。」
『そうあんなにやった後なのに』・・・。
ヒカルはもう1度心の中でつぶやいた。
「ああ。足りない。君がもっとほしい。
けれど今は処理をしないといけないんだろう。」
アキラは視線をヒカルの下半身に落とした。
白濁した液体がヒカルの足を伝っていた。
アキラの中を欲望と独占欲がますます膨れ上がっていくようだった。
もっとヒカルが欲しい。
真っ白な雪上を土足で踏みつけるように、ヒカルのすべてを
自分のものにしたかった。
「すまなかった。僕の配慮が足りなかった。」
「もういいよ。次から気をつけてくれたらいい。」
ヒカルは小さくため息をついた。
流石にアキラもわかってくれたのだろう、その思った瞬間、
アキラの右手が思わぬところに伸びた。
「ちょっ、お前何やって。」
流石にあせってヒカルが腰をひねった瞬間逆に壁向きに押し込め
られた。
「あっ、」
心下ない声がヒカルの口から漏れる。
こんなことをされて感じるなんて気づかれたくなかった。
「・・・そんなのオレが自分でする。」
「責任は取る。」
ぬけぬけとそういったアキラをヒカルは恨んだ。
「そんな責任いらねえよ。
大体お前さっきもすげえ強引だったろ。
オレに惚れてるならもっとやさしくしろよ。」
ヒカルが抗議するとますますアキラは強引に指を押し入れた。
「やめ・・・、」
ヒカルは震える体を壁とアキラに預けるしかなかった。
「わかってる。でも君がこんなことに手馴れてるってわかった時
制御できなくなった。」
「なっ!!お前だって・・・手馴れてたろう。」
あれから4年もたっている。
あの頃のままなんてお互いありえるはずがない。
心の中で反論したらその返事が返ってきた。
「あれから4年、僕も君があの頃のままだとは
思っていないよ。
でも僕は今日正真正銘初めてなんだ。」
「・・・ウソ・・だろう?」
アキラからの返事はなかった。
そのかわりアキラの左腕がヒカルの腰を抱いた。
ますますヒカルの体が震えだす。
「やめろ、」
「ヒカル・・・。」
侵入した指が抜かれ代わりのものが押し当てられる。
ヒカルは抵抗するように体をゆすった。
けれど本能はアキラをもっと感じたいと叫んでいた。
アキラは侵入してこなかった。
ただそのまま互いの体を密着させただけで。
それがアキラなりの譲歩だったんだろう。
「ヒカル・・・。」
触れ合う肌と肌、指と指、そして心が痛くて苦しくなる。
「愛している・・・ヒカル。」
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