ご機嫌ななめのハニー01
『それってどういう意味だよ?』
探していたヒカルの声がくぐもって聞こえる。
アキラは宝物庫の扉を開けようとしてその手をとめた。
『だったらこのオレが手ほどきしてやろうか?うまく出来るように。』
ヒカルの声と一緒に緒方精次(兄)の声?まさか・・・。
『な、放せよ。この変態!!、』
これ以上兄の暴挙を許すことが出来ずアキラは宝物庫の扉を思いっきり開けた。
その瞬間兄精次は思いっきり突き飛ばされ壁にのめりこむように倒れこんできた。ヒカルの所業だ。
まあ会話を盗み聞く限り自業自得なのだろう。。
「どういうことですか?兄さん」
アキラが精次をにらみつけた後、ヒカルに目を移した。 ヒカルは顔を真っ赤にして目を腫らしていた。
「まさか・・・兄さん、ヒカルに・・・。」
アキラが最後まで言う前にヒカルはアキラを押しのけて宝物庫から出て行ってしまった。そのあまりの素早さにアキラは追うことも出来なかった。
それ以上にこの所業がどういうことなのか精次に問いただしたかった。
「あたたた・・・・。」
頭を押さえる精次にアキラは凄んだ。
「どういうことです?ヒカルに何をしたんです!!」
「まだ何もしてない。」
ぬけぬけとそう言った精次をアキラもおもいっきりぶっ
飛ばしたくなった。
「それよりもヒカルを追ったほうがいいんじゃないのか?」
確かにその通りだった。アキラは腸が煮えくり返りそうだったが 踵を返すとヒカルを追った。
30分後、アキラは途方にくれていた。
ヒカルの行きそうな部屋という部屋は当たってみたのだがヒカルは
見つからなかった。
城内は半端なく広い。だだ大抵の場所にはセキュリティーのための
モニターだって付いている。
城外へ出たとも考えられるがあのヒカルが息子の光輝を置いて
いくとも考えられなかった。
アキラは息子の光輝 の部屋に足を運んだ。 ヒカルがいるとすればここが一番怪しいはずなのだが・・・。
「あれ?お父さんどうかしたの?」
突然現れたアキラに光輝は無邪気に笑った。
「あ、うん。お母さんをさがしているんだけど、見てない?」
「お母さんだったら庭の方でさっき見たけど・・・。」
「庭、どこの?」
光輝は中庭を指差した。
「あっちの花園のほうだよ。」
「わかった。ありがとう。」
アキラが立ち去ったのを見て光輝は独り言をつぶやくように言った。
「お母さん、お父さん行ったよ。」
「サンキュな。」
ヒカルはクローゼットの中から出てくると光輝の頭を優しくなでた。
「鬼ごっこならオレもしたかったな。」
「そっか?だったら今からしようか。お父さんと
鬼ごっこをさ。」
きょとんとする光輝をよそにヒカルは荷物をまとめ出す。 そうそうこの城内ではアキラから逃げられるものでもない。 時間稼ぎをして本人があきらめるのを待って逃げるほうがいい。
その頃、当のアキラはというと、今一度精次の元に向かっていた。 精次はアキラを見ると苦笑した。
「どうした?ヒカルに愛想つかれて実家にでも帰られたか?」
「茶化さないでください。兄さんがヒカルに何かしたんでしょう。」
とんでもない。と言うように精次は手のひらを見せておどけた。
「何か勘違いしてるようだが、オレはあいつに何もしてないぜ。」
「だったら先ほどのことをはっきり説明してください。」
精次は深くため息をつくとポケットからタバコを出して火につける。。
「お前の方がよくわかっているんじゃないか?あいつとは夫婦じゃな
いか。それとも毎日ベッドを共にしてもわからない・・っか。」
精次の物言いがつく。嫌味な言い方だ。
「もっとも鈍感のお前じゃ到底ヒカルの悩みなどわからんだろうな?」
アキラはバンっと両手で大きくテーブルを叩いた。
「ヒカルが何か悩んでいると言うのですか?それも僕との関係で?」
こういうことにアキラは勘がいい。
正解だと言わんばかりに精次はタバコをふかすと笑った。
確かに思い当たる節はあったのだ。 けれど精次に相談するほど悩んでいたなんて。
「もう1度探してきます。」
アキラはもう1度邸内をくまなく探して再び光輝の元に訪れていた。
やはり 光輝が1人で遊んでいるだけだったが・・・。
「あれ、まだお母さん見つからないの?」
「ああ、うん、かなり困っているんだけど。」
「ひょっとしてお父さんとお母さん、また喧嘩した?」
アキラはその返事に窮した。
「喧嘩したわけじゃないんだ。ただお母さんを傷つけてしまったかもしれない。」
アキラは しゃがみこむと 愛しい光輝を抱きしめた。
本当にヒカルそっくりだ。だからと言ってヒカルに対する感情のようなものはわかないのだが。
その分自分たちを投影しているようで胸がいたくなることがある。
自分よりも光輝の方がヒカルをよくわかってる気がするのだ。
「お父さんはお母さんに謝りたいんだ。それで
仲直りしたいって思ってる。」
光輝はしばらく考え込むと黙ってクローゼットの方を指差した。 アキラは理解して頷いた。
光輝は小声でアキラの耳に囁いた。
『お母さんには言わないって約束したんだけど・・・。』
アキラが光輝をもう1度を抱きしめるとようやく笑った。
「お父さん、僕明子おばあちゃんのお部屋に言ってくるね。」
あんな子供なのに気を使わせてしまったことにアキラは心を痛めた。
後半へ

本編と明らか作風が違うって突っ込みはなしでお願いします(苦笑)
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