絆 1





二人並んで布団に入る。何だか二日続いた癖で
つい気になって起き上がり塔矢の額に手を当てた。


熱はもうない。大丈夫だ。

安堵してその手を離そうとした時、アキラが俺に声を掛けた。



「もう熱はないよ。すっかり気分もいいんだ。」

額に置いてた手を引き寄せられて俺は塔矢が寝ている布団の
上に倒れこんだ。



「塔矢?」

背に手を回されてキスを交わす。角度をかえそれはより長く深くなり
もっと結びつこうとするように激しくなって・・・

塔矢の舌が俺の口内を押し開けて
進入する。熱くてざらっとしたそれはまるで俺の口内全てを飲み干そうと
するように這い回った。



「ああっ!」

漏れてしまった声に俺自身が驚いて塔矢の口からそれを離した。

「こんなキスは嫌だった?」

聞かれて俺はううんと首を振ってみせた。



舌が触れ合った瞬間心臓が壊れそうなほどの音を立てた。
まるで二人が溶けてしまうのではないかと思って。



もっと塔矢とそうしていたい。もっともっと塔矢を感じたい。



二人の間の布団も衣類さえ邪魔だと思う。




「俺もっとお前の近くに行きたい」




「おいで。進藤僕のところに、」



「うん。」



















『俺 昨日剛に負けたんだぜ・・・』

『プライベートでだろう。』

『まあな。だけど公式戦でもそのうちそんな日がくるんだろうなって。』

『随分うれしそうだな。』

『そんな事ないぜ。悔しいさ。だけどあいつには期待しちまうんだよな。
そのうち俺を超えるんじゃないかって。』

『君がそんなに親ばかになるとはね。』

『違いねえ。でもお前もそうだろ。』

『ああ。昌も剛くんには負けないと言ってたよ。』
















『不謹慎だと思っている。
だけど僕はずっとこの時を待っていたんだ。
君の連れがなくなってもう3年になる。そろそろいいだろう。
僕と一緒に暮らさないか?』


『お前には彼女がいるだろう。』


『彼女は僕の事などとうに諦めている。僕は君と残りの人生を・・・・」


『それ以上は言うな!俺はあいつの夫であり剛の親父なんだ。
それは死ぬまでずっとだ。』



『それで君はいいのか?』



『いいんだ。お前への想いは・・・墓場まで持っていく。』
















『塔矢。ごめんな。俺先に逝っちまうけど向こうで
あいつと碁を打ちながらお前の事待っててやるから。』




・・・泣くなよ塔矢。俺お前に泣かれると弱いんだ。』





『進藤もし生まれ変わりと言うものがあって もう1度めぐり合えたら今度は
僕と一緒に生きてくれるか?』



『何言ってるんだ。俺はお前とずっと一緒に生きてきただろう。
こうやって碁盤を挟んで、一緒に悩んで、笑って上を目指してさ。
俺幸せだったぜ。お前に出会えて・・・』



『君はバカだ。』




『ああ。大バカだよ。俺は・・・』










俺とお前の息子が今盤上で勝負している。

孫だって生まれて小さなその手で石を握っている。




繋がっていく未来に託すんだ。

これで終わりではなくここからはじまるんだ。







だけどもし本当に生まれ変わりなんてものがあってお前にまた巡りあえたとしたら、
その時は俺もっと素直になりたい。
 お前と生きるために・・・。


















「塔矢 俺を抱いて・・・」












                                                完

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このお話を書きあげたのが2004年2月。

今でも読み返してくださる方がいるという言葉に励まされて編集しました。
本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。 
                                   2006.3月 堤緋色
        
    
                                             
                  

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