If ・・・(もしも)7章 決別 4 空と学が研究所に向かうにあたって、綾野と奏司がバックアップしてくれる
ことになった。 心配した七海ちゃんが2人に相談したらしい。 当初奏司さんは2人が研究所に向かうこと自体に反対したが2人の決心が固いことを知って 渋々認めてくれた。 ただし無茶はしないこと。 何かあったら直ぐに助けを呼ぶこと そして綾野と奏司の2人にバックアップをさせること。 それを約束させられた。 これほどに心強いバックアップは空にはなかった。 そしてその2人はいつでも動けるように学園で待機してくれてる。 学に案内されて連れてこられた研究所の入り口は学園の特別棟(化学室のある校舎)の倉庫だった。 それも空がいつも何気なく使っていた場所だった。 一件別の空間があるとは思えないようなところに、市川は研究所が繋がっているのだという。 もちろんそのままストレートに中に入れるってわけじゃなくて カードとパスワードが必要な扉は外からは死角になっていた。 先日のプールのボイラー室と同じなんだろう。 空は学園そのものが相沢の研究所の敷地内だということを 改めて認識したような気がした。 「市川、相沢の研究所に繋がってる場所って学園内に他にもあるのか?」 「さあ〜、ここは化学室から近いし俺はいつもこっからだけど。 けど大きな運び物があるときは芥は別の場所から入ってたみてえだったな」 「そっか、」 学は倉庫の扉を開け認証カードを取り出すと小さなくぼみに差し込んだ。 ガッーっと音がなったあと、カチャっと鍵が解除される音がした。 「あれ?」 それに学は首をかしげた。 「市川どうかしたのか?」 「う〜ん、普段だったらパスワードに声紋をいれねえと鍵が解除されねえのに 今日はカードをいれただけであいたみてえなんだ。」 「本当か?」 その言葉通り市川は固くしまっていた扉(外からは扉ではなく壁に見える) をゆっくりと開けた。 そこは一歩進めば学園の闇、まさしく相沢の研究所へと続く廊下だった。 一瞬気後れした空とは違い、学はそのまま歩き出した。 その後を慌てて空が追う。 「けど、なんでカード入れただけで開いたんだろ?」 「市川、ひょっとしてワナってことねえか?」 警戒する空に学は「まさか」と笑った。 「空先輩考えすぎだっての、」 「市川、お前っ緊張感のかけらもねえのな。」 「ん〜、空先輩やみんなが何緊張してるのかわかんねえんだけど オレ緊張より怒りの方が強えから。」 空はこれでも学が怒っているのか?と思った。 「やっぱ、永瀬の事許せねえ?」 「当然だろ、薬でオレの体勝手にして、挙句何もいわねえで 留学なんて。ゆるせるわけねえだろ。」 「そっか・・・。」 空はそれ以上言っていいのか迷ったが言葉を続けた。 「けど、永瀬は本当にお前の事好きだったんだって思うぜ。、」 「だからって何をしてもいいってことじゃねえだろ? それに芥はいつだってオレには本当の事は言わなかった。 オレこれでもマジで怒ってるんだぜ、」 学の言うことはもっともだと思う。 空は突然直の事を思いだした。。 藤守も空には本当の事は言わなかった。 今となっては何が本当でウソだったのかさえわからない。 けどやっぱり何処かでまだ信じたいと思ってる。 兄ちゃんも生きていたし、今は許してもいいって思える。 けど藤守はまだオレの事恨んでるのだろうか? 許してはくれねえだろうか? 空と学が歩いていると前方からドタドタと集団の足音が近づいてきた。 空は隠れ場所になりそうな場所を探そうとしたが、学はそんな ことも気にせず歩き出し空は集団と出あい頭に視線を合わせないように下を向いた。 その集団とすれ違いざまに事もあろうに学が研究員の一人に話しかけた。 「あの、 」 呼びとめられた研究員の一人が立ち止まり振り返る。 「ああ、君は確か永瀬教授と一緒に共同研究していた、」 「はい、市川学っす。」 その時また別の研究員たちがドタドタと大きな手押しの荷台 を押してきた。学と研究員がそれを間一髪で避けた。 「なんかすげえ今日バタバタしてるみてえだけど、部屋替えでもするの?」 「あれ、君は誘われてない?研究所はアメリカに引越しするんだよ。 だから今総出で大忙しなんだ。」 今まで出来るだけ研究員を避けていた空が思わず顔を上げた。 「アメリカに引っ越すって本当なのか?相沢も研究所も全部?」 「ああ。すでに相沢教授は第一陣でアメリカの研究所に行かれたよ。」 『何だって!!」 空は研究員に迫った。 「研究所はアメリカのどこにあるんだ!!行ったのは相沢だけなのか? 兄ちゃん・・・えっと、真一郎って人も一緒じぇねえ?それに・・・」 空は一瞬躊躇したがそれを口にした。 「ナンバー014も行ったのか?」 それに学も参戦した。 「まさか芥ももうここにはいねえのか?」 研究員は少し呆れたように二人をみた。 「おいおい、そんなにいっぺんに聞かないでくれよ、」 研究員は苦笑すると、それでも知っていることを話してくれた。 研究所はアメリカのバージニア州に移されるということだった。 なんでも世界経済をも動かすような財閥がバックについたとかで、 ここよりも強大な設備らしい。 だが、詳しいことは極秘でこの施設同様(以上?)に厳しいセキュリティ を取っているとのことだった。 「真一郎ってのは、教授のお気に入りのあの人(研究員)の事かな? 死んだ真一郎のクローンだって噂もあったけど真相のほどもねえ。 でも彼なら教授と共にアメリカに発ってここにはもういない。 でも永瀬教授はまだここにいるよ。 相沢教授がここの最後を彼に任せたから、」 「そっか、」 学はほっと一息ついたようだったが、空は絶望へと叩き落されたようだった。 兄ちゃんはホントにアメリカにいってしまったのか? オレたちより相沢を選んだっていうのか? 空はあの時最後に見た兄ちゃんのことを思い出した。 抱きしめられ、キスされた瞬間空はわかった。 うぬぼれでなく兄ちゃんにとってオレはかけがえのねえ大事な存在 だったのだという事、 それは空にとってもそうだったのだ。 7章 決別5 |