ウェディング狂奏曲 9





教会の中に入ってからも広夢はそんな感じだった。

「梅ちゃん先生久しぶりなの〜!!」

「うわ〜佐倉、お前なんってカッコしてるんだ〜!!」

飛びつかれた梅谷は慌てていたが広夢はへへっと笑った。

「いいでしょ?モデルの衣装なの。僕も今日空先輩と結婚しちゃおうかな〜
と思って。」

後を追って入ってきた空はまた慌てる羽目になった。

「なななっ・・・!!!!」

「なかなか大胆だね〜。でもナオくんという強敵がいるよ。」

「祭ちゃんオレは強敵じゃないよ!!」

直は真っ赤になって否定してる。

「そう、だ・か・ら3人で結婚式するの〜!!」

広夢は空と直の手をとるとうっとりとそういった。

「なんてね。直くん空先輩、冗談だよ。
でも空先輩いつか直くんと結婚するの。じゃない
僕がもらっていっちゃうの〜。
これは本気だよ。」

「ああ、広夢。」

直も空も広夢の気持ちは痛いほどしってる。
そんな広夢だから2人とも大好きなのだ。

「おいおいお前らオレらの事は無視かよ。」

広夢は目を丸くしてその相手をじっとみた。

「ひょっとして水都先生??」

『いや、(その)水都先生の弟(さん)だ。』

広夢の質問に答えた奏司と梅谷の言葉が見事にハモった。

「そうなの??」

広夢の頭の中は?の字が踊っていたが周りは今にも笑いそうになるのを
必死に堪えていた。

「お前ら・・」」

「真一郎!!」

七海に窘められて真一郎はまた撃沈することになった。
教会に笑い声が響いた。




そのあと教会にやってきたのは市川と永瀬だった。
2人はお揃いの黒のスーツを着ていた。永瀬は見事に着込んでいたが
市川はまるで七五三の延長のような感じだ。


「空先輩会いたかったよ!!」

「おう、市川久しぶりだな〜」

広夢と同じように飛びついてきた市川に空は苦笑した。
どちらかって言うと市川は犬で広夢は猫みたいだなと空が思っていると
嫌な視線を感じて後ろを振り向いた。
そこには隅で腕を組んでこちらを睨む永瀬がいた。
その威圧感にただならぬものを感じ空はそそくさと市川から離れた。

「空先輩どうかしたのか?」

「いや、別に・・・。」

カラカラと乾いた笑みを浮かべる空に市川は頭をかしげた。
市川は全然わかっていないらしい。

「そういえば先輩、まだ義弘きてねえ?それに親父も・・。」

「ん?そうだな。まだ見てないな・・。」

「そっか、」

市川はちょっとがっかりした表情をしたが、懲りずに次は広夢の所に
駆け出していった。チラッと永瀬を伺うと空といたときとは違って表情が穏やかだ。
広夢は許せるらしい。



最後に教会に来たのは綾野だった。
もうすぐ挙式も始めるという時間だった。

「ごめん。急患が入って、ぎりぎりになってしまった。」

息を切らしながら綾野は後ろを振り返った。

「ほら、君たちも早く入っておいで。」

そういわれておずおずと教会に入ってきたのは3人組みの同級生・
元不良さんだった。

「あっ!!不良さんたち。」

いち早く反応した広夢に一同は苦笑した。
誰もちゃんと名前を覚えてなかったのだ。

「『不良さんってな』」

「ひどいな、佐倉」

「名前ぐれえ覚えてくれって!!」

そこで梅谷が「ン」と咳払いした。

「オレは覚えてるぞ。杉山に岸本に庄川。お前ら元気でやってるのか?」

「流石梅ちゃん覚えててくれたんだ!!」

それだけで感激の声があがる。

「当然だろう。生徒の名前と顔はちゃんと覚えてる。」

「本当に、梅谷先生は誰かと違って教師の鑑だ。」

奏司はわざと真一郎に絡むようにいった。

「奏司・・・。、」

いちいち反応する真一郎に七海が足を踏んずけた。
っつうう・・・顔をしかめたが真一郎は言葉を続けた。

「で、お前らも招待されたのか?」

「オレたち正式に招待を受けたんだぜ。」

「ほらっ」と招待状を見せる元・不良たちに空が弁解した。

「兄ちゃんこいつら今は真面目にやってんだぜ。」


元・不良たちはそれに「うん、うん」と頷いた。




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不良さんたちまで登場させなくていいかな〜と思ったんですが、結婚式には参列者が多い
方がいいかなっと(笑)

残りは3話です。連休中にはなんとか。