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GS美神 リターン?
Report File.0062 「海から来た者 その15」
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「こらっ! カクッ! 何とかしやがれ! お前が原因だろうが!?」
横島はこの事態に陥った原因に詰め寄った。
『だども、オラに言わ…危ない!』
カクに詰め寄られて回答に困り果てたその時、自分達の所にイカ・ミサイルが来るのに気が付きとっさに横島を突き飛ばし自分も退避した。
ドンッ!
「どわっ!?」
ズシャッ!
だがとっさだった故にカクの突き飛ばしは妖怪としてのもので人間では考えられない程強力なものだった。結果、横島は4,5メートルは飛び砂浜に顔面ダイブしてしまい、顔が砂浜に埋まった。
『だ、大丈夫だか!?』
「大丈夫なわけあるかっ!!」
がばっと勢いよく砂浜に埋まってしまった顔を上げると横島は助けてもらった?はずなのに文句をたれた。
『丈夫な奴やな。普通の人間なら病院行きやったなあれは』
イカ・ミサイルの飛来を警戒しながらスケは感心した。
「何やねん。あのはた迷惑な奴は!?」
『いや、まあ所謂ところの宿敵ってやつだべ…多分』
カク自身もズワンの変わり果てた様子にオラのせいなんだべか? という疑問とともに落ち込んだ。
ヒューン
「まったく、なんてはた迷惑な…」
ぶつぶつとつぶやき始める横島、落ち込んで顔をうつむかせたカクはイカ・ミサイルが飛来してきているのを忘れて注意を怠った。
「ちょっ! 横島クン!」”横島さんっ!!”
令子達はイカ・ミサイルが横島の所に向かっているのに気が付き咄嗟に叫んだ。
「へ? うわっ!?」
その声に反応したものの時既に遅し。四つん這いになったままの横島に回避する余裕もなく命中した。令子達はその光景に直前に目を伏せた。
「ぐはっ!?」
「?」”?”
あるべき爆発音がせず、横島のうめき声が聞こえ令子達は横島の方を見た。
「!?」”よ、横島さん!?”
令子達が見た光景はイカ・ミサイルがぷすっと横島の尻にささっているものだった。
「はは…」
これには令子も言葉も出なかった。
『ふむ、不発でよかったな』
スケは腕を組んでそう言い放った。
「アホかーーっ! 何で俺がこんな目に遭わなあかんのじゃ! 俺が…」
スケの言葉に強く反応して叫んだ横島だが自分がどういう目に遭ったか思い出した瞬間、プシューと真っ白に燃え尽き倒れた。
”よ、横島さん!? 確りして下さい! 横島さん!?”
キヌは慌てて白く燃え尽き倒れた横島を介抱した。
『やっぱり、事故とは言っても、よっぽどのショックを受けたんやな…』
『女好きなだけに余計にショックだべ…』
スケとカクは横島に哀れみの目を向けた。
『どうやらイカ・ミサイルも尽きたようだな』
何だかんだと場を乱したイカ・ミサイルだが被害といえば、試合をしていた場所が滅茶苦茶になったのと横島が白く燃え尽きただけだった。
『どういうつもりだ?』
スケは相変わらず籠びくを振り回すズワンを睨みつけた。中に入っている子供たちは気絶しているのか声は聞こえてこなかった。
『ふふん、知れた事よ。奴と決着をつける!』
『こんな事しなくても言ってくれれば幾らでも受けて立っただ! だから子供を離すだっ!』
『ふふん、そらよっ!』
ズワンは無造作に振り回していた籠びくをナミコ達の方へ投げた。
”「「『『『なっ!?』』』」」”
その場で燃え尽きている横島は除いた者は驚きの声をあげた。だが、母は強し! なのかナミコは直ぐに籠びくを受け止めようと動いた。
『フン』
ズワンはその行動に笑い霊波砲をハサミの間から発射した。霊波砲は違いなく籠びくを抱き取ったナミコに向かった。
『危ないだ!』
普通なら間に合わないはずだが、それは愛ゆえの力なのかナミコ&子供たちと霊波砲の間にカクが滑り込んだ。
チュドォーーーンッ!!
強烈な閃光と共に爆発音が聞こえカクの居た場所は土煙を上げ、その周辺を埋め尽くした。
「あ、あなたっ!」
『『『とぉーちゃんーー!』』』
『『『カクッ!』』』
巻き上がった爆煙の為にカクがどうなっているのか見えず、ナミコ達は叫ぶ事しかできなかった。スケ達は隙あらばズワンに飛び掛ろうと考えていたが、ハサミを向けられ下手な行動ができずにいた。
煙が晴れるとボロボロになってカクが倒れていた。ナミコは籠びくを抱えたままカクの元へ走りこんだ。
『ううっ…』
「だ、大丈夫、あなた!?」
『ぐっ、ナミコはオラが守るだ…』
「あ、あなたっ…」
流石にこんな状態では夫婦喧嘩などやっている場合じゃないことも分かっているし、何より身を呈して守る事を実行した夫にナミコはぐっと来るものがあり、涙が込み上げてきた。
「ナミコッ!」
カクもまたぐっと来るものがあるのか目を潤ませていた。カクはがくがくと振るえる手で上半身だけを何とか起こし、ナミコと二人は見詰め合った。
「確かに守ってくださいましたけど、それはそれ、これはこれ!」
『そんなぁ、帰ってきて欲しいだ。お願いだべ〜ナミコ〜』
先ほどまでの雰囲気は何だったのかと問いたくなる程、霧散し言い争いが始まった。
『ママ〜』
『ママ〜』
『ママ〜』
『おと〜』
『おと〜』
その二人を諌めようとするのか、子供達もその争いに加わり始めた。
「何かもう、部外者は立ち入ることなんて出来そうにない雰囲気ね…」
”そうですね…”「そうだな」「そうやな」「………」
令子の言う通り、今回の騒動たる当事者が言い争いというか話し合いを始めた今、自分達の介入は邪魔なだけだった。それに同意する巻き込まれたもの達だった。一部を除いて。
「何だか凄く疲れたわ…帰って寝ようかしら…」
結局、ナミコに振り回されただけになった令子はどっと疲れた。
「おい、手前ら!! 俺を無視すんじゃねえ!!」
先ほどまでとは打って変わって全然相手にされなくなったズワンは叫んだ。それと共に霊波砲も打ち込んだが、怒りの為か直撃することはなかった。
何度も怒鳴り、霊波砲を撃ったがことごとく外れ、その中に至近に打ち込んだものもあった。しかし、それでも全然応えてもらえず、繰り返すうちに段々空しくなったのか、少しずつ怒鳴り声が小さくなっていた。
「……帰るか…」
「まてや…てめえ。これだけの事やっといて無事で変えれるや思うな…」
とぼとぼと帰ろうと黄昏ぎみなズワンを引き止めるものが居た。
「だれだ!」
やっと相手してくれるものが現れたのかとズワンは元気になった。もうこの際誰でもよくなったらしい。が、振り向いた瞬間、ズワンは凍りつき激しく後悔した。振り返った先には涙を浮かべ、バックに暗黒を背負い、ゴゴゴゴゴと妙な迫力を醸し出して睨みつける横島が居た。
「…今まで色んな事や戦いを経験し、酷い目にあってきたが、こんなに屈辱な目にあったのは初めてだ。お前のせいで俺は何か大切なものを失ったっ! しかも、紹介してもらうはずやったねーちゃんのこともご破算じゃっ!! この恨み百万倍にして返してやるぜっ!!」
涙を止め処もなく流しつづけて、横島はそう宣言し、右手に[栄光の手]を発現させた。その輝きは眩しいほどに光り輝き、霊能力が皆無といっていい一般人でも見れそうな程であった。もっとも、一般人は既にこの場から避難したので真偽は確かめれないが。
「くっ!」
ズワンは無意識に後退った。それほどまでに[栄光の手]から感じる霊圧はすごかった。それは、そこらの浮遊霊が触れるまでもなく消滅してしまいそうな程であり、そんなもので切りかかられてはズワンはただではすまないだろう。
「今ならあのメドーサだって[栄光の手]で切れそうだぜ…」
それは小さな呟きであったが、その言葉から今の横島は未来の横島であるらしかった。それほどまでに今さっき横島に遭った事は衝撃的だったのだろう。
幾らズワンが歴戦の勇士であったとしても、魔族と幾度もやりあって生き延び、アシュタロス戦においてはシュミレーターの強化プログラムによるオリジナルよりも、10倍強力に再現された敵を全部ではないがクリアした横島には敵わない。
それを本能的に察したのかズワンは、この場から逃げ出したい衝動に駆られたが、戦士としての最後の誇りがそれを許さなかった。ここで心が折れては二度と立ち上れないと感じたのだ。
「くそっ! こいつは本当に人間なのか!?」
じりじりと[栄光の手]を構えて迫ってくる都度に、高まるプレッシャーにズワンは叫んだ。これ程までのものを相手にしたのは始めてであった。
「おりゃ! 死にさらせーーっ!!」
横島は[栄光の手]をズワンめがけて上段から下段へと振るった。その斬撃にズワンは避ける暇さえも与えてもらえず、右腕を斬り飛ばされた。それだけではなく足も2本ほど斬り飛んだ。女であれば対応も変わっていたのであろうが、今回は相手が男であること、それに理由が理由なだけに横島に容赦はない。
「ぐぉーーっ! 腕が、俺の足が〜〜〜っ!!」
「………」
ズワンの転げまわる様子を見て、横島はこういう暴力的な遣り取りに関して生来のびびり体質が鎌首をもたげ始め、とどめをさす事を戸惑ってしまった。
「ぐぐぉ!」
うめき声をあげ、尚も苦しみつづけているズワンに、逆にやりすぎちまったかもとさえ思い始めていた。そんな風に逡巡している内にズワンはゴロゴロと転がり、がしっとある人物の足にぶつかった。
「そうよ、そうよね…あの時、あんたが邪魔さえしなければ…」
唖然として夫婦喧嘩を見ていた美神令子であったが、ズワンがぶつかった拍子に正気に返り、今の事態になった事を思い出し沸々と怒りがわいてきたのであった。
「私達の勝利だったというのに…ゆ・る・せ・な・い・わ!!」
そのあまりの迫力(先ほどの横島より当社比220%増し)にズワンは痛みがあるのも忘れた。
「ま、まてっ!」
焦るズワンは必死に助かる術を考えた。この時、令子の性格を知っていたならば助かる算段はあったかもしれない。そう、全財産を差し出せば。だが、生憎とズワンには令子の事を全くといっていいほど知らなかったのだ。よって…
「ギャァーーーーッ!!」
ズワンの断末魔の悲鳴が海岸に響き渡った。
「やっぱ、美神さんやな…」
余りの見事なしばきっ振りに、ああ、いつもはあれを俺がくらっているんだな。よく生きて入れるよな…と自分の大概な生命力に感謝した。が…すぐに違った思考に置き換わった。
(くっ、美神さん。何で何時もは、よう露出させているってのに、今回の水着はビキニじゃないんだ!? あんたの持ち味は抜群の色気でしょーが!! ワンピースじゃ、あんまり乳揺れをたんのーできんではないくわぁーーーっ!!」
煩悩丸出し、暴走気味になっていた。後半は口に出して喋っていたのだが、幸いにもズワンをしばくのに夢中になっていたので助かった。もし、怒り狂っていない状態でのしばきをかましていただけならば、即座に横島にしばきの矛先が向いていただろう。
「うっ!? 限界か」
横島は肩ひざをつき、次いで倒れた。
*
「まだまだ続きそうね…もう帰って寝るわ…」
ボロ屑のようにされ転がった物体に片足を乗せ、令子はカク達の話し合いを眺めた。まあ、それがどういう結果になろうと、ホテルでの怪異は解決するであろうし、勝負で約束された報酬は前金の分だけだろうことはわかっていた。
よって、今回の依頼は完了ねと部屋に戻ることにした。
「それがいいっす」
欠伸をしながらホテルへと戻る令子を見送った後、もう一度、カク達の様子をみると、ああ、あんなに頑張ったのに…ただ働きか、と横島はトホホと肩を落とした。
「でしたら、横島さまは参加できますわね」
そんな落ち込んでいる横島に声を掛けてきたものがいた。声からそれが氷雅であることがわかった。と同時に何だか香ばしい匂いがした。
「はっ?」
驚いて振り向くとそこにはイカ・ミサイルであったイカを焼いたり、日干ししている妖岩と氷雅がいた。
「お忘れですの? 宴会」
「ああっ!? そうだった。行きます! 行きますっすよ!!」
あんまりな光景に唖然としていた横島だが、そういえば美女、美少女だらけの忘年会があったと気分を切り替えた。目の前の光景についてはあえてスルーした。
”あのー私もいいですか?”
「別にかまいませんわよ。ささ、行きましょう。お二方」
そう言って氷雅は横島の背を押した。
「えっ? でも妖岩君はいいのか?」
「ええ、妖岩はやることやったら後で来ますから」
「わかった。じゃあ悪いけど妖…」
挨拶して行こうと横島は振り返り、固まった。妖岩が自分よりも大きなカニのはさみを抱えていたからだ。それどうする気だという言葉を横島は飲み込んだ。焼いているイカの事を考えれば明白だったからであった。
「……………」
「……………」
「……………」
「……じゃあ、先行くな?」
横島の言葉に妖岩はコクとうなずいた。
(妖岩、それはお土産だから、忍法瞬間冷凍の術で保存しておくのよ)
氷雅の指示に妖岩は素直にうなずいた。
(見なかった事にするのが精神衛生上いいよな…)
横島は余り深く考えない方がよさそうだと、もう後ろは振り返らなかった。
こうして横島忠夫17歳の夏、前半は終わるのであった。
(つづく)
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注)GS美神 極楽大作戦は漫画家の椎名高志先生の作品です。