無題

(絆シリーズの番外編です)



もう何年も前にお前の誕生日に俺がプレゼントしたキーホルダー。


深いブルーのラピスラズリの石がついたそれは
吸い込まれそうなほどの青で、
遠征でその石を見かけた時その青がお前のようだと思ったんだ。




二つ揃いで買ってこの部屋のキーをつけて・・・
まさかあの時はこんな日が来るなんて思ってもいなかった。



当たり前のようにお前の部屋に通い、いつものように碁を打ち
そして肌を合わせる。




変わらないようでいていつか変わっていってしまったんだな。
俺たちは・・。






俺はベットから抜け出すと脱ぎ散らかされていた服に手を
かけた。

「進藤 ?」

背後でする声に俺は振り返りもせずに応える。

「俺・・帰るな。」

「まっ・・・。」



俺を呼び止めようとした塔矢が言葉を失くす。
明日の朝までいればきっともっと辛くなる。


だから・・・



「塔矢 俺は・・・招待するなよ。じゃあな、」



幸せになれよ・・・とは言えなかった。
知らず知らずにあふれ出す涙を見られたくなくて


俺は慌てて寝室を抜け出して玄関まで出た所で
追いかけてきて塔矢に捕まえられた。


「進藤・・・」

抱きすくめられて俺は泣き顔を見られたくなくて必死に抑える。

「塔矢放して 俺帰らねえと。」

「嫌だ。・・・かえさない。」

今日のお前は子供のような我侭をいうんだな。 
くるりと反転させられた体に、
俺は隠していた涙をさらされて、お前を受け入れるために目を堅く閉じた。






壁に押し付けられて深く唇が重なる。

今まで数え切れないほどのキスを交わした。
何度も抱きあって来たはずなのに。


こんなにも切なくてこんなにも苦しいキスははじめで、
溢れ出す涙が止まらない。




羽織ったばかりのシャツが塔矢に剥ぎ取られていく。


これ以上求めても辛くなるばかりなのに
それでもお互いに求めてしまうのはなぜだろう。
全ての隙間を埋めるように塔矢が俺の体を支配していく。





俺とお前が選んだ未来は・・・・別々の道を歩く事。





いつか俺とお前の子供が碁盤を挟んで碁を打つのかも知れない。
ライバルになるかもしれない。
ひょっとしたら恋に落ちるかもしれない。




繋がっていく未来に託すんだ。

これで終わりではなくここからはじまるんだ。

だから別々の道を生きよう。

それが俺とお前の出した答えだったはずなのに。





どうしてだろうお前への想いが止まらない。

激しく求めて落とされて・・・





こんな時に気を失った振りなんて俺ずるいな。





「進藤 君を手放したくないんだ。」

塔矢の両手が俺の首にかかる。

小刻みに震える手。



お前にだったらこの命をやってもいい・・・。





だけどお前にはできない。
俺たちの未来に繋げようと言ったのはお前自身だから。



「愛してるんだ君を・・・。」



俺の頬に冷たく、熱い想いが流れ落ちる。





どうか許して欲しい・・・お前の想いに応えられない俺を。







塔矢の寝息が聞こえて俺はそっとベットから抜け出した。

本当はお前も寝てる振りをしているだけなのかもしれないと思う。




俺はそっとラピスラズリのキーホルダーを枕元に置く。
俺の気持ちと一緒に・・・。






ちょっと一服
12月の誕生石ラピスラズリですが別名「天空の破片」と呼ばれています。
私のお話にはよくこのキーホルダー登場します。
無題の涙はオマケ的な小説



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