「何故こんな事になったんだろう。」
バスルームの鏡には自分の肢体に赤く散らばった
所有の証がうつる。
「何故 拒めなかった。」
無理やりじゃなかった。あいつは俺を試そうとしたんだ。
それがわかっていて、なぜ・・・
あいつは俺の明日の対局者で、ライバルで
そして・・・
その先に続く言葉はどこにも見つからない。
降り続くシャワーの雨 どんなに流しても
流れない想いを胸に抱いた。
君は今バスルームで何を思っているのだろう。
泣いているのだろうか、それとも・・・・
君と彼女を見かけたのはほんの偶然だった。
彼女を労わる君の瞳は柔らかだった。
ふくよかな彼女の体は新しい命を宿していた。
『俺たち出来ちゃった婚でさ、』
照れくさそうにそういった君の表情は僕の知らない
君だった。
何もかもが許せなかった。
心は繋がっているのだと思っていた。
それがただの奇麗事だったとしても。
君は僕の明日の対局者でライバルでそして・・・
それ以上にも以下にも見つかる言葉はない。
どんなに流しても消えない涙が心をつたった。
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