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その日、俺は雨の中 塔矢の碁会所に顔をだしていた。
間の悪い事に雨のためか客は北島だけ。
棋譜並べをしながら塔矢を待ちそのうち市河さんが出してくれた
コーヒーも冷めていたことに気づき時計に目を向けた。
ここに来てから40分近くが過ぎていた。
塔矢が待たせるなんてことは初めてのことだった。
その時碁会所に電話が鳴り響いた。
「あら アキラくん。 ええ・・進藤くん待ってるわよ。
そう、やっぱり? 伝えておくわね。」
俺はちらっと受付の方に目を移す。
塔矢の奴これないって言うんじゃないだろうな?
「進藤君 アキラくんもう少し遅れるそうよ。」
市河さんは二人しか客がいないのに意味深に
声色を下げた。
「あいつ何か用事?」
「ん〜そうね〜」
もったいぶるように市河さんははそういったあと
「デートなのよ。」と嬉しそうに笑った。
「デート!?」
あまりに驚いて俺が大きな声で聞き返すと
北島が俺をにらんでいた。
「なんだい 進藤 若先生に彼女が出来たからって
妬いてるのかい?」
「はあ?何で俺が妬くんだよ。」
「お前と違って先生はもてるからな。」
俺は北島の言葉にむっとしていた。
大体俺と違っては余計だ。
「相手は先生の後援会会長のお嬢さんとかって
言ってた人だろう。緒方先生がとても器量がよくて
出来たお嬢さんだと言ってたからな。」
俺は待たされた苛立ちと北島の不愉快な発言で
ぶち切れ寸前だった。
「悪いけど 俺帰る。市河さん荷物・・・」
カウンターへ行くと市河が困った顔をしていた。
「進藤君 もう少し待っていられない。アキラくん
今からここへ来るって言ってわよ。」
俺は無言のまま市河からリュックを受け取ると
北島がまた嫌味を背中越しにぶつけた。
「進藤 若先生を無駄足にさせるつもりなのか?」
「俺は待たせてよくて、あいつはいいって言うのかよ。
気分悪いから俺帰る。」
それだけいうとリュックに手を通そうとして俺は
あることに気がついた。
いつもリュック脇のポケットにはさんでいる扇子がないのだ。
「あれ?」
「どうしたの進藤君」
「扇子がない!」
「扇子 ああ、いつも持ち歩いてる?」
市河が保管していた棚を確認してくれたが
扇子は見つからない。
「まさか電車に落としたんじゃ」
「人ごみの多い地下鉄の中じゃみつかんねえ
だろうな。」
北島の言葉に俺の不機嫌を通り越し怒り
を覚える。
なんでこうも人の気持ちを考えないことばかり
この人はいうのだろう。
「俺 棋院行ってくる。」
落としたとすればそこしか思いつかなかった。
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本当にひどい文だと思いながら編集してます;
でも読んで下さってるお客様がいるので少しでも書き直しながら進めます。緋色(汗) |