「六太、てめえはかごめたちを起こしてきてくれ、オレは先に行く!!」
禍々しい妖魔の気配はあきらからに小さな村の集落へと向かっていた。
「犬夜叉オレも連れて行ってくれ!」
「何言ってんだ。てめえみたいなやつをつれていけるか!!」
「足手まといにはならない。頼む。犬夜叉。」
六太は必死に頼んだ。
ここへ落ちてくる時から気づいてたのだ。
あの村は・・・六太が生まれた故郷だと。
小屋の扉があいてかごめと弥勒 珊瑚が慌てて駆け出してきた。
3人とも妖魔の気配にすぐ気づいたのだ。
犬夜叉はチッと舌打ちすると六太をおぶった。
「落ちるなよ。チビ。」
こびりついた血の匂いのする衣に顔をしかめたが六太は犬夜叉の背に
しがみついた。
8つの頭と尾をもつ巨大な妖魔は村をその長い胴に巻きつけていた。
小屋から思わず飛び出してしまった小さな子供を
一つの蛇頭が大きく口を開けて襲い掛かろうとした時
輝く光の矢が放たれた。
「いけえ!!」
かごめの放った矢だった。
矢は頭を貫き妖魔がひるんだすきに今度は珊瑚が飛来骨を
投げるとその頭の一つが空に飛びちった。
その回収を弥勒がしている。
怒った7つの頭が一斉にかごめたちに襲い掛かり、犬夜叉がその懐にと
びこもうとした瞬間六太は犬夜叉を結界の外へ弾き飛ばしていた。
「てめえ、何を!!」
「悪い 犬夜叉、この妖魔はオレに任せて欲しい。」
「任せるって、てめえ・・・!!」
犬夜叉の叫びは風の結界に消し飛ばされていた。
六太は胸の前で印を結ぶと小さく術を唱える。
六太の黒い髪が金色へとかわり人から人ざらぬ者へと変わっていく。
「六太 てめえは一体・・?」
犬夜叉は声ざらぬ六太の声を聞いた。
【たのむ。犬夜叉、手を出さないでくれ!!】
妖魔は威嚇するように六太を取り巻いた。
小さな六太と妖魔は互いに牽制しながら距離を図る。
六太の背にひやりと汗が流れる。
かなりやっかいな相手だと麒麟の感覚がヒリヒリとそれを伝えていた。
まもなく夜明けがこようとする時間になっても六太と妖魔はにらみ
あっていた。
両者の均衡を崩したのは妖魔の方だった。
六太の一瞬の隙をついて襲い掛かってきたのだ。
弥勒が瞬時に動こうとすると犬夜叉がそれを制した。
「動くな弥勒!!あいつは大丈夫だ。」
「ですが・・。」
妖魔は六太に触れる寸で固まったように動かなくなった。
六太が胸の前で印を切る。
「名は蟒 性は八岐・・・我が名において調伏する・・!!」
六太が叫ぶと妖魔は見る見るうちに小さくなりやがて頭も尾っぽも一つの
人蛇の姿になって六太に膝まづくように半身を折った。
その一部始終をみていた犬夜叉はまるで自分の手柄の「やったぜ〜!!」
と叫ぶと汗をぬぐって六太の元へ駆け寄った。
本当は気が気ではなかったのだ。
「へえ〜やるもんですね〜。」
「ホントすごいよ。六太くん。」
「見直しちゃった。」
六太を褒め称える3人に六太はふっ〜と息をつくと小さく笑った。
東の空もしらみはじめ避難していた村人たちが
ざわざわと彼らの周りに集まって来ると、六太は慌てて犬夜叉の背にまわった。
「どうした?六太。てめえ??」
犬夜叉の背に隠れながらも六太は周りの人の気を嗅いだ。
が、そこには両親も兄弟の気配はなかった。
ほっとしたのか、それとも悲しみなのかわからぬ気持ちでいっぱいになって
六太は不覚にも涙が落ちそうになった。
あれから5年も・・・たっている。けれど・・・。
浮かぬ顔の六太に犬夜叉はコホンと咳払いをした。
「六太、てめえオレたちと一緒にこい!!どうぜ人探ししてんだろ?
だったらよお〜一緒に旅してるうちに見つかるかもしれねえじゃねえか。」
「そうよ。六太くんがいれば心強いしね。」
「ありがとう。でもオレはお前らとは一緒にはいられない。」
「六太?!」
名残惜しさが残る気持ちを抑えて六太は空へと舞い上がった。
やがて麒麟へと転変したその姿に犬夜叉はうおおお〜と感嘆の叫びを上げた。
頭には長い一角の角。黄金の鬣、馬のように美しい白い体躯・・・
その美しい獣は見るものすべてを魅了した。
「六太 お前・・・」
「ほほう。私もこの目でこの姿をみたのははじめてですね。
あれは麒麟ですよ。伝説の神獣です・・。」
この優雅で美しい獣を犬夜叉は生涯忘れないだろうと思う。
「六太くん元気でね〜。」
「達者に暮らすんですよ。」
「六太お前の探しるやつが見つかったら連れてこい!!また会おうぜ!!」
犬夜叉の声が一際大きく六太に届いた。
【ああ。またいつか会おう・・。かごめ、弥勒 珊瑚 そしてもう一人の俺・・・犬夜叉】
六太の声が犬夜叉に届いたかどうかわからない。
ただ犬夜叉の声は山峰にぶつかって木霊しいつまでも六太の心に響いていた。
END
ここまで読んで下さった皆様に感謝です!!
いかがだったでしょうか?六太と犬夜叉が並んでいる姿を思い浮かべてもらえたら
すごく嬉しいです。
ヤマタノオロチはオリジナル設定です。(笑)
六太は500年も生きているので調伏した使令も1体ってことは
ないだろう〜などと思って書いてみました。