続・フラスコの中の真実 15



※ 15話は芥の視点になってます。ややこしい書き方してすみません;




芥は道端で拾いあげた学を自身の研究所の
奥(芥と学しか入ることができない場所)へと連れ込むと
学をソファに荒々しく落とした。

それでも学はよほど熟睡してるいのか、あるいわ
体力を消耗しすぎているのか目を覚まさなかった。

「ガク・・・」

絞るようにガクの名を呼んだ芥は怒りで
小刻みに震えていた。

学の体にはあの忌まわしい薬の臭いが残っていた。
これほどに体力、気力を消耗しているのだ。
あの男に何をされたかなんて一目瞭然だった。


先ほど学をあの場所で見つけたときから
芥の胸にあるのは激しい怒りとジェラシーだった。

芥は自身でコントロールすることもできない感情を未だ眠っている学にぶつけるように
荒々しく学の白衣を剥ぎ取り服を引き裂いた。

「ん・・?」

眠っていた学が小さく身じろぐ。

びりびりと裂けた服の隙間から学の少し焼けた素肌が覗いた。
そこには赤く鬱血した痕が散らばっていた。

まるであの男が芥に学の所有者を教えるように。


「・・・・・・ガク」




芥はそれをみた瞬間封印したはずの忌まわしい過去の記憶が脳裏に
蘇り、崩れ落ちるようにその場に膝をついた。






あれは15年以上も前、芥がまだナンバーで呼ばれていた頃。


あの男は毎晩のようにまだ性にも目覚めていない(いやその意味さえわかってはいなかったろう)
学の肢体にこうやって痕をつけていた。


『なんでこんなことするの? 』

『これは儀式だ。
お前が生涯私のものだと言うことを体に教えるためのな。』

『オレは教授のもの?』

『ああ、頭のいいお前ならわかるだろう。
お前は私が作った最高傑作だからな。いずれお前は私の
すべてを引き継ぐことになる。』


あの男はそういいながら、学の柔らかな肢体に血のように赤い
舌を這わせていった。学はくすぐったそうにしながら
その『儀式』に懸命に耐えていた。

そしてその様子を盗み見てしまったオレにあの男はニヤリと含み笑い
をして・・・。

まるで見せ付けるように学へのその行為をエスカレート
させていった。

あの男は知っていたのだ。
オレが学を憎んでいたことを、
そしてオレがガクを愛していたことを。



そして持ちかけてきたのだ。
「お前が学のかわりをすれば学には2度と手出ししない」と。

オレはそれを受け入れた。
あの男とガクの儀式を見るのはオレにとって胸が張り千切れる程に耐え難いことだった。
ならば、それぐらいなら・・・。と


しばらくはあの男のいいなりになっていたオレだったが
そのうちあの男は興味をなくしたようにオレから手を引き、あっさりと学をも手放した。

真一郎に異常に執着しはじめた頃だったし、もう2度と学と会うこともないだろう
と思っていた。
だが学はあろうことか高等部から学園のそれも化学部に入部してきたのだ。

今にして思えばすべてはあの男の計画(思惑のうちではないかと)
さえ思えてしまう程にだ。



オレもお前もあの男にあがらえないのは、あの男によって作られたものだから
などとは認めない。

が・・もし仮にオレのゲノムのすべてがあの男に畏怖することを刷り込まれて
いたのだとしてもガク、お前だけは絶対にあいつには渡さない。

例えオレ自身でお前を手にかけても・・・だ・・・・ガク。





芥は未だ眠る学の腕を掴むと傍にあったタイに手を伸ばした。
一瞬細い学の首が目に留まったが、かろうじてそこから視線を引き剥がすと
学の両腕を掴んだ。

「え?何?」

この時になってようやく学は目を覚ました。
もちろん今の状況などまったくわかってはいないだろう


「芥、何、あれオレ体がなんで動かねえ?」

「騒ぐな、黙ってろ!!」

芥のあまりにも押し迫った口調と自身の体に起こった変調で
ようやくこの状況を理解した学は絶句した。

ぼろぼろに引き裂かれた服、両腕は纏めて縛られ、両足は広げるように
机で固定され、学はあまりの自分の醜態に目を背けた。



「ふっ、なかなかいいカッコだな。」

「芥、なんでこんなこと・・。」

「理由はおまえが一番わかっているだろう。」

学はまるで睨むように芥に視線を投げかけた。

「だったら教えてくれよ。
芥と教授の関係ってなんだ?親子ってだけじゃねえのか?」

そう学が口にした途端、氷のようにつめたい芥の視線が
学を縛り付けた。

「あいつとはなんの因果もない。」


芥はもうこれ以上何も言わせないためにガクの唇に噛みついた。




16話

あとがき

えっと、えらい所で次回持ち越しです(苦笑)
作者の作為です(苦笑)