If ・・・(もしも)6章 トライアングル4 学は門限まじかになって中等寮に入った。
週末の門限は多少緩和してもらえた。 それでも30分程度といったところだろう。 学は時計に目を落として廉の部屋を叩いた。 廉の部屋も学と同じ個室だった。それは学にとって好都合だった。 「は〜い、」 扉の向こうからいつもの元気な廉の声がして学は少なからずほっとした。 ガチャっと扉が開いて学の顔を見た廉は露骨に顔をしかめた。 それでも学は廉に微笑んだ。 「廉、ちっとばかし部屋いいか?」 廉はチラっと時計をみると小さくため息をついた。 「門限までなら、」 「ああ、」 初めて通された廉の部屋に学は目を細めた。 思ったとおりというか、廉の部屋には化学書籍類や医学書などが 教科書と一緒に並んでいた。 廉は薬学の知識も豊富だったし学と一緒に部活する前 から独学していたんだろうと思う。 学は一番居心地よさそうな廉のベッドに腰を下ろすとそこにあったくった〜とした ワニのぬいぐるみを膝に抱えた。 それは廉の匂いがした。 「それで何の用?」 「廉、なんで化学部こねえんだ、」 「オレはもともと部員じゃないし。」 確かに廉から入部届けは出されてはいない。 もともと高等部の活動だから中坊は入部できないのだ。もっともそんな事は学も 廉もどうでもいいことだった。 「理由それだけか?」 「それだけって他に何かあるの?」 「お前ここんとこオレの事避けてるだろ?」 廉は困ったように俯いた。 「そんな事ない、」 廉はそういったが、廉のその態度はあからさまだった。 学は寂しそうに笑った。 「廉、オレの事嫌いだっていうならそう言っていいんだぜ。」 廉ははっとしたように学を見た。 「オレの事迷惑ならそう言ってくれよ。オレそういうの鈍感だからさ。 オレは廉と化学部で一緒してるとすげえ楽しかった。 だからオレは廉もそうなんだって勝手に思ってたんだ。 でもそれはオレの思い込みだったんならそう言ってくれよ。 オレは・・・廉の事好きだから嫌な事したくねえんだ。」 学は自分の想いに耐えるようにぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。 「ガ・・・ク?」 丁度そこで門限を告げるベルが全館のに響き渡った。 学は何事もなかったようにぬいぐるみをベッドに置くと立ち上がった。 「悪かったな、廉。困らせるような事言って。今のは忘れろな。じゃあ、」 そういった学は声色こそ笑っていたが表情は今にも崩れ落ちそうだった。 「学、違う、」 廉は部屋から出て行こうとした学の背にしがみついた。 廉は今この背に手を伸ばさないと後悔してしまいそうな気がした。 「廉・・・」 互いの体は震えていた。 「オレ学の事・・・スキ・・」 消え入るような声だった。それでも学には十分だった。 学は自分の背にしがみつく廉の腕を掴むと胸に抱き寄せそのまま唇を奪った。 「が・・く」 廉の声も吐息もふさいで学は小さな廉の震える体のすべてを抱きしめた。 長いキスのあと俯いた廉は耳まで真っ赤にしていた。 学は廉から体を放すと名残惜しそうに時計に目を落とした。 「学、門限・・。」 「なんか、寮に戻りたくねえよな、」 廉はますます顔を真っ赤にさせた。 「門限は守らないと、」 廉には説得力はなく学は話題を変えた。 「ところで廉一つききてえんだけど、ここ数日オレの事避けてた 理由はなんだったんだよ?」 「それは・・・。」 廉の脳裏にあの夕闇の校舎での中原の「忠告」が甦った。 今思い出しても不可解な忠告だった気がする。 「学に近づくな、」といった中原先輩、 あれはどういう意味だったのか? 廉は学に話したほうがいいかどうか迷う。 中原は学の友達なのだ。 「オレに言えねえことなのか?」 固まってしまった廉に学は苦笑した。 「まあ、今は廉の気持ちがわかったからもういいけどな。」 「ち、違う!!」 慌てて廉が否定したので学は驚いた。 「違うって、そうじゃねえのか?」 廉は困ったように視線を彷徨わせた。 「そうじゃなくて・・・。」 廉は中原が言ったことでなく風太と学との化学室でのやり取りを 引き合いに出した。 「学、風太に薬作った?」 「へっ?ひょっとして廉、風太から聞いたのか?」 ううんと廉が顔を横に振った。 「ごめん、オレあの日立ち聞きしちゃったんだ。」 申し訳なさそうに廉は言ったが、そこには学への抗議も含まれていた。 「本当に渡したの?人の心を弄ぶことになるかも知れないのに。」 「廉の言う事ももっともだよな。まあ、けどそこまでの効果はねえよ。 あの薬は普段意識してねえ相手には効かねえんだ。 相手がある程度の好意を自分に向けていねえと効かねえようにしてる。」 「でも・・・。」 廉はまだ何かいい足りなさそうに言葉を探していたが突然「はっ」と 何かに気づいたように顔を引き攣らせた。 「ひょっとしてオレにその薬使ったんじゃ・・・?」 学は小さく溜息をつくと廉に微笑んだ。 「使ってねえよ。っていいてえ所だけど・・・。」 廉の顔が一瞬固まる。 「本当はここに来るまで何度も使おうかって思った。 けどやっぱオレ廉とはフェアな関係でいてえから。」 学はポケットから小さなビンを取り出すと廉に差し出した。 「これがその薬だ。」 6章 トライアングル5へ 次回学廉Hまで行くかな?(爆) といってもそんな大した事は書きませんので(苦笑) |