If ・・・(もしも)
  2章 七海ちゃんとオレ






オレと七海ちゃんが初めてベッドで迎えた朝、
オレは七海ちゃんに何って声を掛けていいのかわからなかった。

もちろん、遊びのつもりなんかじゃなかったし、七海ちゃんを慰めようとかそんな
感情でもなかった。


オレが朝起きた時にはすでに七海ちゃんはいつもみたく
朝飯をキッチンで作っててオレはこのままでもいいかなってちょっと思った。

何も言わないまま普段どおりで・・?
けどそんなのは男としてずるい気がしたんだ。

「七海ちゃんおはよう。あのな・・・。」

オレが七海ちゃんに声を掛けると七海ちゃんは鍋に
かけてた火を消した。
七海ちゃんはオレが言い出すのを待ってたんじゃねえかって思う。
だから本音がいえたんだ。

「オレ七海ちゃんの事本気だから・・・。
けどその、オレは兄ちゃんの変わりになろうとなんて事は思ってねえんだ。
うまく言えねえけど、
・・・・・・七海ちゃんには兄ちゃんの事忘れないでいて欲しい。」


そういった後七海ちゃんが兄ちゃんを忘れるなんてこと絶対ないって思えたんだ。
それが少し悔しくもあり、嬉しくもあった。

「わかってますよ。」

七海ちゃんはオレの気持ちを察してくれたようにそう言った。

「オレ七海ちゃんの中にある兄ちゃんもひっくるめて全部好きになるから・・。」

オレがそういうと七海ちゃんが苦笑した。

「そんなことを言っていいんですか?直くんは?」

七海ちゃんに言われてオレは祭と約束したことを思い出していた。
藤守の帰ってくる場所の事。

「それは・・・。」

返事を返せないオレに七海ちゃんはクスリと笑った。
だから慌てていったんだ。

「オレはもともと藤守とは何でもねえんだ。」

何でもねえ・・そういった後オレはズキリと胸がいたんだ
『・・・なんでもねえはずなんてねえ』って。



オレのあいつへの想いは裏切られた。
兄ちゃんを失うっていうあまりにも残酷な形で。

祭は『いつか許してやって欲しい。』そういったけどそれだけはどんなに時間がたっても
許すことなんてできねえって思う。

そう結論づけると胸の奥がもっと疼きだした。

『オレは藤守に裏切られた・・』

それでもどんなひでえ憎悪でもオレに向けられてるなら繋がってるんのかもしれねえ。
たとえそれがどんな形でもあいつと繋がっていたいっていうオレの願望でも。
けどそれは七海ちゃんを想う気持ちとは全くちがう次元の感情なんだ。


オレは考えあぐねた末オレの言葉を待ってくれてる七海ちゃんに言った。

「でも夜とらんは今も繋がってるかもしれねえって思うことはあるんだ。」って。

ここで夜とらんの話を出すのはすげえずるい気がした。
これはオレと藤守の問題だし。

けど七海ちゃんも、ましてオレ自身にも納得いく答えなんて今は
みつけられそうになかった。

それに夜とらんのこと今まで考えなかったわけじゃねえんだ。
あいつらはあんなに愛しあってたんだ。今も愛しあってるかもしれねえだろ?
今のオレにはどうしてやることもできねえけど。


「ありがとう、空くん。空くんの気持ち私は受け取りましたから。」

七海ちゃんはそういうと少し寂しそうに笑った。

それが気になったけど七海ちゃんはそれで話を切り上げてまた鍋に火をかけはじめたから
オレはそれ以上何も言うことは出来なくなっちまったんだ。










オレが学園の寮に戻ったのと同じ頃、七海ちゃんも学園に(寮監室に)復帰した。
オレは前にもまして保健室にも寮の七海ちゃんの部屋にも顔を出すようになった。

そうしねえと時折どうしようもなく不安になっちまうんだ。
突然七海ちゃんがいなくなっちまったらどうしようって。
もう2度とオレのあやまちで大切な人を失いたくなかった。

そんな不安を取り除いてくれるように七海ちゃんは2人きりの時は
オレをよく抱きしめてくれた。

今日だって寮監室に突然飛び込んだオレを「私はここにいます。大丈夫です。」って
抱きしめてくれた。


七海ちゃんはそういいながらオレを抱きしめた腕に力を込めた。
その手の震えで気づいたんだ。
七海ちゃんだってきっとオレと同じぐれえ不安でいっぱいで
けどこんなオレのために必死でがんばってくれてんだ。


「オレ絶対七海ちゃんを一人にしねえから。」

兄ちゃんを奪ったオレが言うことじゃねえかもしれないけどコレが俺の精一杯の
七海ちゃんへの想い。
七海ちゃんが好きだから悲しむ顔はみたくねえ・・七海ちゃんが好きだから
笑ってて欲しい。七海ちゃんが好きだからずっと傍にいたい・・・居て欲しい。

「なあ、七海ちゃん、オレ今ここで七海ちゃんが欲しいっていったら困る?」

真顔でいったら七海ちゃんがぷっと噴出した。

「もう、空くんは何を言い出すのかと思ったら。」

くすくすと笑いながら取り合ってくれない七海ちゃんにオレは拗ねたように言ってやった。

「ちぇ、真面目に取り合ってくれたっていいだろ?オレガキあつかいされてねえ?」

「してませんよ。」

七海ちゃんは急に真顔になるとオレの顔に顔を近づけてきた。
綺麗な七海ちゃんの顔がドアップになってオレの心臓はドクンと大きく
音を立てた。
重なった唇は余韻も残さないほどにすぐに離れていった。

「子供だと思っていたらこんなことはしません。」

そう七海ちゃんに言われたけどオレはやっぱり七海ちゃんにガキ扱いされてる
気がしてしょうがなかった。
その証拠に誤魔化すように七海ちゃんは言ったんだ。

「空くん、消灯時間すぎてますよ。今日はもう部屋に戻った方がいいです。」

急に先生の顔に戻った七海ちゃんの大人の余裕がオレは気に入らなかった。

「七海ちゃん、んなキス一つで誤魔化すつもりかよ?」

「週末マンションに帰るでしょう?」

「週末までまだ3日もあんだろ。」

オレは七海ちゃんに言い寄りながら本当に駄々っ子みてえだなって思った。
けどこんな我侭を言える相手がいるってのは幸せなことのような気がしたんだ。
たとえこの幸せが誰かの犠牲の上のものであっても。

七海ちゃんは困り果てたように小さくため息をついたから、オレは
押しの一手にかかった。

「オレこのまま部屋に戻ったら一人でヤッちまうぜ。七海ちゃんにあんなことや
こんなことをさせるからな。」

我ながらなんって子供っぽい口説き文句だって思ったけど
流石にオレのその一言で七海ちゃんは頬をそめた。
どうだ?これで逃げられねえだろ?
そう思ったけど七海ちゃんの方がオレよりさらに上手だったんだ。

「だったら私は空君の体をリボンで結んで、うさ耳にしっぽをつけてご奉仕してもらいましょうか。
どうです。悪くないでしょ?」

いたずらっぽく言われてオレは顔が真っ赤になってくのを感じた。
七海ちゃんってそんな願望があんのか?

「うっ」

切り返せねえオレに七海ちゃんは苦笑した。

「本当に・・空くんはしょうがないですね。だったら、今日はこれで我慢してください。」

七海ちゃんはそういうと座ったままオレのズボンに手をかけるとそこを寛げた。
オレはまさかそう来るとは思わなくてかなり慌てた。



                                                 夜と空へ


空くんの葛藤を書くのに苦戦しました(苦笑い
そしてまたこんな所で次回にお持ち越し(滝汗)
次回あまり期待しないで下さいね。書き始めてみないとわかりませんがそれほど
濃厚にはならない気がします(笑)

※次回のタイトルは未定。取り合えずプロットを切った当初のタイトルを入れてます。