やがて法師と大きなブーメランを担いだ女性が小屋へと戻ってきた。
「どうやら目が覚めたようですな〜」
「よかった。」
二人は六太の顔を見ると安堵の息をついた。
「弥勒さま 珊瑚ちゃん、この子は六太くんっていうの。
六太くん二人とも交代で君の事見てくれたのよ。」
かごめに言われて六太は頷いた。
意識を失っている間も二人の気配をなんとなく感じていたのだ。
「六太ですか。良い名ですね。私は弥勒といいます。」
「私は珊瑚。よろしくね。」
お互いに挨拶を済ませるとそれまで何も言わずにみていた犬夜叉が
そっと小屋から抜け出していった。
その後犬夜叉は夜になっても戻ってはこなかった。
六太はかごめたちが眠ったのを確認するとそっと小屋を抜け出した。
月の光だけが荒れた大地を照らしていた。
六太がここに落ちてきた時は突然すぎて周りに気を配る余裕さえなかったけれど
蓬莱の民もまた戦や妖魔に襲われて荒れているのだ。
それにしてもかごめや珊瑚 弥勒たちはなんと温かい人たちなのだろう。
六太を助けてくれたばかりか身寄りのない六太のことを
引き取り手が見つかるまで面倒をみるといったのだ。
六太が心配してると思ったのかかごめは心配なんてしなくていいと〜
笑顔を向けてくれた。
六太は心の中で問うてみる。
『こんな無償の優しさをオレは受けたことがあっただろうか?』と。
そして・・・
『彼女ではないのか・・』と。
けれど彼女ではないのだ。彼女には何の啓示もない。
それに彼女はなにか別の使命のようなものを背負っていて連れ帰るわけにはいかないだろう。
彼女だったらよかったのにとあるいわ彼女のような者ならどれほど良いだろうに。
高い空を見上げ六太は王のいない雁国を思う。
雁国の大地は荒れ作物は枯れ人々は麒麟が新しい王を連れて戻ってくるのを
ずっと待っている。
六太がこうしてる間にも飢えで死ぬものもきっといるだろう。なのに俺には何もできない。
雁の麒麟なのに雁を救うことも、雁に行く事さえままならぬのだ。
ふと六太の傍にある木の上に人の気配を感じて見上げると月に照らされた犬夜叉が横になっていた。
六太は暗がりの中その木によじ登ろうとすると女怪が制した。
『台哺 人の姿でここを上られるつもりか?』
「大丈夫だ。いざとなったら転変する。」
そういい置いて、暗闇の中六太は犬夜叉が横になっている太い枝の所
まで這い登った。
すると犬夜叉が六太に手を差し出したのだ。
六太はその手を受け取ると犬夜叉の隣に座った。