If ・・・(もしも)7章 番外編
絆と呪縛3



らん、」

夜がたしなめるとらんはいたずらが成功した子供のように笑った。
そうして夜から布団を剥ぎ取ると夜に跨った。

「よる、すきだよ、」

らんはそういうと夜に口付けし、夜の服に手をかけた。
夜は微かに微笑むとらんが服を脱がしやすくするために体を持ち上げた。

らんは一生懸命幼い手と唇、その体で夜に愛撫した。
らんの愛撫に夜の目覚め始めた性が少しずつ反応しているのがわかる。
こんな事にらんが慣れているのは研究員たちの
性的暴力によるものだったが夜との行為はらんにとってそれとは全く違う神聖な
もののような気がした。


夜はいつもらんの傷を癒すように唇を落とす。
そうするとらんは痛いことも辛かったことも消えていくような気がした。
そのうち体の熱さにうなされやがてらんは
夜だけのものになる。
その瞬間らんは例えようもなく幸せだと思う。

本当はらんも夜も現実逃避しているだけかもしれないと思う。
けど誰が夜をらんを責められるというだろう。


らんはいつも夜にしてもらうように夜の固くなりつつもるものを口に含む。
くちゅくちゅと舌を這わせるとそれは熱を持ち固さを増していく。
夜が感じていることがわかってらんは夢中で舌と口を上下に動かした。

「らん、」

夜に名を呼ばれてらんは顔を上げた。

「夜、傷痛む?」

「いや、」

夜は顔を横に振るとらんを手招いた。
らんは仕方なく起き上がると夜はらんの手を引っ張った。
らんは夜の上に覆いかぶさるように落ち、顔をしかめた。

「夜、傷が・・・。」

「痛み止めが効いてる。」

「でも、」

「らんと一緒にイキてえんだけど、」

「あっ」

らんは真っ赤になって面食らった。
正直に言うとすごく嬉しかった。

『あんなことがあったのに。』
心のどこかでらんをとがめる声がする。
だが、一瞬の躊躇の後らんは夜にすがりついた。
そうしなければ闇に全てを持っていかれそうだった。

「らん、」

互いのあつい熱を擦り合わせるように夜はらんのものを握る。
らんもおそるおそる夜のものに手をあわせた。

「うっん」

あまりの気持ちよさにらんの口から思わず声が漏れる。
幼くして目覚めさせられた性への快楽を2人は知っていた。
そして2人にとってそれが特別な行為であることも。

らんは縋りつくように夜の体にそれを押し付け上下に体を
うねらせた。

「夜、僕イッちゃう、」

夜の指の運動が早くなる。

「あっそんな、」

そういいながら、らんは快楽を追うように夜のテンポにあわせ体をますます波立たせた。

「ああああっ」

一際大きな声を上げ全てを吐き出した後、夜もらんを濡らす。
唇から荒い息を交換し、2人の鼓動が戻った頃あいを見て夜はらんに
言った。



「らん、ありがとな。」

「ううん、よるぅもうどこにも行かないよね。」

「・・・・。」

答えない夜に不安になってらんは夜をみあげた。

「・・・よる?」

「オレは罪を犯した。それは償わねえとな。」

「罪ってなに?償うって何?」

らんは夜がどこかに行ってしまうような気がしてしがみついた。

「オレは・・・両親を殺した。それに・・、」

続きは聞きたくなくてらんは顔をぶんぶんと振った。

「でも、それは相沢が、」

「事実だ。・・・それにらんと直を傷つけた。」

らんは涙が溢れてきた。嫌だ。夜がどこかに行ってしまうなんて
考えるだけでも気がふれてしましそうだった。

「それにな、」

夜はらんに諭すようにいうと相沢に掛けられた呪縛の事を話し始めた。
『夜が存在するかぎり、直をらんを裏切り続ける事。
・・・・その呪縛を解くには空と直の深い絆がいると言う事。』


「相沢の呪縛は『魂』そのものにかけられたみてえな気
がする。
んな事認めたくねえが、自分自身では解けねえって
全身がそういってる。
だからオレがいるかぎりらんを傷つけるんだ。
それに直も空もな。」

らんは夜の話が終わるまで口を挟まなかった。でも夜の話を聞いて
絶望だけじゃない可能性だってあるのだということを知った。


「ねえ、夜、呪縛を解く方法が直と空の絆だっていうんだったら僕は
すぐ解けると思うんだ。
僕空の事はよくわからないけど直が好きなのは空だよ。」

「空もだ。」

「だったら・・・。」


夜は静かに顔を振った。

「オレと空は俺たちの両親を手にかけたんだぜ。空は絶望と
罪の意識で立ち直れねえ程に精神が病んでる。それに直はどうだ?
そんな空をまだ好きだってか?」

「僕は夜が好きだよ。」

らんは一瞬の迷いもなくそう言い切った。

「らん!!」

「直だって今でも空が好きだよ。だってあの時、」

らんは辛そうに顔を伏せた。
あの時直は思ったんだ。

『両親と一緒にいってしまってもいいって。
くぅちゃんに殺されるのならいいって。
もうこんな悲しい思いしなくていいのなら死んだほうがましだって。』

でも空は直にナイフを突き刺さなかった。
現実を直視することが出来なくなって直は空を自分を取り巻く何もかもを
恨んだ。
そして悲しみを抱えたまま精神のオクに閉じこもってしまった。

「夜、僕は信じるよ。
だって僕にも直にももう夜と空しかいないんだよ。
それに失くすものもない。だからお願いだからそんな事
いわないで。」

「らん」

夜は眩しそうにらんを見つめると上半身だけベッドに起き上がった。
慌ててらんをそんな夜を制した。

「夜、起き上がっちゃダメだって」

「大丈夫だ、」

夜はらんを胸の中に引き寄せた。
一瞬抵抗しようとしたがらんはそのまま夜の胸に頭を預けた。

「らん愛してる、」

「うん、僕も、
もし呪縛が解けなくても。僕ずっとずっと夜が好きだよ。 」

「ああ、」

夜のらんを抱く腕の力が強くなる。

「ねえ、もし、もしも・・・だよ。
夜の呪縛が解けなくて消えてしまう事になったら僕も夜と一緒に連れて行って。」

夜は目を見開いた。
でもらんならそういうような気がしていたのだ。

「わかった。その時は一緒にいこう。」

「ホント?」

「ああ。けど空と直を信じようぜ。」

「うん、僕信じるよ。」

らんの顔にようやく笑顔が戻る。夜もそれに安堵をついているように装ったが
本当は胸には今も影が宿る。

自分の脳中に埋め込まれた相沢の「声」はいつ作動するか
わからない。次にあの男が何を自分に欲求するのか全く見当
つかないが、今回の事を考えても相当ヤバイことだろう。

そして相沢のマインドコントロールを解くすべは自分には
ない。


愛しいらんを抱き寄せ夜は自分の体であってそうでない
この忌まわしい体を心を呪う。

そして精神の闇に沈むもう一人の自分につぶやいた。


「解き放てるのはお前だけなんだぜ。空」




                                             
                                   8章(最終章) 戻れない記憶1へ