If ・・・(もしも) 1章 綾野の告白 悲しい気持ちを引きづったままオレと七海ちゃんが立ち上がると
綾野ちゃんが立ちすくむようにオレたちを見ていた。 そんな綾野ちゃんに七海ちゃんは震える声で聞いた。 「一つだけ聞いてもいいですか?」 綾野ちゃんの表情が強張るのがわかった。 「真一郎が死んだっていうけれど、どうしてそれをあなたが知っているのです?」 そう聞いた七海ちゃんの顔をオレはまじまじと見た。 七海ちゃんの言うとおりだと思った。 兄ちゃんは1ヶ月前相沢に連れてかれてあれから行方知れずなんだ。 だから綾野ちゃんがどうしてそんな兄ちゃんの事を 知り得たのかそれは確かに不思議なことだった。 けど・・・綾野ちゃんがそんなウソをつくはずねえし。 綾野ちゃんは辛そうに顔を歪めてオレと七海ちゃんに頭を下げた。 「それは僕が相沢側の人間だからだ。」 オレは綾野ちゃんがその瞬間何を言ったのか理解出来なかった。 「相沢側の人間って?そんな・・・。ウソですよね。」 七海ちゃんの切羽詰った声はそうでないことを懇願していた。 「ウソじゃないんだ。僕は相沢側の人間で・・・真一郎を・・・見殺しにした。」 「けど、それが本当だったとしても綾野ちゃんには何かわけがあったんだろ。」 オレはそう叫ばずにはいられなかった。 だって綾野ちゃんが兄ちゃんを裏切るはずねえ。 二人は喧嘩するときがあっても仲がよくて、 それに綾野ちゃんはいつだって兄ちゃんやオレたちの事を相沢から庇って助けてくれたんだ。 なのに・・そんなこと。 応えねえ綾野ちゃんにオレはさらに言い募った。 「七海ちゃんみてえに相沢に騙されてた?脅されてたんだろ?」 オレがすがり付くようにいうと綾野ちゃんはゆっくりと首を横に振ったんだ。 「ごめん、空君。そうじゃないんだ。僕は相沢がやってることを 知ってて自ら彼の元に行ったんだ。」 「そんな・・・。」 1ヶ月前のあの日、これ以上辛えことなんてないって思ったけど悲しみに終わりなんて ねえんだって思った。兄ちゃんが死んで、綾野ちゃんが相沢側の人間だったなんて。 兄ちゃんがもうオレたちの元に帰ってこねえなんて・・・。 ぽかりと心の中の闇が広がってくような感覚に襲われてオレは胸を掴むように 押さえた。 そしたら今度は思考がダブるような感覚を覚えたんだ。 この感覚は夜が表に出てくる時のもの・・? そう思った時にはオレは夜と人格が変わってた。 けど夜はオレを無理やりに引っ込めるようなことはしなかった。 「てめえが相沢に近づいたのはオレとらんを助ける為じゃなかったのか!!」 夜の言った事にオレは驚いてた。 夜は綾野ちゃんが相沢側の人間だって知ってたみてえな口ぶりだったから。 そしてオレは夜が言った事が実際本当だったらどんなにいいかって思った。 綾野ちゃんはやり切れないような瞳でオレを見てた。 「夜くん、それは・・・。」 夜は綾野ちゃんの襟首を掴むとぎゅっと締め上げた。 「ああ、どうなんだ?」 「やめてください!!」 オレが夜に制止する前に七海ちゃんが二人の間に入って叫んでた。 「こんなことになったのは、みんな僕のせいなんだ。僕が相沢の研究所を 逃げ出したりしたから・・空くんが直君が・・真一郎が・・・。」 泣き崩れる七海ちゃんの目の前で夜は綾野ちゃんを解放した。 「七海のせいじゃねえだろ。」 「夜くん・・・。」 「真一郎が死んだのは空のせいでも綾野のせいでもまして 七海のせいでもねえよ。オレたちは精一杯やったはずだぜ。 だったら自分を責めてもどうにもならねえだろ?」 夜の言葉はオレのからっぽになった心に浸透していくように入ってく 気がした。夜がオレと同じ人間だからか。 それとも夜がまたオレの苦しいのを持ってっtのかそれはわからねえが。 「自分を責めるより今しねえといけねえことは他にあるはずだぜ。 オレたちは今ここにこうして生きてんだ。」 オレは夜の言うとおりだって思った。 兄ちゃんが死んだ今、誰が相沢をやっつけるんだよ? 藤守はらんのことはどうすんだよ? 「すまない。真一郎のこと言うべきかどうか正直迷ったんだ。 真一郎の帰りをどれだけ待ち望んでたか知ってたし。 けど本当のことをいうべきだってね。 夜くんの言うとおりいつまでも立ち止まってるわけにはいかない。」 そういうと綾野ちゃんは七海ちゃんの手のひらに兄ちゃんの指輪を 置いたんだ。大事な大事な兄ちゃんとの思い出の指輪。 受け取った七海ちゃんの手は震えてた。 七海ちゃんは震える手で指輪をぎゅっと握り締めるとあふれ出す涙を しゃくりあげてた。 「ごめんなさい。私・・。」 「七海ちゃん、泣いたっていいんだぜ。」 七海ちゃんが指輪を握り締めた拳の上からオレも兄ちゃんの指輪を握り締めた。 そしたら綾野ちゃんもオレの拳を両手で覆うように握った。 『兄ちゃんの意思はオレが受け継ぐから。・・・オレたちを見守ってくれよ。』 3人で握った拳は微かに温かかった。 祭の旅立ちへ 追記 あんまし1話目から話が進んでないような・・; 今回あまり(つうかほとんど)直くんは登場しない予定です。 直くんファンの皆さんごめんなさいです(汗) そして(今回も?)教授の幸せを目指して書いてます(苦笑い) どういうのが教授の幸せかっていうのはおいおい描いていくとして いわゆるHAPPY ENDとは違うだろうなと思ってます(苦笑) |