邂逅 2





               
『このオナゴ台哺に危害を加えるようなことはあるまいな。』

『・・・・があの時台哺はわれわれに手をだすなとおっしゃられた。』

『ならば、そのような事あらばすぐにも・・・・・』

使令がくつくつと地面の内から湧き上がる声で話しているのを
六太はうつらうつらと徘徊する思考の中できいていた。




どれぐらい眠ったろう。

額を優しく撫でるやわらかい感覚に六太は意識を取り戻した。

麒麟の額には霊力を発する角がある。
だから六太は額を触れられるのは自身が麒麟だと認識する以前から
嫌いだった。

だが六太の額に触れられた手は暖かい。
不思議とずっと触れられていたいような、そんな気分にさせられる。
誰だろう?

ゆっくりと目を開けた六太に眩しすぎるほどの日差しが飛び込んできた。

「よかった。ようやく目が覚めたわね。」

そういって六太に笑いかけたのは日差しにも負けないほどに
明るく笑う少女だった。歳の頃は六太より少し大きいぐらいだろうか?

だがその少女の服装は六太がどの世界でも
見たことがない変わったものだった。

「あ・・・オレ・・?」

起き上がろうとした六太を少女がかばうように支えた。

「ダメよ。寝てなきゃ。顔色まだ悪いよ。
それより気分はどう?水汲んでこようか?」

少女は矢継ぎ早に問いかけてきて六太は小さく頷いた。

「大丈夫 それよりあんたは?」

「私はかごめ。君は?」

「オレは六太。」

「六太くんか。」

彼女はそう言って六太の頭をまた撫でる。
やはりそれは嫌な気分ではなかった。


「六太くん。体の調子はどう?」

「もう大丈夫。血の匂いに酔っただけだから。」

「血の匂いって?」

六太は自分が体が弱い事や血の匂いで酔うことをかごめに話した。
するとちょうどその時小屋の入り口についたてていた竹の御簾が開いた。


「よう〜坊主目え覚ましたか〜?」


御簾から顔を覗かせたのはあの犬夜叉と呼ばれていた少年
だった。

六太が坊主と呼ばれてむっとしたのは相手が自分とそう変わらぬ歳に
見えたからだ。

「どうしたんだ?まだ調子わりいのかよ。」

ずんずんと小屋に入ってきた犬夜叉に六太の使令がざわめく。

『台哺あのもの妖魔にございます。』

確かに犬夜叉からは妖魔の気配があったし先刻感じた怨念じみた
血の匂いも残っていた。

・・・・が妖魔は人とは群れない。
それにこの少年はやはりどこか自分と同じ匂いがする。




「犬夜叉!!」

かごめが突然大きな声をあげて犬夜叉が立ち止まる。
六太の表情が強張ったのを感じ取ったのだ。

「なんだよ、かごめ。こんな近くででけえ声上げなくても聞こえるって!!」

「だったら・・・おすわり!!」

そのあとかごめの理不尽なおすわり攻撃に犬夜叉が、地べたに這いつくばることに
なったのは言うまでもなく・・・。

「オレ 何もしてねえだろ〜!!」

犬夜叉のきゃんきゃん吼えるような叫び声を聞きながら
六太はまた噴出す事になったのだった。






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