ウェディング狂奏曲 4



またお話飛んでます;気にしないで読んでください(汗)



「私が一番乗りのようだな。」

優雅な身のこなしで奏司が教会に入ろうとすると急ブレーキをかけて教会の前に
古い乗用車が止まった。
それは静寂な朝に似つかわしくない大きな騒音だった。

何事かと思って振り返った奏司は目を丸くした。
梅谷先生が肩を震わせながらその車から降りてきたのだ。

「あいつら男同士で・・ましてオレより先に結婚するなんて。断固阻止してやる。」

ぶつぶつ独り言をいう梅谷に奏司は苦笑して声を掛けた。

「これは梅谷先生、おはようございます。」

梅谷は足を止めると奏司を凝視した。

「えっとどちら様で・・?」

「これは失礼しました。私は浅香奏司と言って弁護士をしております。」

奏司はポケットから名詞を出すと梅谷に渡した。

「これはご丁寧にどうも・・・。であなたもあの2人の結婚式に?」

「ええ、そうです。」

「弁護士ならあいつらが結婚なんて可笑しいとは思わないか?」

梅谷のもっともらしい言い分に奏司は笑った。

「梅谷先生のおっしゃるとおりかもしれません。でも2人が
幸せになるならそれでいいじゃないですか?」

梅谷は罰が悪そうに下を向いた。

「そういうもんか?」

「そういうもんです。だから阻止なんていわずに教え子の門出を一緒に祝いましょう。」

梅谷は何かいいたそうに口を開いたが諦めた。
この人にはどうも口では敵わないと悟ったのだ。
それになんだかわからないが奏司に対して妙な親近感があった。

インテリでどこかすました奏司は全く自分とは似ても似つかなかったが。

「はあ、まあしょうがないか・・。であなたはなぜ私の事を?」

「当然ですよ。私とあなたは同じ声なのだから。」

「はあ?」

間抜けた返事を返した梅谷を奏司が笑った。

「さあ、梅谷先生せっかく早く教会に着いたんです。一緒にいい席につきましょう。」

奏司の笑みにつられて梅谷はその後を追って教会に入っていった。








一方夜の控え室に入ったオレ(羽柴空)は・・・。
いつも茶化すような夜がいつになく真剣なんでオレはどうも居心地が悪かった。

「で、夜、オレに話ってなんだよ。」

「オレたちはよ、ずっと一緒にいたわけだしな。オレが結婚しちまうと
空が寂しい想いをするんじゃねえかと思ってよ。」

「なわけあるか・・!!」

夜はくすりと笑うと先ほどの居心地の悪さは消えていた。

「ま、んなわけはねえだろうけど、オレたちはお袋の腹の中からずっと一緒にい
たわけだしな。」

夜はそこで一呼吸を置いた。ひょっとして寂しい想いをしてるのは夜の方じゃねえのかって
思った。流石にそれがいえなかった。

「そら・・・・。」

やけに熱っぽく呼ばれて俺は夜を凝視した。

「たく・・。こういうのはオレの柄じゃねえんだけどな。」

夜は頭を掻きながら言った。

「お前オレがなんでらんと結婚すると思う。」

「そりゃ、らんが好きだからだろ?」

「まあそれは当然だな。」

「それだけじゃねえのか?」

「オレとらんが結婚するって事をオレは一つの方法として示してえんだ。」

「どういう意味だよそれ?」

「お前もスナオと恋人同士だろ?」

「それってオレと藤守にも結婚しろってことなのか?」

「そうは言っちゃいねえよ。オレとらんの結婚は一つの方法って言ったろ?
けどこういうことも出来るって事をよ、言っておきてえんだ。」

そう言った夜の顔をはいつになく真剣だったからオレも真面目に聞いてたら
夜がオレの腕を引き寄せた。突然夜の顔が近づいてオレは慌てた。
それはオレの唇のホンの少し手前で止まった。
オレが文句を言う前に触れそうなほどの距離の夜の唇が開いた。

「って相変わらず初心だな。オレに抱かれてるのに真っ赤だぜ?
ひょっとしてこれ以上の事も期待してるってか。」

唇が触れそうになってオレは思いっきり夜を突き飛ばすと捨て台詞を吐いた。

「夜のバカやろう。真剣な話かと思って聞いてりゃよ。一人で
やっとけ・・。」

怒りはあったけどオレは部屋を飛び出す時ちょっと名残惜しいなって思っちまった。

あっと別に夜とキスしたかったわけじゃねえぜ。
もう少し夜とちゃんと話がしたかったんだ。

今日の祝いもまだオレ言ってなかったしな。
扉の前でため息をついてもう1度部屋に戻ろうかと思ったけどオレは躊躇してやめた。


オレが飛び出した後、夜が柄にもなく寂しそうな表情をしてたなんて
事をオレは知らなかったんだ。


        
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あとがき

夜がらんと結婚するって事は空を決別するって事やと思うんですよ。そんな大層なもんじゃ
ないかもしれないけどねえ(笑)
梅ちゃんと奏司さんは二人が会話してる所を聞いてみたいな〜という私の願望です(笑)