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GS美神 リターン?
Report File.0077 「お嬢様危険注意報!! その6」
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「駄目よ〜。お仕事の最中に気を散らしちゃあ〜」
横島は倒れピクピクと感電したかのようにと言うか本当に感電しているのだ。先程、冥子の言葉に大きく取り乱した横島に悪霊が襲い掛かってきたのだ。それをとっさにサンチラが電撃で撃退したのだが運が悪い事に巻き添えを食ってしまったのであった。
「す、すいません(…何か、悪霊の攻撃を食らっていたほうがマシだった気がする…)」
横島の思いは実のところ正しい。令子がいつも扱うような悪霊レベルが1000体というわけではなく、低級霊に毛が生えたようなレベルである。先程の悪霊の攻撃も一般人には死の危険でも一端の霊能者であれば霊的防御力により、対したダメージにはならない。
そんな存在に対して冥子は拳銃でいいところをロケット砲を使ったのであった。
火力は別として冥子の言っていることは正しい。なぜなら、もしこれが単独行動であった場合、如何に雑魚レベルの攻撃でも油断すれば意識を刈り取られることもあるのである。そうなればTHE・END…悪霊にとり殺されることになる。それを生きて体で覚えることが出来たのだから安いともいえるかもしれない。
冥子が意識しているかはわからないが令子の言によるGSとしての厳しさを叩き込むことを実現していた。
「ショウトラちゃん、横島君を治してあげて〜」
冥子の要請を受けて犬っぽい式神が現れた。ショウトラとよばれた式神はのっそりと倒れ伏す横島に近づくとぺろぺろと舐めだした。
「うぉ!? な、何だ!?」
突然のことにびっくりした横島が飛び上がった。
「大丈夫ぅ?」
「あっ、はい。それより、なんなんすか、その犬っぽいのは?」
首輪の変わりに注連縄っぽいものをつけた式神の事をたずねた。横島に指差されたのも気にせずにオンと鳴いて尻尾を振った。犬っぽいというよりまるっきり犬だった。
「この子はショウトラちゃん。心霊治癒ができるのよ」
なんだか、挨拶しないとなという気分になった横島は「はぁ、よろしく」と挨拶するとまあ、まかしとけとばかりにオンと返事を返された。
「さっき言っていたGS試験でもショウトラちゃんは治療役でよく借り出されているの」
「GS試験すか…ほんとーに死人出ちゃうんですか!?」
「まれにだけど〜。よっぽど実力に差がないとそんな事にはならないわ〜。でも、ここ10年ぐらいは技術の進歩もあって死人は出ていないし〜」
「しかしですね」
「大丈夫。私が受けた時なんかは結構、凄い事になったけど〜、重症で病院送りになった人はいても〜霊安室送りになった人は居なかったわ〜。でもその時のGS試験は思い出深いのよね〜。何といっても令子ちゃん、それにエミちゃんていう素敵なお友達が出来たんだもの〜」
「そうっすか…」
横島は回想に浸っているのを見て何を言ってもスルーされそうだとあきらめた。
「ふふ、そういえば〜、令子ちゃんと初めて会った時も、こんな感じでインダラちゃんに乗ってバサラちゃん達と一緒に歩いてたのよね〜。懐かしいわ〜」
懐かしむほどに年月が経っているのかは疑問であるが令子や冥子のときのGS試験が気になった。
「どんな感じだったんですか?」
とりあえず作業を再開しながら質問した。それなりに余裕があるのは予想よりも霊の数が少ないのと弱かった事にある。これは令子が外で結界を張るのに専念していることによる効果が大きい。
「私って何故か、昔から避けられるし、話しかけてくれる人って居ないのよね〜。なぜかしら〜?」
不思議そうに冥子が首をかしげる。冥子一人であれば引く手数多だろう。だが、引き連れているものがものだけに只者ではない事は一般人でもわかる事であり、誰も近寄ろうとは思わないだろう。
また横島はGSというか霊能に感心があるわけでもないので知らないが、同種の人間…霊能者の間では良しにしろ悪しにしろ六道の噂は有名であり、あえて近づこうとはしない。関われば禄にならないというのが衆目の一致する所だったのだ。
だいたい霊能者にしてみれば並みはない式神を単体どころか12体も操る才能に嫉妬せずに入られないだろう。下手すれば自信喪失もありうるのである。とかく霊能者というのは普通の人間には使えない能力を持つという事で優越感を持っていることが多いゆえに。
(何となくわかるけどなぁ…でも、言えんわなぁ…)
冥子は不思議がっているが理由は誰の目から見ても明らかなのだ。当然ながら横島でもわかる。いつもこんな風に式神を侍らしていたら百鬼夜行みたいなものなのだ。だが、冥子の式神たちに対する思いをみると指摘しづらかった。
「でも〜そんな私に初めて声を掛けてくれたのが令子ちゃんなの〜「そこのあんた!!他の人の迷惑でしょ!?式神なんかしまいなさい!!」って。叱られちゃったけど私は嬉しかったわ〜。今までそんな事さえ言ってくれる人が居なかったんだもの〜」
(流石、美神さんやなぁ。普通やったら冥子さんの式神達がうじゃうじゃいたら関わりたくないと思うもんな)
バサラが現れたときに感じた威圧感というか力の大きさに横島が頼もしさを感じた。そういった存在が一体ならそう問題にはしない。だがそれが最大12体を出していたとなれば話は違ってくる。一体で自分を圧倒できそうな存在に周りを囲まれるなど想像したくない状況だ。そんな中で行動したという令子に横島は美神さんはやっぱり偉大だと感心した。
「それだけじゃないの、それからは一次審査も令子ちゃんと一緒で〜それが縁でお友達になったの〜」
「GS試験って一次とか二次とかってあるんですか?」
「そうよ〜。まずは一次審査でGSとしての最低限の能力があるか振り分けるの」
「あのーそれって筆記試験とかもあるんすかね?」
「そういった事は師匠が教育したりする事になっているから〜それは無いわ〜。大体、流派によっては役割分担がされてたりするもの〜」
「流派っすか?」
「ん〜と、今はGSって言っているけど〜昔は退魔師とか陰陽師とか呼ばれていたのよ〜。そう呼ばれる人達は家業として続けてきたから」
「ああ、つまり代々積み重ねてきた技とか秘伝とかを持っているってことか」
霊能は個人によって特殊なものであったりする事が多々あるが、退魔術、陰陽術等はその中でも共通項…つまり霊力を操る事ができるという観点から霊能者であれば誰でも使えるように長い時間をかけて改良したりしてきたものだ。その代表が破魔札であり、吸引札であったりするのだ。
霊能は同じ血筋であれば似たような傾向で発現することが多く、そういった能力を最大限に活かす技を編み出していったのである。それ代々受け継いできた事で生まれたのが何がし流と称されるのだった。
「そうねぇ〜。私なんかも代々、式神を引き継いでいるから、流派のひとつといえるわ〜」
「じゃあ、美神さんは?」
「ん〜、確かそう古くは無いけど〜、代々の家業としてきていると思うわ〜」
「そうなんすか?」
「令子ちゃんのお母様もそうだし、お爺様とかもGSをしていたと聞いたわ〜」
うわ〜俺あんまりやる事無いなぁと周りを見つつ感心した。彼女の使役する式神達は自立行動が高度に出来るのか連携して襲ってくる霊たちをほとんど問答無用で除霊していってのけた。
その様子に横島がやる事などお札を貼るだけとなっていた。
「横道にそれちゃったけど〜横島君なら大丈夫よ〜さっきの除霊の様子を見る限り、十分、一次審査を突破できるだけの力はあると思うわ〜」
「そ、そうっすか? でも、一次審査てどうやるんです」
「単純に霊波を放出させるだけよ。出力が弱いと除霊なんてとてもじゃないけど出来ないもの」
「はあ、なるほど」
それで美神さんはここ最近、霊波の扱いについて講義し始めたのかと納得した。霊波の出力はかなり重要だった。ある程度の出力を得れれば身体を強化したり、霊的防御、物理的防御を高めたり、霊波砲と呼ばれる霊波を収束して放つ遠距離攻撃などといった大概の霊能者に共通の技能とも呼べるものが使えるとGSにとって基礎中の基礎なのである。とはいえその中でも霊波砲などは知られていても余程の出力が出ない限り放つことは出来ない。それが目安となっており、霊波砲を放てるということは一種のステータスを示すものとなっていた。
霊波砲を放てるだけの霊能であればほぼ7、8割方は確実にGS免許を取得できる。で、肝心の横島はというと残念ながら霊波砲を放つことは出来なかった。その為、令子は横島が霊波砲を放てるように出力アップを中心に修行させていた。
霊波の出力は集中力によってかなり左右されるので、如何に集中力を発揮させるかが問題となる。発揮させる方法は個人によって異なってくる。横島の場合、煩悩を刺激…要するに妄想することであるのだがそんなものを除霊中になどするのは隙が大きくなって問題外ともいえる。よって別の方法を模索しているところなのであった。
「でも、基準は実の所、あいまいなのよ〜。その時に集まった人達の霊能のレベルにもよるから〜」
「冥子さんの時はどうだったんです?」
「そうねぇ、基準は高かったんじゃないかしら〜? 私が測定した時は令子ちゃんも一緒だったんだけど〜、令子ちゃん妙に張り切って霊波の出力を出していたから私も頑張って出したの〜。そしたら令子ちゃんも出力を上げてきてね〜」
冥子がその時の様子を思い浮かべていたが、横島もまたその様子は容易に思い浮かべることが出来た。
(美神さん、負けん気が強いから、冥子さんに対抗したんだろうな…)
冥子が複数の式神を使役している時点でずば抜けて霊波の出力が高いことは令子にもわかっていたはずだが、あの上昇志向の塊である令子がそれで大人しくしているはずはなかった。
「シーソーゲームのようで楽しかったわ〜。でも、調子乗りすぎちゃってぇ〜霊波計とか壊れちゃったのよね〜」
てへっ、っと舌を出して冥子は笑った。その笑顔は可愛かったが、そんな感想を横島はとてもではないがもてなかった。
「やっぱり、合格者は…」
「そうなのよね〜。私達の時は何故か合格したのは私と令子ちゃんだけだったわ〜。一緒に受けた人達は途中で棄権しいたの〜。なぜかしら〜?」
やっぱり!と横島は思った。霊波計が壊れるなんて通常ありえないのだ。恐らく霊能者でも居たくないような危険な状態だったであろう。同じ場所に居合わせたのが不運だったということだった。そこの所を全然自覚していない冥子に横島の背に戦慄が走った。
(さすが厄珍に聞いた3凶の魔女の一角、二角だよな。って、あれ? そういえば後の一角は誰だ?)
関われば無事ではすまないが、誰もが振るいつきたくなる美女というのだけは間違いないある!厄珍が強くいっていた事を急に思い出し、残りの一人ってどんな人なんだ?と好奇心を刺激されるのであった。
(つづく)
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注)GS美神 極楽大作戦は漫画家の椎名高志先生の作品です。