邂逅 4





               
「お前オレの匂いがダメなんだろ?」

やはり犬夜叉が小屋に戻ってこないのは六太を気遣っての事だったのだと
思うと六太はなんだか嬉しかった。

「少し慣れた。」

血の匂いに慣れるなんてことはないが、六太は犬夜叉に興味を
魅かれてそう言った。

「てめえは妖魔なのか?」

六太が空から落ちてくる時、妖魔に襲われるっていうより守られてた
という犬夜叉はちゃんと六太が空から落ちてくる所を見ていたのだ。



しばらくたっても返事を返さない六太に焦れて犬夜叉はまた
木の枝に横たわった。

六太もそれにならうように空を見上げた。



こうして並んでいると六太はずっと犬夜叉と一緒にいるような
そんな気がした。

ずっと前から犬夜叉を知っていたような不思議な感覚・・・・。


六太は遠い昔を思い出すようにぽつりぽつりと話しはじめた。


「俺は両親に山中に捨てられた。体が弱ったし、俺がいるせいで
家族全員がのたれ死ぬぐらいならって俺もも諦めた。」

「六太てめえ行くところがねえなら、オレたちといたっていいんだぜ。」

かごめと同じことを言った犬夜叉に六太は苦笑する。

「おまえらは恵まれてんだな。」

犬夜叉はけっ〜ってはき捨てた。

「恵まれてる?俺たちが?笑わせんなよ。オレらの苦労もしらねえでそんな
事を抜かしやがんなってんだ。」

六太は苦労してないといったわけではない。このご時勢だ。
みな死ぬような苦労をしてる。

みな自分のことだけで一生懸命で食うや食わずの生活なのだ。
だからこそ他人の面倒までみようなんてお人よしはいない。

「犬夜叉、聞いていいか?もしあの時俺が本当に妖魔に襲われてたら
助けてたか?」

「そりゃあよお。オレの目の前で死なれた時には気分悪いからな。」

「ならもし、俺を助けたせいでお前がやられたら?お前の仲間が
やられたら俺を助けたりはしなかっただろう?」

犬夜叉は目をひん剥くと六太に怒鳴った。

「いいか。俺もあいつらもやられるわけねえ。第一やられようとやられまいと
見過ごすなんて胸糞わりいことしねえ。」

当然のようにそういいきった犬夜叉の顔を六太は見つめた。

「オレが探してる人もそうだったらいいんだけどな。」


六太はぽつりとそうつぶやいたがそれは現実にはありえない。

悲しいかな自分の半身である王は、そうはいわぬだろう。
目の前で死んでいく人がいても、その身を挺したりはしない。

犬夜叉は大きくため息をつくと
めんどくせえやつだな〜とぼやきながら起き上がった。

「てめえの探してるやつがどんなやつか知らねえが、
てめえはてめえの思うとおりすればいいじゃねえか?
 ってそれじゃあ〜ダメなのかよ?」


六太がきょとんとすると犬夜叉は少し照れくさそうに頬を掻いた。
確かに犬夜叉のいうとおりかもしれない。



そう思うと六太は少し気持ちが軽くなったような気がした。




しばらく二人は何も言わずに寝そべっていたが
突然二人を取り巻いていた風の匂いが変わった。

二人は同時に起き上がると一緒に叫んでいた。



「妖魔!!」だと。








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