暗闇の中で 1





               
ここはどこだ?

ぼんやりと目をひらいた空は自分の置かれた状況を
理解できなかった。

真っ暗な暗闇だけが空の周りを覆っている。
その狭い空間に体を折り曲げるように横になっていた。


俺どうしちまったんだ?



確かいつもよりちょっとばかし遅い大学帰りに車に乗った
男らに声をかけられて・・・。それから・・?

それからの事を思い出そうとしても、朦朧とした意識とずきずきする頭の痛みで
思考がうまくまとまらない。


突然体に今まで響いていた振動が止まり空はなんとなくそこが
車の中だとわかった。

ハッチが開いて、懐中電灯の明かりが空に向けられる。
空は本能ちかく寝たフリをした。

「まだ寝ているな。」

低い男の声だった。

「はい。教授の言いつけどおり一番強い麻酔を打ちましたので。」

「運び出せ。」

男たちの会話に空はなんとなく今の状況を飲み込んだ。


こいつら俺を誘拐して身代金でも要求するつもりか?

だったら見る目ねえよな。俺には肉親も身よりと言えるもんもほとんど
ねえんだから。


でも・・・。

藤守と一緒の時でなくてよかったかも。

そんな事を考えていると教授ととばれた男が空の頬をゆっくりと撫で回した。
あまりの指の冷たさとその執拗な動きに空はぞわっと背筋が冷たくなった。

「これで2体ともそろったな。」

くつくつと地を這うような声だった。

それから数人の男に抱えられ俺は担架に乗せられると長い長い廊下を抜けて
小さな暗い部屋へと押し込まれた。


「いいか。教授からこいつらには・・・一切与えるなと言うことだ。」

「徹底的な・・・しと・・ーター収集を・・」

「・・・世界に一つ・・・せん貴・・・な検・・・だ から。」


途切れ途切れの男たちの声と響く足音が遠ざかると空はぼんやりと目をあけた。
冷たいコンクリートの床。
相変わらず暗い視界は一向に慣れそうにはなかった。



んんんんん・・・・・。ガチャ カチャ


突然部屋の隅で金属音と押し殺したような吐息が漏れた。
ひょっとして一人だと思っていた部屋に誰かいるのか?
そういえば2体とかこいつらとか言ってた?

 
「だれ・・かそこにいるのか?」


おそるおそる手づたいで音のする方に向かい部屋の片隅に視線を凝らす。

丁度その時隠れていた月あかりが鉄格子からその人物を照らしだす。
その瞬間空は息をのんだ。

「ふ・・じもり!!」


そこに繋がれていたのは傷だらけの藤守だったのだ。
                  

                       
                           
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2006年4月14日の日記に書いたお話を広げて連載します。
少し痛いお話になりそうです。