ハニーが大人になるまで 8





「ガク、」


熱のある声だった。
いつもはあんなに冷たくて、冷淡だと言われてる芥とは思えない。

芥はいきなりオレ腰を両手でつかむとくるりと回転させた。

「あっ」

オレはソファに両手をつく格好になって腰を大きく持ち上げられた。
これってまさかすぐに!?

芥の腰がそこに押し付けられる。
コートの上からぐりぐりと回されて直接じゃない気持ちよさとじれったさ
でオレの腰は芥の腰の動きに合わせて自然に上下する。

もうこのまま蒸発していましたいぐらい恥ずかしい。
なのにやめることができなかった。

芥の手がそのままコートの中に進入してくる。
やっと与えられる直接の愛撫と思ったら芥が触れてきたのは
セーターの中の小さな突起だった。

「んなとこ、女じゃねえんだから、」

「虚勢だな、」

嫌だって首を振ってみても芥はやめなかった。
オレだって本当はわかってる。
そうされるとすげえ感じちまうこと、
けどそんなの恥ずかしくて認めたくねえんだ。

「芥、カイ、やめろって、頼むから、」

芥の高いカシミヤのコートを汚してしまいそうでオレは腰をわずかに浮かす。

「ダメだって、芥のコートが・・皺になっちまう。」

咄嗟に言った一言に背後にいる芥が笑ったような気がした。

「かまわん。」

「ダメだって、」

逃げ出そうとしたら腰をぎゅっと引き寄せられた。

「カイ!!」

泣き叫ぶようにオレは芥に懇願した。

「頼むから、」

芥は今度は突然突き放すように力を抜いた。
オレはソファにつんのめるように倒れた。

「あの男に何をされた?」

急に放されてオレは不安になる。
芥の顔をおそるおそる見上げると芥も辛そうだった。

「何?って芥知ってるんだろ?」

『ちっ』と小さく舌打ちした芥にオレは慌てて言いなおした。

「何もされてねえって、」

「何も?ここを、」

芥はそういってオレの首筋をゆっくりと撫で下ろした。

「ここを触らせたのだろ。」

「それは・・。」

「ここも触らさせたか?」

芥の手がオレの唇をなぞる。オレはびくっとした。
キスはしていない。
でも綾野ちゃんに唇は触れられたのは確かだった。

オレの反応に眉間を寄せた芥がコートのボタンを一つづつ外して行く。
まるでオレの体を反応を確かめているようだった。

肩からすべるように降りてきた芥の手はセーターをたくし上げ
先ほどまで弄ばれていた胸に降りてくる。

「ここも触らせたのか?」

「触られてねえって、」

咄嗟に『バスタオル越しには・・・』と思ったがそんなこと
芥にいったらますます何されるかわからなかった。

「それ以上は何もされてねえって、本当だから、」

それでも芥は疑わしそうにオレを(というよりオレの体)をまるで
検査でもするようにじっと見下ろしていた。

「お前はあの時全裸だった。あの男に全てを曝け出したんだろう。」

「あれは、オレが風呂場で気分が悪くなって倒れて、」

「下らん、いいわけだな、」

芥は冷たくそう言い放って
コートのフォックを全て外しオレの肩からコートを外した。


「セーターも脱げ、」

芥のいいぐさは絶対だった。

オレが芥から視線を外すと、芥はシャツを脱ぎ始めた。
見ていなくても音と床に落ちた衣類で芥の状況はわかる。
全身がぼうっと熱くなる。

「脱げといってるだろう。それとも脱がして欲しいと?」

「違っ、」

まるで芥に『往生際が悪い』と言われたような気がして、オレは目をつぶったまま
セーターをいっきに頭から抜いた。

ゆっくりと芥を見上げると芥の手から下着が床に落ちていった。
全裸と全裸。
お互い無防備ですべてを曝け出していた。

どうしようもない程の羞恥が押し寄せてくる。

何度も芥と体を重ねているのに、
こんなのに慣れなんてこねえんじゃねえかって思う。

芥はソファに座ったままのオレの手を引くと派手なベッドの中央に
導いた。
ベッドの感触が明らかに綾野ちゃんと行ったホテルのものとは違ってる。

芥がオレから一端離れたからオレは緊張を解いてペタリとベッドの上に
座り込んだ。

芥はベッドの向こう側のやけに派手な窓の所までいくと
一気にカーテンを開けた。
そこにあったのは窓じゃなく、大きな鏡だった。

「な、これって、」

オレがベッドから逃げようとすると芥がオレの足を大きく持ち上げた。
そうしてくるとうつぶせにし芥の全身でオレを押さえ込んできた。

さっきはコート越しだったけど今度は明らかに芥の肌を男を感じてオレは
戦慄いた。

「芥・・。」

「顔をあげてみろ、」

オレはぶんぶんと顔を横に振った。
芥に背後から顎をつかまれ強引に鏡に視線を向けられる。

「あっ、」

鏡に四つん這いにされたオレの姿があった。

芥に支配されたオレの体、心それが今全てが曝け出されていた。
芥の視線がじっと鏡のオレをみつめてた。
本来なら合うことのない視線。
オレは恥ずかしいのに芥の視線を外すことが出来なかった。

「ガク・・・、」

鏡のオレに向かって芥が呼んでいるようだった。

「芥」

熱い声と芥の冷たい指、
いつの間に用意したのだろう潤滑油がたっぷりとあてがわれる。
冷たくぬるりとした液体は肌に濡れた瞬間火照るように熱くなる。

芥がオレとの行為のために作ったものだ(媚薬)。
それを芥はオレの敏感な場所へとあてがっていく。

「やっ、」

片手でオレのものを軽くしごきながら濡らし、起用にも反対の左手は
赤く染まった胸の尖りを濡らす。

「ああっ、」

薬があてがわれた場所がそこから熱を発してたまらなくなる。
鏡に映る俺はまるで芥を誘惑してるみてえに全身を揺らした。

「カイ・・・、」

「何だ?」

「カイって、」

まだ焦らそうとする芥にオレは大きく腰をゆすった。
それは自分でもどうすることが出来ないほど淫らでいやらしい仕草だった。

「そうやってあの男も誘惑したのか?」

「するわけねえっ・・・ってあああ、」

芥はいきなりそこにたっぷりと塗りこんだ指を突き
入れた。
冷たかった液体が一瞬にして蒸発する。

「あああ、ああああ・・・」

オレは口をぱくぱくさせながら引き攣る体を必死に堪えた。
痛みなのか快楽なのかわからない感覚が体の奥から湧き上がってくる。

「かい・・・かい・・・、もう、」


「かい・・・かい・・・、もう、」

「そんなにいいのか、」

「うん、うん、」

もう何を言ってるのかもわからないぐらいどうしようもなくなっていて
オレは自分から芥を受け入れやすい姿勢になってた。

鏡の中の芥がオレの腰を大きく持ち上げた。
芥のものがあてがわれてオレは目を閉じ息をつめた。

ゆっくりと押し進んでくる侵入者にオレは内臓がえぐられそうなほどの圧迫感で
悲鳴をあげた。
下半身が全部が持ってかれてしまいそうだ。
額から冷たい汗が流れ落ちた。

何度芥と体をあわせても、この瞬間だけは痛みがなくなる事は
ねえんじゃねえかって思う。

「ああっ、」

芥は最奥まで進むとトントンと軽く体を馴染ませた。
丁度オレの一番感じる所にいってひきつけを起こしそうになった体が
ぎゅっとしまる。


「今日は随分感じているみたいだな。」

「芥が、焦らすからだろ」

「ならばもっとそうすればよかったか?」

「バカ、いいよ。そんなの・・・だから、もう、」

「そうか。だったら懇願してみろ。何をどうして欲しい。」

「んなのわかってるくせに・・・。」


芥は学の額を持ち上げるとしっかりと鏡を意識させた。
馬乗りになった芥の姿が映ってる。
目をそらせなくなる。

「ほら、言ってみろ、オレにどうして欲しい?」

オレは観念するように鏡に映る芥に向かって言った。

「犯せよ。オレを、芥の体で、芥のものだって教えてくれよ。」

芥はオレのその返事にほくそ笑んだ。
そのままオレの口の中に指を2本差し入れてきた。

「ううっ」

芥はそれを舐めろと言うように執拗に口の中にねじりこんでくる。

「ううんっふううん」

下も上もオレの体全てが芥でいっぱいになっていく。
芥も堪らなくなったのだろう。

「うっ」

と小さなうめき声を上げてオレの体の中をゆっくりと上下に
動きはじめた。

「ガク、」

『カイ・・。』

耐えられなくなってお互いの名前を呼び合った瞬間
その動きが大きくなり口の中の指が自然に外れていった。
すかさず芥が今度はオレのモノを握ってくる。

「はああ、イヤ、」

口から出たのは拒否の言葉だったけれど本当は違う。
あまりに感じすぎてどうしていいかわからなかったんだ。

「ガク・・ガク・・・。」

芥はまるでもっともっとというようにオレを求めてる。
オレも、もっと芥が欲しくて芥の名をうなされたように何度も呼んだ。

「カイ、カイ・・・カイ・・・。」


もうお互いに発する言葉に意味なんてない気がした。

ギシギシとうなるベッドのシーツにぎゅっと爪を立ててオレの体が弓のようにのけぞった。

「芥、オレもう・・・」

限界だと訴えると芥の動きはますます大きくなった。


「ああっああああ・・・」

絶叫とともに鏡に映るオレと芥の姿がぼやける。

オレはそのままベッドへと落ちていった。




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あはははは・・・。やらかしてしまいました(苦笑)
しかもまだ続いたりします。長い〜;