「ふ・・・じもり・・・」
よろよろと駆け寄ると藤守の表情が強張った。
そのときオレは気づいたのだ。
ぼろぼろになった藤守から特有のアノ臭いがするのを。
まさか・・・藤守 あいつらに・・。
あいつらへの怒りと自分のふがいなさとで行き場のないオレの拳が震えた。
「ナオ!!」
腕をのばすと抵抗しようとした藤守がおそるおそるオレの顔を見上げた。
目があった瞬間、二人を引き離すように
月の光が消えもとの闇へと戻される。
だけど藤守の温かさだけはちゃんとオレの腕にある。
「く・・・う・・・ちゃん・・?」
「ああオレだ。」
「なん・・・で・・?本当にくぅちゃんなの?なんでここに?」
「そりゃ、藤守を助けるために決まってんだろ。」
「えっ?」
こんなぼろぼろの藤守を見たらそういわずにいられなかった。
オレは心の中でごめんとつぶやくと藤守を抱きしめていた腕に力を込めた。
「イタッ!!」
「あっわりい!」
先ほど月明かりでちらりと見えた藤守の体はキズだらけだった事を
思い出して腕を離そうとしたら
今度は藤守の方がぎゅっとオレの腕にしがみついてきた。
「藤守・・ほら、もう大丈夫だって。オレが来たんだから。
守ってやるからな。」
藤守を安心させるようにそういったのに藤守はえぐえぐと俺の胸の中で
泣き出して俺はおろおろした。
「藤守どこか痛むのか?大丈夫か?」
藤守はただ顔を横に振るだけだ。
よほど心細かったんだと思うといたたまれねえ気持ちになって
オレはそっと藤守の肩を抱きよせた。
すると藤守は思ってもいな事を口にした。
「くぅちゃんオレのこと嫌いになった?俺の事なんてもう・・・いらない。」
藤守がそんな事を言い出したのかオレにはわからなかった。
「オレが藤守の事嫌いになるはずねえだろ?大体なんだってそんなこと
言うんだ。」
「だって・・オレの・・・カラダ・・・」
藤守は自分の体を両手で庇うように抱きしめていた。
カ・ラ・ダ・・?
オレはようやく藤守が言いたい事を理解した。
と同時にあいつらを絶対ゆるさねえと思った。
「バカだな。藤守そんな事気にしてたのかよ。」
オレはぽんぽんと藤守の背中を優しくなでた。
「藤守は藤守だ。何があってもオレの、オレだけの藤守だ。」
言い聞かせるようにいうと藤守は
何かを言い出しかねてるように息をのんでゆっくりとオレの肩に
両手を回した。
「あのね。羽柴・・・あの オレ・・・・」
次の瞬間オレは自分の耳を疑った。
一瞬の沈黙の後、藤守が慌てて首を振った。
「やっぱり今のはなし。そのあの・・聞かなかったことにして。」
暗くて藤守の表情は見えないがこの慌てようは顔を真っ赤にしているの
だろう思うとオレは苦笑した。
「今更なしになんて出来ると思うか?」
「だから・・・その・・・」
オレは上着を脱ぐとそれを床に引いて藤守をそこに横たわらせた。
「は・・・しば!?」
「ナオ、あいつらに触られた所ちゃんと消毒してやる。
忘れさせてやるから・・。」
「くうちゃん・・んんんn」
暗闇の中、くちゅっくちゅと二人のキスの音だけが響きわたる。
藤守の体は甘い血の匂いがして俺はそれに誘われるように
唇を這わせていた。