交差 5



2004年04月07日
僕は地方であった緒方先生と進藤との対局を控え室から
観戦している。

あれから・・・何度進藤に電話をかけても
彼が出る事はなかった。

それに引き換え僕に対する態度にどこか皮肉めいた余裕を見せる緒方。

あの日二人に何かあったという疑惑は日増しにアキラの中に募っていった。



対局を終えホテルロビーに顔をだした進藤を僕は呼び止めた。

「塔矢 こんな所まで?」

「ああ。決して遠い距離とは思わないよ。」

こうして君と向かい合えるなら。

「で、負けた俺に何のよう?」

「残念だと思ってるよ。内容だって悪くなかった。」

「そんなの気休めにもならねえよ。」

そのまま立ち去ろうとした進藤に咄嗟に腕をつかんでいた。


「進藤 聞きたい事があるんだ。」

「お前が聞きたい事ってひょっとして俺と緒方先生のこととか。」

僕はずばりと進藤に言い当てられてうろたえた。

「それは・・そうだけど。」

「そんなの俺じゃなくて先生に聞けよ。」

「君には応えられないようなことなのか。」

「だったらどうだっていうんだよ。お前には関係ねえだろう。」

・・・関係ない。その言葉がひどく心にのしかかった。

「本当にそう思っているのか?」

「そうだろ。俺と緒方先生の事だろ。お前には関係ないじゃん。」

ひどく進藤は突っかかってきて僕は大声をあげた。

「納得いかないんだ。」

その時背後から近づいてきた足音に僕は振り返った。

「アキラくん わざわざここまで観戦に来たのか?まめな事だな。」

「緒方さんお疲れ様です。そのよければ今からお時間を頂けませんか」

その時進藤は僕と緒方さんの間を割りいるように入ってきた。

「しょうがねえな。お前が納得出来ないっていうなら教えてやるよ。」

進藤はポケットから鍵を取り出した。

「この鍵 なんだかわかるか?」

僕はその鍵に見覚えがあった。

「先生の部屋の鍵だ。つまりはそういうことだよ。
わかったらつまらない事に首なんか突っ込むな。
じゃあ俺部屋戻るから。」

背をむけた進藤がゆっくりと自室へと向かおうとして
立ち止まる。

「先生 オレ・・・部屋で待ってる。」

振り返りもせず渇いた声がずしりと胸に落ちた。




「アキラくん聞いたとおりだ。進藤はあきらめろ!」

諦める?緒方さんは喧嘩を売るように冷ややかだった。
だがそういったあと肩を落とすようにふっと長いため息をついた。

「・・・と言いたい所だが進藤が本当に待ってるのは俺じゃなくお前だ。
進藤の想いに応える気がないというならあいつは貰う。いい加減な気持ちで
進藤をかき乱すぐらいならしつこく付きまとうな。」

いい加減な気持ちのわけがない。この気持ちに。
そんないい加減な気持ちで彼を好きになるはずがない。

「貴方に進藤を渡すつもりはありませんよ!」

吐く捨てるようにいうと僕は進藤の部屋へと急いだのだった。



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ラスト2話
ミニ天空の破片になってきました。もっとじっくり書いた方がいいよな〜。言葉足らず←これは
以前私が書いていたあとがき。つくづくそう思います(汗)



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