海のみえる山・アポイ岳(2014年7月28日)

7
27日(日)釧路−アポイキャンプ場

 きょうは、移動日である。朝は、ゆっくりと起き、朝シャワーを楽しんでから、ホテルの朝食バイキング会場へ、「朝食サービス付き」にしては、ましなバイキングだった。家族連れを中心に満室だったようで結構込み合っていた。食後のコーヒーもゆっくりと飲んでから、部屋に戻り、出発の用意をした。ほとんどの荷物は単車にくくりつけていたので、簡単な支度だった。きょうもあまり天気がよくなかったが、雨は降っていなかった。

 ホテルの裏に止めていたバイクにまたがり、釧路市内を抜け、襟裳岬をまわって、アポイ岳の麓のキャンプ場をめざす、国道38号線・釧路国道を西に向かう、工場があったり、車も多い、最初の目標は浦幌町にした。太平洋を左手にみながら、海沿いを走る。北海道の景色はいろいろある。太平洋からの風は、きょうはそれほどではない、20年前のこのルートの記憶は、強風に単車をあおられながら襟裳岬をまわったことだった。

 浦幌町の道の駅によった。そこでの国道情報で、土砂崩れのため黄金道路が、襟裳岬の手前で通行止めになっていることがわかった。襟裳岬は諦めて、日高越えの天馬街道で、浦河町に出て、そこから戻ってアポイ岳のある様似町に入ることにした。浦幌町でつくられたソーセージに、十勝ハンバーグがおしそうだったので、夕食の食材を買うことにした。定番になったトマト、きゅうり、それになすを買い、おしそうなフランスパンがあったので買った。夜のキャンプは万全だ。浦幌の町はずれから、通称ナウマン国道336号線に入った。そこには何もなかった。民家も、牧場もない、原野というべきか、車もほとんどすれちがうことがない国道を走った。広尾の町が近づいてきた頃に、だんだんと雲行きが悪くなってきた。路肩に単車を止め、雨具を着た。広尾から日高山脈を越える天馬街道、国道236号線に入った。

 道は、平原から日高山脈をめざした。ゆるやかだが長い長い登り坂が続く、やがて、カーブをきつくなる。雨足も強くなり、厳しい峠越えになった。やっと山脈を貫く長いトンネルに着いた。20キロくらいあるのだろうか。トンネル内は緩い下りの直線だが、走っても走っても出口のあかりすら見えない。長い時間走ったような気がする。ようやく反対側に出られた。雨足は弱くなっていた。ゆるやかな長い下り坂を下っていくと牧場が左右に続く、サラブレットの産地、浦河町に入った。親子のサラブレットの放牧がされていた。その間を鉄の馬の単車で走り抜ける。「天馬街道」とはいい名前である。浦河町に入り、海に突き当たったT字路を、左折し、となり町の様以町をめざす。太平洋をみながらのツーリングに変わった。港町を過ぎ、商店に「つぶ貝弁当」の看板をみつけ、昼ごはん用に買う、おいしそうな茹でタコをみつけてあてに、ビールとワインも購入し、午後2時過ぎに、アポイキャンプ場に到着した。

整備されたきれいなキャンプ場だったが、他にお客はひとりもいなかった。今晩、前線の通過でまた雨が降りそうなので、炊事場にテントを張らしてもらった。ひとり用は、こういう時に便利である。さっそく、たこの刺身に、つぶ貝弁当で昼から宴会である。ワインもおいしい。片付けをして、コーヒーを飲んでから、アポイジオパークのビジターセンターを見学に行った。静かで、誰もいなかった。ジオパークの意味がはじめてわかった。かんらん岩というマントルから出たままかたまった貴重な岩盤が露出していることなどがわかった。「様似」は、歴史的に江戸時代のエゾ支配の要所であり、繁栄していたことなどもわかった。高山植物の宝庫であることは知っていたが、ここにしかない種も多くあるらしい。明日の登山が楽しみになった。そこから歩いて、アポイ山荘にお風呂に入りいった。海のみえる高台にあり、太平洋がみえる、漁をする舟も見えるいい温泉である。サウナも、露天風呂もあり、500円は安い。ゆっくりと温泉を楽しみ、帰りにビールを買い、キャンプ場に戻った。

夕食は、十勝ハンバーグ、昼の残りの蛸をステーキに、ごちそうとなった。ワインもほとんど飲んでしまった。雨が降ってきたが、炊事場の中なので、快適だった。ウミネコがなぜかキャンプ場の芝生に舞い降り、虫をつまんでいる。夕方にはエゾシカが3匹現れ、こちらをしばらく観察していたようだった。カラスがうるさく啼く、キャンプ場の向こうに、うみねこが死んでいるようである、それを何びきかのカラスが交替で肉をついばんでいる。鳥の鳥葬だろうか、自然の輪廻なのだろうか、朝には羽毛だけがちらばっているだけになっていた。

雨足は激しくなってきた。朝には、前線が通過し、晴れることを期待して寝る。

728日(月)アポイ岳登山、小樽港乗船

 前日からの雨が、またしてもやまない、午前4時起床し、5時出発の予定で、朝食を食べたが一向にやむ気配がない、時折強く降る、「雨雲の動き」をみても、寒冷前線が通過しても、日高山脈には雲が引き続きまとわり続けるようであった。6時、7時まで様子をみていたが、百名山でもなく、雨の中を押してまで登る気がしない。目的は、花と「海をみながらの登山」と決めていたので、視界が期待できないならやめようと、昨日の残りのワインを飲んで、朝寝をすることにした。気持ちよく寝ていると、「外が明るい」、テントには日差しがさしこんでいるではないか?あわてて飛び出ると、青空が広がっている。時計をみると午前8時、今からアポイ岳を登ると、夜の小樽の乗船へは、時間的余裕がなくなりそうだった。しかし、見事な青空をみるとやめられない、20分でしたくをして、キャンプ場を後にした。

 昨日からの雨で、地面は濡れていたもの、よく整備された登山道は快適だった。ヒグマに注意の看板とクマよけの大きな鐘が何か所設置されているのが気になっただけだった。公園のように樹木の名のプレートもあり、地元の人がアポイ岳を守り、親しんでいることがわかった。黒い森とその樹間からは青い海が見える。思っていたとおりの山だった。5合目の避難小屋からは、太平洋を眺めることができ、アポイ岳の本峰、襟裳岬までみわたせた。高山植物も、サモイオトギリの黄色い花が見事な群生をみせていた。標高810mの山で、高山植物をみられるのも北海道の山ならではある。馬の背へは急な尾根を登る苦しいところだったが、花や眼下にひろがる海などの景色に助けられて気持ちよく登ることができた。「かんらん岩」も露出しているところでもあり、ジオパークの由来と言えるところだった。馬の背からの展望は、さらに、素晴らしく浦河の牧場を遠くにみられ、様似町、太平洋、襟裳岬までみわたせた。そして、真近くなったアポイ岳、それから北続く稜線がきれいにみられた。そこからはしばらくは岩稜まじりの尾根を歩き、本峰の急な登りとなった。ここは不思議な山で、馬の背あたりは森林限界を超えて樹木がないが、それより高い山頂直下は、灌木が生い茂っているのである。「その理由はわからない」と、昨日、入ったビジターセンターの案内には書いてあった。解説どおり、山頂は展望がなかった。時間も気になったので、すぐに下山した。ただ「幌満お花畑」の名前が気になり、そちらを経由しての下山をした。幌満お花畑は、「以前はヒダカソウの群生で、素晴らしかったらしいが盗掘などによって今はみるかげがない」と解説にあったが、残念ながらそういうところだった。そこで、きのう、道の駅で買ったパンに、ソーセージを入れたお手製サンドを味わった。時間が気になったのでコーヒーはなしにした。そこからはトラバースで、登ってきた道に戻り、急ぎ下山をした。キャンプ場に戻ったのは、12時を過ぎていた。2時に、出発すれば小樽には夕方には着けそうなので、テントや沢シューズを干してから、アポイ山荘に入浴にいった。

 アポイ山荘の湯は、太平洋をながめられる露天風呂もあり、素晴らしいところである、しかも、500円は安い。ゆっくりとできないのが、心残りだったが、汗も流し、リフレッシュし、小樽へとバイクを走らせることにした。

 5時出発できていたら、襟裳岬にも寄ってから、小樽に向かう予定だった。それは無理でも海岸線を走りたかった。「日高耶馬渓」という交通の難所があり、山道、明治、大正、昭和、平成のトンネルが並んでいるところがあるとビジターセンターで知ったので、そこまで見に行くことにした。漁師の家の前に3つのトンネルが並んでいた。手堀りの大正のトンネルを通ることができた。北海道の開拓の歴史を感じることができた。海にも触ってみたいと波打ち際に立つと、急に波がきて、シューズが水びたしになってしまった。午後230分だった。もう観光している時間はない、ひたする小樽港をめざして、単車を飛ばすことにした。

 海岸線をJR線とからみながら、北西へ向かった太平洋は穏やかで風もそれほど強くなく、快適なツーリングだった。様似、浦河、新冠と通過していく、サラブレットが放牧されている間を国道が走っている。やがて、道はやや内陸に入りながらすすむ、富川で10日前に来た道に戻った。ここから行きと同じ道を戻るだけだった。270キロを5時間で走るのはさすがに北海道でも無理だった。快調に飛ばし、休憩も1回だけ、給油1回で頑張ったが、苫小牧を過ぎ、支笏湖では夕闇が迫ってきた。道も間違えるアクシデントもあった。支笏湖が左手にみえるはずが、なぜか右手にあった。同じ国道453号線が支笏湖を回り込み反対側にもあったのだ、これに気がつき引き返す、この間、15分くらいはロスをしたのか、札幌・真駒内への山越えの道では暗くなりはじめ、何か不安な気持ちになる。「フェリー乗船への時間が近い、もう道は間違えらない」、山道を終え、なんとか真駒内を通過、次は小林峠を越えて札幌市西区方面にショートカット、すっかり夜になってしまった。ヘッドライトの明かりをたよりに小林峠を越え、国道9号線をめざしたがちょっと案内ボードにまどわされ市街地を抜けることに、国道に戻ったもののまだ小樽まで20キロのボード、「遠い」、それでも夜の国道を四輪にまぎれながら、飛ばした。やっと小樽港フェリー乗り場に到着したのは午後8時過ぎだった。乗船開始は午後1030分、なんとか、あのすしや「おおとみ」に、もう一度寄れる時間だった。

 しかし、フェリー乗り場にはタクシーはなく、しかたなく歩きはじめた。埠頭を出たあたりで、偶然、タクシーをひろえて、無事、「おおとみ」に座れた。「おおとみ」では、酢の物の盛り合わせを注文した、北の幸、貝・カニなど盛り沢山に入っていておいしかった。生のほっけをから揚げにしてあんかけにした一品も絶品だった。ウニなどの握り、生ビール、冷酒2本で6900円は本当に安い。ここを紹介してくれたライダーハウスだはんこきしゃのオーナーには感謝したい。タクシーで港に戻り、無事、乗船し、爆睡することになった。

729日(火) −舞鶴港−帰阪

 朝から風呂を楽しみ、朝食をすることに、夏休みに入り、オープンデッキでジンギスカンが楽しむことできると書いてあったので、行ってみる。朝10時からということなので、少し待って、朝からジンギスカンを楽しむことにした。1,100円で肉と野菜セットだったがそこそこの量もあり、味もおしかった。何よりも海をみながら、風にあたりながらの生ビールは最高である。焼酎を持ち込み、2時間近くも長居をしてしまった。たいがい呑んだので、客室に帰り、昼寝をすることにした。

 おそめの昼ごはんは、船内で買ったインスタント「塩焼きそば」だった。これも結構いけた。昼からは船首のみえるロビーで、旅の記録を書いたり、読書をしたりして楽しむ。熱湯もあるので、コーヒーも楽しむことができた。舞鶴港には、午後9時の到着である。案内があり、第3甲板に止めたバイクに最後の荷づくりをした。バイクはそれほど多くはなかった。20台もないくらいであった。荷づくりが終わったバイクから整列し、接岸し、桟橋がつながるのを待つ時間が長く感じた。夜の舞鶴の町に、走り出し、国道24号線で京都縦貫道をめざした。暗い国道は疲れるが、あと少しで12日間の旅が終り、家に帰れると思い、バイクを走らせる。途中、コンビニにより、少し休憩したあと、高速を乗り継ぎ、午後11時過ぎに自宅に帰ることができた。

2014年北海道記録

1日目 718日(金)大阪19:50―舞鶴22:50 走行距離124K  《フェリーあかしあ》

2日目 719日(土)舞鶴0:30―フェリー−小樽着20:45 走行距離3K 《ライダーハウスだはんこき舎》

3日目 720日(日)小樽6:00−支笏湖−豊糠11:00 12:00−バス−ゲート12:50−取水施設13:50−幌尻小屋16:23 登山行動3時間30分 走行距離200K 《幌尻小屋》

4日目 721日(月)幌尻小屋4:50−幌尻岳10:23 11:23−幌尻小屋13:23 登山行動6時間33分 《幌尻小屋》

5日目 722日(火)幌尻小屋7:0010:30−ゲート11:00−バス−豊糠12:00−上士幌町健康プラザ−オンネトーキャンプ場17:00 登山行動3時間30分 走行距離255K 《オンネトーキャンプ場》 

6日目 723日(水)オンネトーキャンプ場6:32−雄阿寒岳9:02−オンネトーキャンプ場10:32 11:44−知床:羅臼15:44 登山行動4時間 走行距離172K 《ライダーハウス熊のはいった家》

7日目 724日(木)羅臼6:00−相泊温泉−羅臼8:00 10:00―知床ウトロ:シーカヤックー12:3015:30−ウトロ温泉・夕陽の台の湯−斜里・みどり工房キャンプ場 18:00 シーカヤック3時間 走行距離100K 《斜里・みどり工房キャンプ場》

8日目 7月25日(金)斜里キャンプ場5:30−清岳荘6:48−旧登山道−斜里岳10:05 1035−清岳荘13:03−清里温泉緑清荘−斜里キャンプ場 登山行動6時間15分 走行距離40K 《斜里・みどり工房キャンプ場》

9日目 726日(土)斜里キャンプ場6:00−糖路元村キャンプ場9:30 10:00

釧路湿原カヌー糖路元村キャンプ場15:30−釧路17:00 カヌー川下りツアー5時間 走行距離134K 《釧路・ホテルラッソ釧路》

10日目 727日(日)釧路9:00−アポイキャンプ場14:00−アポイの湯 走行距離216K 《アポイキャンプ場》

11日目 729日(月)キャンプ場8:20−アポイ岳10:35−キャンプ場12:32−アポイの湯−14:32−小樽港20:02−おとみ−小樽乗船23:30 登山行動4時間12分 走行距離276K 《フェリーはまなす》

12日目 730日(火)−舞鶴港21:00−帰阪23:20 走行距離134



 北海道の山旅 その1に戻る

 トップページに戻る


 番外編 石垣・西表の旅へ