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ツインズ



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しばらくオレがそのまま藤守を抱きしめていたら藤守が身じろいだ。

「は・・羽柴・・あの。」

「あっ!!ごめんな。」

オレは慌てて藤守から離れたけど本当はもっと藤守を
抱きしめていたかった。オレはぽっかりと開いた穴を
埋めるように藤守に腕を差し出した。

「藤守迎えにきたぜ。ほら帰ろう。」

オレが差し出した手を藤守は払った。

「オレ帰らないよ。」

「なに言って、みんな藤守のこと心配してるんだぜ?」

「ごめん、羽柴わかってるんだ。オレの我侭だってこと、
でも今は今夜だけでいいから一人でいたいんだ。」

膝をついたまま動こうとしない藤守にオレは早々諦めて
横に腰掛けた。

「じゃあオレもここにいていいか?」

「は・・羽柴は寮に戻った方がいいよ。」

いつの間にか藤守の呼び方がくぅちゃんからもとにもどってる。
それに少し寂しさをかんじた。

「藤守、オレがいると迷惑か?」

暗闇の中、藤守が息をのんだのがわかった。

「ち・・違う・・でも・・。」

「じゃあいいんだな。」

オレが念を打つと藤守は話題を変えた。

「羽柴はどうしてオレがここにいるってわかったの?」

ホントは愛の力って言いたかったけどそれは言えなかった。
オレの独りよがりかもしれねえし。
けど今はすごく気持ちが静かで
隣にいるだけなのに藤守の気持ちが伝わってくるような
そんな気がするんだ。

「オレが藤守に会いてえって思ったからかな。」

「バカ・・。」

ぎゅっと毛布に包まった藤守がオレから背をそむける。
オレはこのときわかっちまったんだ。

「藤守・・・抱きしめていいか。」

「羽柴・・何言って・・。」

藤守に拒否される前にオレは藤守を抱きしめた。
そしたら藤守がオレの胸にぎゅっとしがみついてきて
ワンワンを泣きだした。小さな子供みてえに。
本当はこのままキスしてえっておもったけど
それを堪えて藤守の背を優しくなでた。

そうしてようやく落ち着いた頃、藤守がぽつりぽつりと話はじめた。

「らんがね、夜と一緒の部屋になりたいって・・・。」

「ああ。聞いたぜ。藤守相当ショックだったんだな。」

オレは夜が生物室で言ったことを思い出してた。
藤守とらんが二人でやってた事・・・つまりは藤守はらんのことが
好きだったってことじゃねえかって。
だから部屋のことでこんなに落ち込んだんだろうか?

「らんに言われたことはそれだけじゃないんだ。
らんは学園をでたら夜と暮らすんだって、
らんは自分の夢があってそれを夜と一緒に叶えたいって、
オレはそんな事ちゃんと考えた事なかったから・・。
双子だからってずっと一緒にいられるわけじゃないんだって思った時
急に一人ぼっちになったような気がしたんだ。」

オレは藤守を胸に抱きながら心の奥が痛んだ。

「藤守、らんのことが好きなのか?」

「当たり前だろ。たった一人の兄弟なんだよ。
いつも喧嘩しててもね。らんとはどっかで繋がってる
気がしたんだ。らんが夜と付き合うまではね。」

オレは寂しそうな藤守の言葉を複雑な想いで聞いた。
藤守のらんへの想いは恋愛ともとれたし、兄弟としてのようにも
思えたし。

「羽柴は・・夜と離れて寂しいとか思ったりしないの。」

「オレはあんなやついねえ方がせいせいするけどな。」

「そうなの?普段は喧嘩してても本当は仲がいいのかって
思ってたから。」

オレはまた生物室の事を思い出しそうになって顔をしかめた。

「そんなことより、藤守には夢はねえの?」

「夢?オレの?なくはないけど・・」

歯切れの悪い藤守にオレは苦笑した。

「教えてくれよ。」

「ええ!やだよ。」

「なんで?」

「だって恥ずかしいし羽柴笑うし。それより羽柴の方はどうなんだよ。」

藤守に振られてオレは困った。オレの夢だってかなり恥ずかしい。

「それは・・。」

オレが口ごもると今度は藤守が苦笑した。

「ほら、羽柴だっていえないじゃない。」

「じゃあオレが言ったら藤守もちゃんと話すのかよ?」

「な、なんで羽柴が言ったらオレも言わなきゃいけないんだよ。」

「だってオレだけだと不公平だろ?」

う〜んと唸り声を上げた藤守は思案しているようだった。

「羽柴誰にも言わない?」

「当たり前だろ。」

「約束だよ。あっと羽柴が先だからね。」


念を押されて相槌を打つとオレは一呼吸置いた。
そして微かに触れていた藤守の手をぎゅっと握った。
そしたら藤守がオレの手を握り返してくれてオレは勇気をもらった
ような気がしたんだ。今だったら大丈夫だって。


「オレの夢はずっと藤守と一緒にいること。
学園を卒業して大人になっても白髪のじいちゃんになっても笑ったり、
泣いたり、怒ったり今みてえに一緒に
そうやって藤守と一緒に歩きてえ。
なあ、藤守はオレじゃダメか?オレじゃあ、らんの代わりになんねえ?」

一気に言っちまったと心臓がドクンドクンと大きな音を立てていた。

「は・・しば・・」

口をぱくぱくとあけた藤守が言葉を探してる。
掴んだ指はお互い震えてる。それでもその指が離れることはなかった。
オレはそのまま藤守の唇に優しく口付けた。

「藤守、頼む。答えてくれよ。」

切羽詰ったオレの気持ちから逃げるように藤守はオレから離れようとした。

「藤守、オレの事嫌えか?」

「違う!!」

即答した藤守にオレは驚いた。

「じゃあ返事してくれよ。」

オレの手から逃げようとした藤守をもう1度懐にぎゅっと抱き寄せると「あっ」
って藤守が心素ない声をあげた。オレはそれだけで理性がとんで
しまいそうだった。

「苦しい・・羽柴・・・苦しいよ・・。」

「頼む・・藤守・・・」

オレがもっとぎゅっと藤守を抱きしめると藤守の唇が微かにうごいた。
暗闇の中だっていうのにオレはその声にならない藤守の心の声が
聞こえたんだ。

「す・・き」って。

オレはその瞬間ぎりぎりのところで抑えていた理性が飛んでいた


     
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