交差 2




大きな逞しい腕が俺を包み込む。

タバコのにおいがしみついたベット。
どこまでも優しく俺を包むように抱きしめる大きな肢体・・・

それは甘くて優しくて時に辛くて・・・だから拒めなかったんだろうか。
乱された呼吸と体がようやく落ち着くころ先生は俺を解放した。



俺はどんな顔をしていいのかわからず、
背を向けて布団に逃げ込むように身体を丸めた。



「気にしているのか。」

それはいつもの先生の声ではなかった。戸惑い、何かに恐れてる声。

先ほどまで見せた余裕も大人に見えた彼の行為も全て消えてしまうほど
その声には自信はなかった。

「緒方先生 何で俺なんか・・・。」

「お前だからだ。ずっと欲しいと思ってた。」

俺は初めてそれが冗談でも遊びでもなかったことに気がついた。

「だが・・こんなやり方でお前を俺のものにしようなんて思ってはなかった。
許してくれ。」

懇願されてぐらりと俺の心が傾く。

今日の俺はどうかしていた。塔矢とのことで精神的にも参っていたんだ。
そう・・・・もうあいつのことなんかっ・・・って
思い出したくもない事を思い出していた。

堪えてるのに涙が零れ落ちる。

緒方先生と俺が立ち去る時、あいつは悔しそうに
唇をかみ締めて睨むように俺を見ていた。


ざまあ見ろと心であいつをののしりながら何処かで引き止めて欲しいと思ってた。

俺は大事なものを自分から手放したんだ。

佐為も塔矢も俺の元へは戻っては来ない。
なくした扇子のように・・・。




身体を身じろぎさせると背後から優しく抱き寄せられて俺は目を閉じた。

「進藤 」

大きな手が俺をもう一度捕らえる。

きっと先生は知っている。
俺の心がここにはないことを・・。

俺と先生はまるで迷子の子猫みてえだ。
お互い手に入らないものを求めてる。

それでも・・・今は・・・俺はすべてを忘れるように先生の背に腕を回した。







二度とここにはこないから・・・と
いう前に先生はここの鍵を無理やりオレに押し付けた。

「俺 こんなの受け取れない。」

突っぱねようとした鍵は堅く握らされていた。

「返さないでくれ。お前の気持ちが俺にない事ぐらいわかってる。
だが、俺の気持ちは否定しないでくれ。」

「緒方先生・・・」


「何かあればここに来い。」

待っているから・・。

言葉にならなかった先生の想いが俺を締め付けた。
オレ・・・先生には,応えられねえのに・・。



握りしめた鍵をオレは行き場のないポケットに
そっとしまった。




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編集中の緋色のぼやき
だあああ〜ひでえ文章だと思いながら読み返してます(汗)
言葉が足りないよ。不自然にならない程度に書き足しましたが。
今書いてるお話も後で読み返すと後悔するんだろな〜;
                         2004年03月30日(再編集 2006年7月




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