「ねえ ねえナオお願い今晩僕どうしても夜とデートしたいの。だから・・。」
週末になるとらんはいつもこのお願いをしてくる。
またか・・と直は嫌な顔をした。
「ダメだよ。らん。先週もそんな事言ってただろう。」
「でも先週はお泊りはしなかったでしょ?」
直は読んでいた本から目を上げてらんに怒鳴った。
「ダメなものはダメ!!いい加減にしないとおこるよ。らん。」
直の剣幕にらんはしゅんとなる。
ちょっとかわいそうかな〜などと思いながらもナオはついついらんには 甘い自分に叱咤する。
らんにはこれぐらい言って丁度いいのだ。
直とらんは双子で学生寮も同室だった。
ことの次第は、双子のらんが恋人の夜の部屋でお泊りしたいと言いだした事 が発端だった。
夜にはらんと直と同じように双子の弟の空がいて、 二人がデートをするにはお邪魔なのだ。
まあお邪魔というならナオだって十分にお邪魔なんだろうが。
だから二人きりになれるように部屋を譲ってほしいっていう らんのお願いだったわけだけど・・。
それはつまりオレと羽柴が一晩一緒の部屋で過ごさないといけないと
言う事に他ならないのだ。
【誰がなんであんなやつと・・・。】
そう吐き捨てながら直は心の奥底で胸を躍らせてる自分がいることも 知っていた。
【何でオレがあんなやつを・・。】
それを否定するようにもう1度同じ台詞をはいた時、 らんが枕を持って立ち上がった。
「らん。どうしたの?」
「夜の部屋に行ってくる。」
「えっ?」
部屋は代わらないとあれほど言ったあとなのにらんは平然とそう 言ってのけた。
「らんオレの言った事わかってる?」
「わかってるよ。夜のベットで一緒に寝るだけ。ナオには迷惑かけないから。」
一緒に寝るだけって・・・夜の部屋には空だっているのに・・?
直は盛大なため息をつくと降参とばかりに手を上げた。
「らん わかったから。今晩だけだからね。」
「嬉しい。ナオ愛してるよ〜。」
らんは直に飛びついて破顔したのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ さっきからぴりぴりとした空気が部屋にまとわりついてる。
うううう〜なんなんだ。この空気は・・。
藤守は机に向かって本を広げてるけどさっきから ちっともページが進んでねえ。
オレ無茶苦茶警戒されてる・・って。あああせっかくの週末だってのに 何でオレこんなに気い使わなきゃなんねえのかな〜。
空は小さくため息を吐くと机に向かう藤守の背中を眺めた。
今頃は夜とらんはよろしくやってんだろうな〜なんて思うと オレは余計に情けない気分になる。
それでもオレはこうやって藤守の背中を見るのが嫌いじゃねえんだ。
むしろ・・・オレは・・。
こんなぴりぴりした部屋のなかでも藤守といられて嬉しいなんて
思ってる。
オレってやっぱりへんだよな?
そんな事を考えながらいつも藤守が使ってるベットに横になると 藤守のにおいがした。
夜とらんにちょっとだけ感謝して布団にもぐりこむとしばらくして俺が寝たと
思ったのか藤守は大きなため息をついていつもはらんが使ってる
ベットに横になった。
そのうち優しい寝息が聞こえてきてオレは起き上がると藤守の 寝顔を食い入るようにみた。
あの頃(子供の頃)とかわらねえあどけない寝顔だった。
普段は見せねえ藤守の本当の素顔を見たような気がする瞬間だ。
【なあ藤守 お前オレのことどう思ってんだ?やっぱお前に嫌われ
てんのか、オレ・・?】
越えられねえ距離を堪えるようにオレはぐっと拳を握ってこらえた。
ああ〜なんでオレと藤守はこうなんだろ?
なんで夜とらんみてえになんねえのかな?
夜とらんは今頃は・・きっと。
想像しそうになったことを払いのけることは出来なかった。
【ふじもり・・・・】
罪悪感を感じながらぎこちなくオレは下半身に手を伸ばした。
お前はどんな顔で喘ぐんだろう。
藤守だって男だからこんなことすんだろ?
寝顔の藤守に問いかけながらオレの指は加速していく。
お前は誰を思ってするんだ?
その相手がオレだったらいのに・・・・な。
欲望を吐き出したあとオレが自己嫌悪に陥ったのはいうまでも
なかった。
|