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闘神都市のランス

 第02話 〜勇者の紋章を手に入れろ!〜
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 ランスとクミコはコロシアムへと向かっていた。

「さあランスさん、コロシアムに出場申請の登録に行きましょう」

 クミコはランスの手を取りコロシアムの方へと引っ張った。

「めんどうだなぁ」

 そんなランスは抵抗することも無く歩いた。最もその様子はやる気が無さそうで闘神都市の町並みを見ながらがコロシアムの方へと引っ張られる。

(そういや闘神大会に参加するんだから優勝したも同然。であるからもう直ぐ全て俺のものだ)

 ランスは優勝も何もまだ参加すらしていないのに闘神大会については完結していた。最も実際はかなり苦労というか手間がかかることになる。

「何を言ってるんですか、約束してくれたじゃないですか!それに私にあんな事まで・・・」

 クミコは急に恥ずかしくなり最後まで言えず顔を真っ赤にして俯いた。そんな様子を見ながらランスはニヤリと笑った。

(くっくっくっ、からかいがいも結構あるな。それにあっちはなかなか感度の良い、やり甲斐のある女の子だ。これはなかなかシィル並に飽きないぞ)

 クミコとの初エッチを思い出してニヤついた。

「どうしたんですか?」

 クミコは先程からしきりにニヤついているランスに問い掛けた。なんとなくその理由を察しているのか顔が赤い。

「まあな。俺様のことをどう思う?」

 唐突にランスはクミコに問うた。

「鬼・・」

 ボソッと思わずクミコは呟いた。

「ん、聞こえんなぁ。何だって?」

 ランスはクミコの肩を掴んで抱き寄せ耳元に口を寄せフッと息を吹き言った。また抱き寄せると同時にクミコの胸を無造作に掴んだ。

「す、素敵な人と思います」

 経験は浅いのに感度が良すぎるのかそれだけの行為で体が熱くなり戸惑うクミコは何とかこの状況を脱する事ができそうな言葉を口にする。

「そうか、そうか、わっははははは」

 ランスはその言葉に馬鹿笑いしたがクミコの意思に反して胸を弄んだ。

「あう・・」

「くく、どうした。ナイスガイな俺様のそばにいるんで緊張しているのか?」

 自分のしている事にどこ吹く風としらばっくれて意地悪く言った。なんとも素直で初々しい反応がちょっぴり新鮮に感じたのである。

「う・・ん・・ラ、ランスさん。コロシアムにつきましたよ」

 クミコは結局、ランスにいいようにされるのを耐えきった。

「おう、そうだな(ちぇっ、続きは宿屋に帰ってからだ。折角好き放題できるっていうんだから、何十、何百とやらんとな)」

 クミコ本人が聞けば真っ赤か真っ青かどちらにしろ顔色を変えるであろう事をランスは至極当然のように考えていた。そんな事は露知らずなクミコはやっとランスのイタズラというかセクハラ行為から逃れることができホッと一息ついていた。

「ふん、あそこが大会の受付か」

 キョロキョロと見渡して受付らしいものを発見したランスはずかずかとそこに向かった。

「こんにちわ。私は受付のシュリって言います」

 近づいてきたランスに気付いた受付の女の子が挨拶をしてきた。なかなか笑顔の似合うチャーミングな娘だった。

(何となくよく遊んでそうな女の子だな。この子は処女で無いぞ)

 そんな受付の女の子・・シュリをたっぷりと見てまるで根拠の無い結論に至っていた。有る意味偏見と言えなくも無い。

「こんにちわ、何か御用でしょうか?」

 シュリはランスにどう評されているかは知りえなかったのでしごくまっとうに対応した。

「当たり前だ。用があるから来ているんだよ。その位分からんのかバカ」

 ランスは偉そうに胸を張っていった。

「ランスさん、もう少し言い方が・・」

 クミコはランスの言い方を注意しようとしたがそれをランスが受け入れるはずも無く

ポカっ!

「ひん」

 ランスに軽くだが頭を叩かれた。何となくシィルと同じ扱いになってきている。シュリはランスのような手合いに慣れているのか笑顔を崩さずにいた。

「闘神大会に出たい。登録しろ」

 ランスは態度を変えないシュリにぶっきらぼうに自分の用件を伝えた。何故か不快な気がした。シュリのランスに対する対応の仕方からランスと同じ態度でいる者が結構いるということ推察できるのだがランスの場合はそこまで思考せず感覚で捉えたのである。

「はい、それでは[勇者の紋章]を拝見させていただきます」

 シュリはニコニコしながら事務的な言葉を言った。今までに何回も何回も繰り返してきた事だからか自然と口から滑り出す様になっていた。

「?? 何だそれ?」

 ランスはシュリに言われた事の意味がわからず首を傾げた。

「それが無いと大会に出場できませんよ」

 シュリはああ、この人も大会規約ちゃんと呼んでないのねと内心では思ってもおくびにも出さずに言った。

「ちっ、それはどこで手に入るんだ?」

 案の定、シュリの予想通りにランスはリアクションを返していた。そんな事を思っているとランスが知ったなら暴れていただろう。

「[試練の迷宮]の中にあります。ただし、怖いモンスターが沢山出ますよ」

 シュリは既に用意していた説明をランスにするのと同時に[参加の手引き]と書かれた一枚の紙を差し出した。今までランスのような手合いと言うかそれよりももっと野蛮で粗野な男達を相手にしていたので対応も否応なしに慣れてしまっていた。

「雑魚モンスターなど、いくら現れてもブチ殺すだけよ」

 渡された紙に目を通しながらランスは答えた。実際、ランスの実力はそう言っても差し支えないぐらいの領域に到達している。

「[勇者の紋章]が無いと登録する事が出来ませんよ。ルールだから仕方が無いのです」

 シュリもランスを他の参加者とは違うものを感じ取ったものの参加ルールは覆し様も無いのでそう言った。

「ちっ」

 ランスはここで暴れても問題になり参加できなくなるのはまずいと舌打ちした。少なくともやった女の願いであり、一応の冒険者としての依頼みたいなものでもあるので苛立たしく思いながらも抑えた。

「ランスさん・・」

 クミコはランスの様子に不安と心配が織り交じった表情で声をかけた。

「しょうがねえ。行くか」

 クミコの方に振り返り頭をガシガシと掻きながら不安そうなクミコを安心させるように言った。ランス自身はそういう意図で言ったつもりは無いがクミコはそう捉えた。それは端から見ていたシュリにもそう見えたのでランスを不器用な男と評価した。

「[勇者の紋章]をお持ちされるのを楽しみにしていますよ」

 シュリは出て行こうとするランス達に声をかけた。ランスは振り返らずに手を上げてその声に答えて出て行った。ランス達が見えなくなるまでシュリは見ていたがそれも終えると

「あの人、かなりやるわね。チェック、チェック!」

 手元にあった自分のノートに何かを書き始めた。

     *

 ランスはコロシアムの受付から立ち去るとクミコと別れ一路、試練の迷宮へと向かった。

 その際、ちゃんとやってくれるか不安そうにしていたクミコに「不安そうにするな。肌を磨いてお股濡らして待っていろ!がははは」と笑い、それを聞いたクミコが真っ赤になっていたのを見て愛い奴とランスは思いながら別れた。

「はん、[試練の迷宮]ってのはここか・・」

 ランスは[試練の迷宮]の入り口と手にした[参加の手引き]を見比べて呟いた。参加の手引きには参加資格を得ると共に腕を磨くための修行場も兼ねていると書かれていた。

 一階層等は探索し尽くされていて参加資格を得る為の[勇者の紋章]が設置されているが二階層目、三階層目と深い階層になるとごとに未踏の部分が増えるとあった。

 そこで見つけた宝等は全て発見者のものとして良いなどが書かれている。そして最後には探索し尽くされた場所でさえもモンスターが現れるが故に[試練の迷宮]と名付けられたと書かれていた。

「ふん、うまい事考えてやがる・・冒険者は腕を磨くために迷宮に挑み、そこで見つけたものを街に持ち込むから街もまた潤ってゆくか・・」

 ランスは少しの間だけこの街にいたが特に誇れる産業がない事を見抜いていた。この街は闘神大会で落とされる金とこの迷宮からもたらされる富で持って成り立っているのだろう。ランスはともあれ[試練の迷宮]に足を踏み入れた。

「おりゃ!」

ザシュッ!

「あんぎゃーー」

ドシャッ!

 ランスの一息の掛け声と共に振るわれた剣は狙いあたがわず目の前のモンスター「」に致命傷を負わせた。それにより「」は断末魔をあげその巨体を轟音と共に横たわらせ何度か痙攣させて動きを止めた。

「ふん、雑魚モンスターごときは俺様の敵ではないのだ。がははは」

 ランスは倒したモンスターに片足をかけて宣言した。実はランス、余りのモンスターの手応えの無さに辟易しているのだ。だというのに、次から次へと結構な数のモンスターと遭遇しており、いい加減鬱陶しくなっていた。気を晴らそうにも殆ど一撃で片付けてしまう事になるので手応えも無くフラストレーションが徐々に溜まってきており少しでも発散させるべく声に出していた。最もそれも限界に近かった。

 今、片足をかけていたモンスターも通常の冒険者たちであれば単独で倒すにはかなりの腕が要求される。普通ならパーティを組んで倒すような敵だった。それを一撃で叩き伏せるのであるからランスの強さはのっぴきならぬものが有る。

「くそ、ぜんぜん気が晴れん。面倒くさくなって来た」

 そう言いながらもランスは迷宮の探索を続け始めた。実はここでランスは重大な見落としをしていた。と言うのもランスは一撃で倒しているので気付いていないが、ランスを襲ってくるモンスターは何れも、一階層には出てこないはずの強力なモンスターであった。何故、ランスに対して強力なモンスターが襲っているのかは謎である。最もそのモンスターでさえもランスには一蹴されているのでランスが分かったとしても問題にしないのは明白であった。

カサッ

「ん!(なんだ?人の気配がするな・・)」

 ランスは物音が聞こえた方向へ進むとそこには女の子が一人居た。

(!?女の子が居る?)

 ランスはその格好から冒険者の類ではない事が分かり訝しんだ。それはそうだ、何等武器を帯びずに[試練の迷宮]にここまで来る事は不可能に近い。ランスでさえも十回以上はモンスターと遭遇している。不審がらない方がおかしかった。

 ただし、それも直ぐに止めた。理由は女の子が結構かわいかったから。

「こんにちわ、お願いがあるんですけどいいですか?」

 そんなランスに女の子が声を掛けてきた。しかも、何かお願いをしたいらしいとランスはその願いを聞き届けた時の報酬に胸をふくらませた。

「ん、何だ?」

 期待なんぞ表におくびにも出さずにぞんざいにランスは答える。顔はいいのに態度と雰囲気で減殺されている。声を掛けた女の子も少々足が引けた。

「私を買って下さい!がんばってサービスします!!」

 そうとばかりもして居られないと女の子は意を決して自分の目的を告げた。その瞳には並々ならぬ決意の色があった。

 それを見て取ったランスは眉をひそめた。こんな所でそういう事をするのは美人局か?と疑ったのである。まあ、そうであったなら返り討ちにして相応の報いをくれてやるだけかと気を取り直した。

「病気は持ってないだろうな?」

 実の所、ランスは女を買うなどという事は滅多に無い。大体、女に餓える事など無いので買うという発想が無い。それに本人は気付いているのかいないのか独占欲が強い。だから商売女についてはよっぽどのいい女で無い限り食指が動かなかった。

 だが、今回の場合は少し事情が違う。そう鬱憤が溜りに堪っており、それを発散する場を求めていたのである。ランスにとっての鬱憤の解消に一番手っ取り早いのが女を抱く事であった。何事も無ければ未だ馴れていないクミコが相手をする事になって彼女には災難となっていただろう。

 目の前にはいる女の子は今の状態のランスには正にカモネギという表現がぴったりだった。

「当たり前です。大体、私・・彼しか知らないし・・」

 最後の方は尻すぼみに顔を真っ赤にさせながら言っているのを見てランスは演技でも無さそうだし以外に初心であるのが見て取れた。

「・・そうか。彼氏持ちが何でまた・・いや・・で、幾らだ?」

 ランスは詮索するのを止めて自分の鬱憤の解消をするべく交渉をし始めた。払うからには元が取れるだけの楽しむつもりだった。

「彼の欲しがっている新しいゲームは300GOLDするんです。それと同じ額でいいです」

 女の子は自分の希望する額を言った。それは結構な値段では有る。ランスは彼女が稼ごうとする理由を聞いて彼氏は屑だなと思いはしたが口には出さなかった。それと共にある決意した。

「よし、買うぞ。でへへ」

 ランスは少し締まらない顔をしながら答えた。払ったからにはその分以上は楽しむつもりである。ついでに、自分のテクニックで虜にしてやろうと考えてまでいた。外道の彼氏に返す気は毛頭無く財布から300GOLDを取り出し渡した。

「ありがとうございます。それじゃ好きにして下さい」

 ランスからGOLDを受け取ると女の子は大事にしまって言った。ランスはまずは女の子のあごに手をやり自分を見詰めるように見上げさせた。

「名前は?」

「香織・・です」

 幾分、躊躇して女の子は名乗った。ランスはその答えに満足そうに頷いた。もう後はやるだけだ。何を?とは聞くだけ野暮というものだ。

「よし、脱げ!!」

 ランスは意気揚揚として言った。女の子が居た所は丁度、隠れられるような場所になっていてコトの最中に邪魔がそうは入らなさそうで少し安心であった。最もランスの場合は衆人監視のもとでは流石にやろうとする気は起きないがそれ以外のどんな場所だろうがやりたい時にやるので場所を選ばない。

「あんまり乱暴にしないで下さいね」

 ランスの余りの意気込みに香織と名乗った女の子は不安そうにしながら服を脱いでいった。

「そんな気は毛頭無い。かわいい女の子は乱暴するものじゃない。かわいがるもんだ」

 ランスは次々と露わになる香織の体をニヤニヤと見詰めながら言った。香織が服を脱ぎ終わり全裸になると香織の腕を掴んで自分の胸に引き寄せた。

     *

「・・・・」

 香織はランスに嬲られぐったりとしていた。ランスは思い切り楽しみ遊んで満足そうに身形を整えた。すっかり鬱憤は解消されていた。ランスは己のテクニックを駆使し彼女に対して自分を忘れられない男として刻み込んだと確信していた。それだけの反応を示したからだ。

「やっぱり、こういうのは彼氏の為だとかじゃなく楽しんでやるのがいいと思うぞ。聞こえてないかも知らんがな」

 ニヤリと笑い、未だぐったりとしている香織に声をかけてランスはその場を後にした。

 それから結構、迷宮を探索したが目的の[勇者の紋章]はまだ見つけれずにいた。

「ちぇっ、こいつもはずれか」

 ランスはこれまでにもいくつか宝箱を見つけたが大体は空であった。一階層目が探索済みだというのは本当の事なのだろう。中に入っていたものでもせいぜい300GOLDが入っていたぐらいであった。

 なんとか萎える気持ちを抑えてランスは探索を続けているとやたら広い場所に出てきた。

「やけに広いな」

 たいまつの光が届く範囲内に壁は見えず、感覚的にもかなりのものであると感じていた。経験からこういう場所には何も無いかとっても厄介な奴が居るかだろうと警戒しながら探索を行った。

「シィルが居ないから不便だぜ」

 ランスは地図を作成しながら一人ごちた。何だかんだ言っても幾ら面倒くさがりのランスでも単独で迷宮探索をする場合は自分で地図を製作する。[帰り木]が有るから迷っても帰れるとはいえ、次に探索する時に何処が探索が終わっているのか分からなくては話にならないからだ。それに常に[帰り木]が使えるとは限らない。用心をしても足らないのが迷宮探索なのである。

 そうこうして大体、広い場所の端周辺を探索して大体の広さを把握して調べていくと小さな部屋らしいものを見つけた。壁は巧妙に[試練の迷宮]の主だった岩肌と同じものになるように作られよく調べなければ単なる岩と勘違いするようなつくりになっていた。部屋の入り口もそれなりに擬態しているのである程度の技量が無ければ見つからない所だ。幸いにもランスはその辺を心得ていたのか難なく扉を見つけ出した。

「・・多分ここに目的の物が有りそうだな」

 [勇者の紋章]を得るのは一種の篩いだ。一定以上のレベルの者だけが見つけ出せるようになっていると考えると妥当なものだった。扉を調べ、罠等が無い事を確認すると油断無く剣を構えて潜り込んだ。

 そこは薄暗いが光に照らされた小さな部屋だった。その部屋の壁には幾つかのペンダントが飾られており、その横には掲示板が置かれている。掲示板に書かれた内容を見ると壁に飾られているペンダントが大会出場に必要な[勇者の紋章]である事が確認できた。

「(これが大会出場に必要な[勇者の紋章]だな)面倒な事させやがって・・」

 今までの探索を思い返して気分を害したランスはペンダントの一つを乱暴に引きちぎった。手に入れるものを手に入れたランスはもうこの部屋には何も用は無いとさっさと出たのであった。

 何はともあれ無事、大会出場に必要なアイテム[勇者の紋章]を手に入れたランスであった。


 <続く>


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(後書き)

 うう、5000HITオーバーの記念だといいつつ大分遅れてしまいました。内容もやっぱり薄いし・・反省します。

気を取り直して次はいよいよ一回戦です。予定は10000HITオーバー時に

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