If ・・・(もしも)
  3章 番外編 2人とフタリ2






「それで、一体オレは何をすればいいんだ?」

こうなったら何でもやってやろうじゃねえかっ。

「簡単なことだ。」

相沢はロッカー(普段は白衣や防護服などを収める)から一着のスーツを取り出した。

「髪を整え、スーツを着込めばいい。ボタン一つも落とすな。」

「それで?」

「それだけだ。」

「ってそれだけなのか?本当にそれだけで別の人格が現れるのか?」

「ああ、」

ニヤリと含むような笑みを浮かべ相沢は挑むようにオレを見ていた。
こうなるとオレが引けねえって事を相沢は知ってる。

相沢から受け取ったスーツは皺一つなかった。
それにこの様子からすっとオレの体に合わせて作られてる。
既製品って感じじゃねえのが良くわかった。

オレはブランドものとか体に余裕のねえ服はあんまし好みではねえんだけど・・。
オレがスーツを前に躊躇していると相沢がもう一つ鞄を渡した。

「これは?」

「それはお前が水都真一郎のとき身に着けていたものだ。」

そこには下着や靴下、時計にいたるまでオレでも名前ぐれえは知ってる
ブランドものが入っていた。
オレはそれらを見てますますげんなりした。
どうしたってオレはもう一人のオレとは「友達」にはなれそうにねえ。

「真一郎?」

相沢に即されてオレは鞄から視線を上げた。

「わかってるって、やればいいんだろ?」

「抵抗があるなら私が手伝ってやろうか?。」

「いいって!!」

オレは一旦衣類を机の上に置くと思い切るように着ていた服を脱いだ。
特に相沢の視線を気にしねえようにしてたけど、背後からじっと見られてる気配を痛えほど感じてオレは振り返った。

「たく、じろじろ見んなっ、」

「いつもの事だろう。それとも見られているだけで感じるのか?」

「このエロオヤジが・・。」

「何か言ったか?」

相沢は聞こえていたくせにすっ呆けやがった。

「別に、」

オレは相沢の前でどうどうと服を脱いでやった。
下着とシャツだけになってスーツを手に取ろうとしたら相沢に窘められた。

「全部だ、真一郎、すべてを脱ぎさらなければもう一人のお前は現れない。」

オレはチッと舌を鳴らすと相沢を睨みつけながら下着に手をかけた。
そうしたら思わぬほど相沢は優しく微笑んだ。

「そんなに会いてえのか?」

「ああ、水都もお前自身だ。愛してる。」

オレの胸が震える。

そうかオレ自身だからか。相沢にとってもう一人の人格のオレもオレなんだ。

相沢の言葉が自然とオレの胸に浸透にしていく。
オレは無意識のうちのすべてを脱ぎ捨てていた。

すべてを脱ぎ捨てた瞬間、何かが崩れ落ちた気がした。
そうして、手に取ったものをただ淡々と身に着けていった。

纏うごとに全身の感覚が狂気を纏っていくのがわかる。
そして次第に欲求が狂気とともに湧き上がってくる。

「相沢・・。」

スーツを着込み髪を整え眼鏡を取ると(真一郎から人格を交代した)水都は相沢にも負けないほど冷ややかに相沢を見下ろしていた。

「水都か?」

「相沢、よくも」

名を呼ばれた瞬間水都は反射的に相沢に飛び掛っていた。
それは野生の獣が獲物を襲うそれと似ていた。

反応が一瞬遅れた相沢の首を噛み切るように水都は
首筋に歯を食い込ませた。

ガリっと音を立て相沢の首筋から血がポタリと流れ落ちた。

「ふふ、面白い、思った以上に覿面だな、しかもかなり凶暴だ、」

首筋から血が流れているのに相沢は嬉しそうに笑っていた。
水都はその血をなめとるように首筋に舌を這わせ、相沢の
白衣まで辿りつくと邪魔だとばかりに白衣を引き裂いた。

「毒を食らえば皿まで・・・だな、お前に抱かれるも悪くないと
思ったが、気が変わった。」

相沢は水都の首を両の手で握るとすごい勢いと腕力で実験室に
あった機器に突き飛ばした。
水都は息もすることが出来なくなってもがくように相沢の股間を蹴り飛ばそうとしたが
その足は寸での所で掴まれた。

「危ないな、水都、だが、その方がお前らしい、」

首をぎゅっと締められ咽頭が悲鳴を上げる。

水都はゾクリと背筋を震わせた。
だが、その震えさえ不思議な事に恐怖ではなく喜びであった。
相沢は水都を生かす気も殺す気もない。

狂ったように「くっくっ」と水都の唇から笑いが漏れた。

何が可笑しいのかなんてわからなかった。
心の奥底から勝手に湧き上がってくる感情がそうさせていた。

『オレ』は本当に狂ってしまったのかもしれない。


笑いを漏らし水都の唇に相沢のそれが重なり舌が進入していった。
水都はそれを待っていたように相沢の舌に舌を絡ませた。

「くちゅくちゅ」と濡れた音だけが実験室に響く。

少しでも油断するとお互いに喉を舌を噛み切られそうだった。

相沢と水都・・・
互いに互いを食い殺そうとしてるようだった。


『簡単にヤられはしない、こんな楽しい事!!』

水都は微笑むと相沢ともども置いてあった機器に倒れこんだ。






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攻×攻CPって感じですな〜(爆)