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GS美神 リターン?

 Report File.0027 「大パニック!女子校に吹き荒れるセクハラの嵐!! その4」
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「ふーん、なるほど。これでわかったわ。あの霊は死霊ではなく生霊の一種だったのね」

 校長と横島達の会話が落ち着いた所で背後から声がかかった。

「き、君は!?」

「み、美神さん!?」

 二人は令子の登場に驚いた。特に横島はさっき美神に対するやましい事を考えていたので動揺は激しかった。

”もう横島さん、おイタしちゃだめですよ?”

 そんな横島に追い討ちを掛けるように令子から事情を聞いたのかキヌが横島に渡すつもりで神木刀を持って背後に取り憑いて言った。神木刀は霊に対して浄化しようとするので通常、霊には有害なのだがキヌは例外だった。元々が土地神になるはずであった為、神木刀から発する神気には平気であったのと横島が使用している事もあってか横島に括られているキヌには逆に心地よいものを感じるのである。

「う、うわーーーっ!!!」

”きゃっ!”

 背後から声をかけられた横島は驚き声をあげた。キヌもその声に驚いて悲鳴をあげその拍子に神木刀を落としそうになって慌てた。

「お、おキヌちゃん、た、頼むから急に背後から声をかけないでくれ。し、心臓に悪い・・」

 いまだドキドキする胸を押さえて横島は言った。

”ごめんなさい”

 キヌは落としそうになった神木刀を持ち直して素直に謝った。さっきの驚きで一寸した嫉妬心はどこかへいってしまった。

「まあ、校長の先程の話で今回の原因がわかったわ。あのチカン霊は積もり積もった執念が何らかの要素と幾つかの偶然によって霊的に力をつけた『イド(潜在意識)の怪物』だったのよ」

”井戸の怪物?”

 キヌは枯れ井戸から生まれたから井戸の怪物というのかと令子に詳しく聞かずそのまま鵜呑みにした。

「ま、そーとわかれば話は早いわね。除霊するよりもそっちの方が手早いし、復活する恐れもないから」

 令子は解決手段が見つかったと機嫌良さそうに言った。令子の言葉が少し足りない事による説明によりキヌに間違った知識を植えつけたなど気付かなかった。

「復活っすか?」

 横島は除霊しても復活するという言葉に反応した。

「そうよ、相手は潜在意識、想念が生み出したものだから、それを生み出した本人が生きて居る限り必ず力を取り戻すわ」

 令子は人差し指を立てて左右に振りながら説明した。

「話の流れからすると校長っすか?」

 先程の校長の告白により横島はあの霊ができた原因は校長にあると分かったが確認のために聞いた。

”そうなんですか?”

 キヌは流れを掴んでいなかったのでそう言い、

「わしっ!?」

 突然、話を振られた校長は戸惑った。

「そうよ、校長が生きている限りね。あの霊は校長の想念の一部が切り離されたものだから、校長自信が女子高生を見て感じていなくても切り離された想念、つまりチカン霊にその想いが流れる。それが力を与えているのよ」

 横島に満足そうに令子は答えた。

「じゃ、退治しようがないという事っすか」

 横島は話を聞いている限り校長と問題になっているチカン霊とは繋がっているが故に除霊しても根が残っているのでそこから又何れ蘇ると理解した。

「そうね。そういう場合はその霊を封印するかもしくはあるべき所に返すしかない。封印は結構面倒なのよね。ずっと封印できるわけじゃないから定期的に封印を補強してあげないといけないし。あるべき所に返すのが一番楽なのよ」

 令子としてはアフターケアに手間は掛かるが定期的にお金を儲ける事ができる方法も捨てがたいとは思った。ただ封印を補強するのはそうたいしたものではない為、お金もたいして儲け(令子にとって億単位以下はたいした額ではない)にはならない。よって、何度も来るのも面倒くさいと言うことも手伝ってここはきっぱりと元を断ち評判の方を取ることにした。

「あるべきところ?」

 ちらりと向けられる意味ありげな令子の視線に校長は嫌な予感がしつつ聞いた。

「そう、ズバリ校長、あんたの中よ!」

 校長の嫌な予感を令子はズバリと肯定した。

「ちょ、一寸待ってくれ。今更そんなもの戻されても若くもないんだ困るっ!!」

 令子と横島の話を聞いていた校長は令子が戻すといっている情熱が自分が若かりし頃に封印した女子高生への情欲であると知って慌てた。それも当然だろう校長は既に老人の域に達しているのだから。

「悪いけどこれも仕事なのよ・・捻じ曲がった心のひずみよ!さまよえる魂よ!生まれ・・」

 令子は校長の意思など無視して校長とチカン霊を一つにするべく祝詞と思しきものを唱え始めた。

きゃあぁーーーっ!!たすけてーーっ!!だーれかーーっ!!

 が途中で女子高生の甲高い悲鳴にかき消された。

「うぉ!女子高生が例のチカン霊に!!」

 横島が悲鳴のする方向を見ると体育館の屋根の上に女生徒を抱えたチカン霊がいた。女子高生は風が吹く中、スカートがまくれない様に自由になっている手で必死に抑えていた。体育館の屋根はドーム上になっていて足場が悪く下手すれば滑るのだがチカン霊には関係ないことであった。

「ちっ!術を行使すれば女生徒が怪我するわね」

 令子は苦渋の表情で術を中止した。

「な、なんじゃ!?」

 校長にも電柱の上にいるチカン霊を始めて見て動揺した。なんだかんだと言っても事件の元凶たるチカン霊を見たことが無かったのである。

「なんかあのチカン霊、妙に変態チックになってるような・・」

 横島がポソリと言ったのも無理は無かった。チカン霊はセーラ服を着た女子高生を正面から見るとお尻の方が見えるように左脇に抱えている。それだけなら横島も変態とは言わないだろう。チカン霊は頭にパンティをかぶり、ブラジャーのカップの部分を口に当てていた

「あ、あんなのが、わしの情欲・・」

 校長は愕然とした。

「お気の毒様・・あの騒ぎを解決しないと校長に戻せないわね・・」

 あまりの校長の落ち込み様にも令子は冷徹に言った。

「わしはいやじゃ、あんなのを受け入れないといけないなんて!!」

 あくまでもアレを自分に戻すと言う令子の言葉に校長は力いっぱい拒絶の叫びをあげた。

「まあ、気持ちは分かりますけど・・」

チラッっと令子は霊と横島を見比べた。

「確かに・・あれじゃ横島クンレベルよね」

 横島を哀れむような目で見て令子は言った。

「み、美神さん!幾らなんでも俺はあんな事はしないっすよ」

 そんな言い方はないと横島は力いっぱい抗議した。

「本当かしら」

 令子はそんな横島の抗議も不審そうに言った。

「パンティをかぶるなんて事はしません!!」

 あんなチカン霊と一緒にするなと横島は目一杯否定した。

”そうですよ、美神さん。匂いを嗅いでたぐらいですよ。あっ・・”

 キヌは横島を弁護するつもりが余計な事を言ったと慌てて口を押さえたが遅かった。

「ちょ、ちょっとおキヌちゃん!?」

 横島はキヌの余計な一言に身に覚えがありすぎるから焦った。

「それも十分、変態よ!!・・って、私のでやってるんじゃないでしょうね?」

 令子はキヌの言葉に反応して横島に顔をドアップで寄せてプレッシャーをかけた。

「や、やだなあ。そんな事したら、ど、ドウナルカ、ワカッテルカラシマセンヨ」

 非常に怪しい発音で横島は言った。キヌもあまり横島が酷い目に会うのを見たくなかったから発言は控えた。

「・・まあ、いいわ」

 限りなく黒に近い灰色の疑惑に令子はこの場での追及は止めた。今は保留、として、まずは仕事の方の収拾を優先した。何れ横島は厳しく追及され制裁を受けるだろう。

「・・横島クンも同じようなものって言っても校長、立ち直れてないわね・・」

 とりあえず今までのやり取りは横島にとっても薮蛇になったが校長を元気付ける為に行ったものであった。

「校長・・あの時の共感はなんだったんですか?」

 未だ力なく跪く校長に横島は問いかけた。

「聞いたのと実際見るのとでは大きな落差があったって事ね・・」

 令子は立ち直れない校長を見て溜息を吐いた。

「あれ倒したら弱くなりませんかね?」

 横島は別の打開策はないかと提案してみた。

「さあ、実体化する力を失うだけでその想いは変わらないと思うから・・」

 令子は横島の意見については否定的だった。もっともこういったケースは令子も経験した事はなく聞いたことがあるという程度だったので確証はなかった。

”でも、いいんですか?あの霊をあのままほうって置いて?”

 キヌは一向にチカン霊に対処しようとしない二人に聞いた」

「そうだわ」

「いけね」

 二人は慌ててチカン霊がいる電柱の下へ急いだ。

”あっまってくださーい”

 キヌは飛べるのだから直接チカン霊のところへ行けば早いのだがそうせずに二人を追いかけた。

「ああ、わしの女子高生に対する情欲・・」

 後には未だ精神的ダメージから立ち直れないでいる校長だけが残された。

     *

「しっかし、不味いわね。学生が怪我でもしたら依頼料が減ってしまうかもしれないわ」

 令子は不覚!自分とした事がと深く反省しながら現場へと一心不乱に向かっていく。そのスピードは目を見張るものがあったがそれを凌駕する者が居た。横島である。その走りには素晴らしいものがあったがその原動力は妄想である。

「くくっ、俺としたことが・・あのチカン霊がパンティを被りブラジャーを手にしていた。それに加え女子生徒はスカートが風でまくれないように必死に抑えていた事から導き出されるのはその女子高生はノーパン、ノーブラ!!くー、もし、チカン霊から女子高生を取り返すことが出来たら、ドサクサ紛れにちちを布一枚ごしで触れるかもしれん。いや、ひょっとしたら生乳でさえも。それに状況が許せば秘密の花園が見れちゃうかも・・この横島、チャンスは最大に活かす主義なのだーーーっ!正義は我にありーー!」

 と妄想全快に喋りながら現場へ向かった。正義でなく煩悩だろうという突込みがありそうだがそれを行えるような者はいなかった。あえてできる人物がいるとすれば令子だが煩悩全快による横島の移動にはついて行けず後方にいて聞き取れなかった。横島が叫び終わる頃には現場が目の前にまで迫っていた。

     *

”うへへ、うへへ”

 チカン霊は先程のことを学習したのか女子学生を生け捕り邪魔の入らない場所で狼藉を働いていた。

「きゃあっ!止めて!触らないで!いやーーーーっ!」

 女子高生は必死に抵抗するもののチカン霊にはたいして影響は与えていなかった。今はお尻を撫で回されるおぞましさに耐え悲鳴をあげるしかなかった。そして、そんな女子高生の様子を何も出来ず歯噛みし悔しい思いをしている女子高生達が居た。その中でも特に二人悔しがっている者がいた。捕まっている女子高生の親友であり先程のチカン霊が起こした騒ぎで横島に助けられた翔子と朝美である。

「くそっ、あんな所にいちゃ鏡子を助けれない」

 本当に悔しいのか唇をかみ締めた拍子にきったのか血が流れた。キッと女子高生、鏡子を捕まえているチカン霊を睨みつけているがチカン霊はお構い無しに鏡子に狼藉を働いていた。

「でも、翔子さんあの霊には、私達無力ですよ。せめてあの時、助けてくれた人たちがいたら話は別だけど・・」

 そう言って朝美は前半は悔しそうに言ったが後半は何を思い出したのかポッと頬を赤らめた。

「あいつか・・・って、今はそんな状況じゃないわ。何も出来ないからってそのままって言うのは違う!」

 翔子も何かを思い出しポッと頬を赤らめたが今はそんな時ではないと頭をブンブンと振り払って言った。

「でも、もうどうにもならないって時にあの人が現れたんでしたよね・・」

お嬢さーん、今、正義と愛の使者横島忠夫が行きますよーー!!

「そうそう、あんな締まんない声で現れて・・って、えぇっ!?」

 二人が会話している途中で横島の叫びを聞いて驚く中、その件の人物が翔子と朝美の目の前を物凄い勢いで通り過ぎた。それはもう壁にぶち当たらんばかりに。

「「きゃ!」」

 翔子、朝美はぶつかると悲鳴をあげたが横島はぶつかる事はなかった。

「「う、うそっ!?」」

 ぶつかる所か横島は跳躍し普通では無理なはずの体育館の屋根に一飛びで飛び乗ろうとした。実際それは無謀と思われるなんせその高さは結構高く10メートルはゆうに有ったのである。だがその予想に反して横島の跳躍は人では考えられない高さを飛んだ。しかし、もう少しという所で足りなかったあわや落下かと思われた時、横島の両腕が光りそこから伸びた爪がうまく屋根に引っかかり横島は体育館の屋根に登る事が出来た。

「「・・・・」」

 二人は口をポカンとあけ惚けてしまった。

「やっぱり、只者じゃないわね・・流石だわ」

「信じられない。本当に人間!? GSってあんなことが出来るの?すごい!!」

 翔子、朝美はそれぞれに感想を漏らした。横島の行動は一部、間違った認識を植えつけると共に知らずに二人からの好感度をあげていた。


(つづく)

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注)GS美神 極楽大作戦は漫画家の椎名高志先生の作品です。






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