ウェディング狂奏曲 6 直と空がらんと夜の控え室から退出したのはほぼ同じ頃だった。 「藤守、らんの支度終わったのか?」 直は空に自身が泣いていることを悟られないように顔を背向けて頷いた。 でもそれは余計に空を勘ぐらせた。 「って藤守どうかしたのか?」 空が駆け寄ると直が言った。 「ごめん。羽柴一人にして。」 直が泣いてるというのは一目瞭然だった。 「藤守・・・。」 空は直を後ろからぎゅっと抱きしめた。 「なっなんだよ?」 「ごめん。オレ今藤守を一人にすることなんてできねえ。」 「なんで?」 すごく慌てた直の声に空は優しく笑った。 「だってオレと一緒に居てほしいって顔に書いてるぜ。」 「何言ってんだよ。バカ羽柴!!」 「バカだよ。オレは・・。」 「もう認めんなって。」 「うん。けどオレが藤守と一緒にいてえんだ。」 泣いてる藤守を一人にするなんてできなかった。 それに藤守だって本当は強がってるだけだってわかるから。 空は直の体を自身に向けた。すぐに顔を逸らしたけど直の 瞳は濡れていた。 その瞳にチュっと唇を落とす。 「羽柴?!」 今度は頬に、そして唇に・・。はじめはついばむような優しいものだったが だんだんそれは深く長くなってく。 その時だった。 突然シャッター音とともにフラッシュが光ったんだ。 慌てて離れた空と直の背後に不敵な笑みを浮かべた祭が立っていた。 「ま・・・まつりちゃん!?」 「あはは・・ごめん直くん。こっそり隠しどりするつもりだったんだけど いい写真を撮ろうと思って前に出すぎちゃったよ。 おかげですごくいいのが撮れたけどねえ〜。」 「てめえ祭!!」 祭は悪びれた様子もなく長い髪を揺らした。 「もう久しぶりに会ったって言うのに、二人ともラブラブで 僕の入る間なんてないんだから。」 そういいながらまた祭がレンズを構える。 「祭!!」 カメラを取り上げようとした空に祭が勝ち誇ったようにいった。 「駄目だよ。今日はらんくんたってのお願いでカメラマンするんだから。」 「だったらオレと藤守は別にいいだろ!!」 「だって二人であんなことやこんなことしてるんだもん。 こんなシャッターチャンス滅多にないだろ?」 得意げに祭はそういったけど二人には洒落にならなかった。 「違うよ。祭ちゃん、あれは勝手に羽柴がやったんだからね。」 直は慌てて言い訳しながら空の足を思いっきり踏みつけた。 「痛え、なんでオレが・・?ってオレのせいなのかよ。」 「羽柴が全部悪いにきまってるだろ!!」 真っ赤な顔を更に真っ赤にさせた直に祭はカラカラと笑った。 でも本当は空も直もあまり悪い気はしていない。 祭の登場で急に重い空気が晴れたようなそんな感じだった。 3人は改めて顔を合わせるとぷっと噴出した。 「そうそう、僕が来たとき、もう何人か教会にきてるみたいだったよ。」 祭はとっておきの情報をいうようにウィンクしてみせた。 「本当?」 「うん。僕も久しぶりだから楽しみにだな。」 「だったら早くいこうぜ〜!!」 いきなり走り出した空と祭の後を直が慌てて追った。 子供の頃から空と祭はわくわくすることがあると競走するように走っていってしまった。 もっともその頃は夜とらんも一緒だったけど。 直がそんな事を考えながら息を切らせて立ち止まると二人はいつの間にか微笑をうかべて待ってくれていた。 それは子供の頃と全然変わっていない気がした。 7話
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