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GS美神 リターン?

 Report File.0022 「初実戦! オフィスビルの悪霊を除霊だ!! その3」
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”美神さん!悪霊がこちらの方に迫ってきます!!”

 見張っていたキヌが警告を発した。

「判ったわ、おキヌちゃん!横島クン、準備はいい。おキヌちゃんは下がって。アイツに攻撃されたらおキヌちゃんもただではすまないわ」

 令子は神通棍を構えて指示を出す。

”はいっ!がんばってください!”

 キヌは二人を励まし後方に下がった。

「ま、待ってください。美神さん!こ、心の準備が・・」

 横島はいよいよとなってオロオロしていた。

「うるさい、ごたごた言うな。さっき、目の保養してたでしょうが」

 令子はそう言いつつ横島と並ぶように下がる。

「げっ!バレてた!?」

 横島は先程の視線の先がばれていた事に動揺した。

”美神さん!!”

 言い争っている令子らにキヌは心配して警告する。悪霊は相変わらず、けけっ、と叫び、時たま壁や天井、床に頭を打ち付けたりしながらではあったが確実に令子らの目の前にまで迫っていた。

「来たわね!!」

 令子は気合を入れて身構えた。

「来た!!」

 横島は少々、腰が引けていたが、本来の彼であればまず逃げ出していたであろうからそれなりに覚悟は決めたようだった。

「ちゃんとやったらご褒美考えてあげてもいいわよ」

「本当っすか!もうぶちゅっとキッスをやってくれたりするわけですか!?それともあんな事か?そんな事か?こうなったらやるしかない!!」

 ご褒美という言葉からどんな事を導き出したのか判らないが俄然やる気を出す横島であった。その証拠にか神木刀に強い霊力が流れているのか刀身が強く輝きだした。

”けけけっ!けーーーーっ!!”

 悪霊は誘蛾灯に引き寄せられる虫のように横島の神木刀の光に引き寄せられた。

「げっ!こっちに来た」

 横島は慌てて神木刀を構えて悪霊を迎え撃つ。

「よしっ!狙い通り!!」

 令子は不穏当な発言をさらりとし、悪霊の背後に移動しようとした。

「狙いって、うぉわっ!!」

 令子の声が耳に入ったのか問いただそうとしたが悪霊が攻撃を仕掛けてきたので慌てて防御する。

「やるじゃない。その調子よ!」

 令子は結構、堂に入って悪霊の攻撃を防ぐ横島に声援を送った。もっとも横島に聞き取れるほどの余裕は無いようで必死に攻撃を防いでいた。

”けけ、けっ!けけっけーーーーっ!!”

「くっ!このっ!うわっ!!た、たんま!それはかんにんや!!死ぬんやーー!もうあかんー!!死ぬ前に一度は隙間なく美女で埋め尽くされたプールにタキシード着て飛び込んでもみくちゃにされたかったーーーっ!!」

 掛け声は情けなかったがそれでも自分はノーダメージでなんとか防ぎきっていた。大したものである。

「!」

 そんなさなか、うまい具合に背後に回った令子は不意に嫌な予感がして飛びのいた。

ガラッ!ゴトンッ!

 天井の一部が令子がさっきまで居た所に落ちてきた。避けれたのは幸いであったが、天井から瓦礫が落ちてきたのは不運としか言いようがなかった。それさえなければ今頃、悪霊に止めを刺すことが出来ていたのだから。

「うわっ!!死ぬならせめて美女の胸の中でーーーっ!!」

 横島が防ぎきれず悪霊の攻撃を受けて思いの丈を叫びながら吹っ飛ばされた。

「横島クン!?」

 吹っ飛ばされて無防備になった横島に止めを刺そうと悪霊が襲いかかるのを見て慌ててネックレスの精霊石を悪霊に向けて投げた。

バシュッ!!!

 精霊石が輝き宿っていた力が解放された。それは強い輝きとなり辺り一帯に広がった。

”けけーーーーーっ!!!!”

 精霊石によってダメージを受けた悪霊は叫びを上げ令子に向かってきた。ただし、頭をボールのように壁や天井、床にバウンドするかのようにぶつけながら。

「くっ!!」

 令子と悪霊との攻防は緒戦と同じ展開になったが、横島は未だダメージが深かったのか立ち上がれずにいた。

”美神さん!!横島さん、早く立って下さい。横島さんっ!”

 キヌは人骨温泉の時、何も出来ない自分に腹を立てた。そして今もそうだった。

「くうう、いてて」

よろよろと何とか神木刀を支えに立ち上がろうとする横島であったが足腰に力が入らず立ち上がれない。

”けけーーー!!けっけっけっ!!”

「も、もう持たない。し、しまった」

 令子は悪霊のパワーに根負けして態勢を崩した。その瞬間を狙って悪霊は攻撃した。

ビリビリビリーーッ!

 令子は咄嗟に身をひねり攻撃をかわそうとしたがかわしきれず、令子の着ていた服が破れ上半身が裸同然になってしまった。

「おおっ!!!」

 令子と悪霊の戦闘を目にしながら立とうとしていた横島は令子の服が破れ乳房が悪霊越しに見えた瞬間、今まで立ち上がれなかったはずが一瞬にして立ち上がった。

”けけーーー!!”

 そんな令子に追い討ちをかけ止めを刺すべく悪霊は攻撃する。

「くっ」

 令子も何とか神通棍を構えなおそうとするが間に合いそうにない。

”えいっ!!”

ポカッ!

 そんな危機を救ったのがキヌだった。はっきり言って攻撃が効いたようには見えないが目的は十分に果たす事が出来た。つまり、令子への攻撃を中止させたのである。が、悪霊の気をキヌが引いた事により今度はキヌが危機に陥った。

「おキヌちゃん!?」

”きゃああーーー!!横島さん!”

 キヌは咄嗟に横島に助けを求めた。その時、

「おっぱい、ばんざーーーーーい!!!!」

 令子の生乳を見て暴走状態に入った横島が神木刀を構えて悪霊にバンザイアタックをかました。神木刀は横島の暴走した霊力を受けてか通常とは違って炎を纏っていた。

ドッバッシュ!!

”けーーーーーーーっ!!”

「えっ!?ちょ、きゃっ!」

 神木刀が悪霊に接触した途端、悪霊は断末魔を上げ消滅した。横島は勢いを殺せず令子のほうへ突っ込んだ。

「ううーん」

 令子は横島のタックルをまともに食らってしまい意識が朦朧としていた。

(・・ああ、なんか、暖かいな、気持ちいいな、ええ匂いや・・それにやわらかい・・・最高や)

 横島もまた意識が少し朦朧として自分が今どんな状態か把握できずにいた。

”ああーーーっ!!よ、横島さん、そ、そんなのいけません!!私というものがありながら・・”

 キヌは横島が令子の胸に顔を埋めているのを見て指差しフルフルと震えた。横島には言ってはいないが括られた瞬間から・・一蓮托生になってからキヌは横島に嫁いだと思っていたのだから、目の前の光景は浮気と見え許せるものではなかった。その反面、何の支障もなく触れ合えるのが羨ましいとも思ったのである。

「つつ、横島クンが突っ込んできてどうなったんだっけ?」

 多少まだ混乱していたものの令子はキヌの叫びを切っ掛けに復帰した。そして、なんだか暖かい人肌を胸に感じた。それは微妙に体を熱くさせる。何だろう? と見てみた。

「ああ、あったけぇ、やわらけぇ、最高じゃー」

 そこには令子の胸をさわりまくっている横島が居た。

「こ・・・この・・・セクハラ野郎がーーーーっ!」

「ギャーーーッ!」

 令子は怒りゲージMAXとばかりに横島をしばき倒した。それはもう完膚なきまでに。ボロボロとなったフロアに哀れな男の断末魔の叫びがむなしく響いた。

”すいません、美神さん。横島さんの暴挙を止める事は出来ませんでした…”

 キヌは落ち込み申し訳無さそうに言った。内心では”横島さん”が”うちのだんな”に置き換わっていたが。

「いいのよ、おキヌちゃん。貴方は良くやったわ」

 そう言って横島が着ていたジャケットを着た令子がキヌの頭を撫でた。

(・・・えがった。滅茶苦茶えがった。生乳や・・俺はまた野望に一歩近づいた。たとえボロボロになったとしても、それだけの価値はあった・・・この手は暫く洗わんぞ・・!!)

 しばき倒されボロ雑巾のようになった横島は血濡れになっている手を握り締めて言った。



<おまけ>

「今回の収支はっと、装備はエレベータに置いてあったのは全て回収できたから損失は0。横島クンに用意した神木刀は1千万……ちょっと奮発しすぎたか…でも、私自身の命を助ける事にもなるだろうからこれぐらい安いか…」

 令子は高額の仕事をやる以上、助けとして横島は戦力として数えている。横島の装備を整えておく事は自然と仕事の成功確立をあげる事に繋がるのであるから先を見越せばこれ位の投資は安いものだと判断した。値段については横島に告げるつもりはない。どうせ聞いたってびっくりするだけだろう。

 思案から抜け出した令子は次の伝票をめくった。

「おキヌちゃんが使う神弓は今回の分で購入っと…弓と矢で1千2百万か…矢は消耗品だし、ランクがあるから依頼にあわせて使うようにしないといけないしそろえておく必要はあるわね…」

 令子は徐にデスクの上にある電話をダイヤルした。

「あっ、厄珍? …そう私、美神令子、この前、発注した神弓だけど………違う違うキャンセルじゃないわ。その逆で矢を各種用意して欲しいのよ………なに時間がかかる? それはあんたの腕の見せ所でしょ? …それは神弓が納品されるときでいいから。…無理?2、3日ぐらい遅れるだけだったら別にいいわよ。…ええ…そんなにするの? ………だったらいいわ、それで……調子いいわね……謀ったらそん時は覚えときなさいよ? ……じゃ」

ガチャ

 令子は額を押さえ思案顔になる。

「……弓と矢フルセットで2千万……あの精霊石が3千万でしょ…神通棍のメンテナンス費用がこれで、交通費がこれっと…それから衣服代…諸経費を足して……っとやっぱ、最初の依頼額でいったら完全に足出ているなぁ……まあ神弓のお代入れなきゃ利益は出ているんだから別に良いと言えばいいのよね…」

 令子は帳簿をつけ終わり伸びをした。

「後は報告書の作成かこれは明日やろ、今日はもう寝よ。それにしても今日は大変だったな。まあ、横島クンが予想以上に役に立つのがわかったし、おキヌちゃんも役に立ちそうなのがわかったからいいか。多少、横島クンについては疑問も生じたけど、まあ、いいか」

 横島の煩悩MAXで起こした神木刀の現象については令子は棚上げする事にした。一回見ただけじゃ何故そうなったのかなんてわかりはしない。それも場数を踏めばおのずと判ってくるだろうと思ったのだ。

「にしても今日の悪霊には腹がたったな。お気に入りの服を破くなんてお陰で横島クンに胸触られる事になったし…」

カァーーーー!

 令子はそれを思い出すと頬が熱くなるのを感じた。

「あいつ…妙に胸を触るのがうまかったわね。どう考えてもあいつに経験なんて無さそうだから素質だとすると…将来とんでもないプレイボーイになるかもしれないわね。まさかね…あの横島クンが? まあどうでもいいわね…ふあぁ…寝よ寝よ」

 しかし、令子のつぶやきはかなりの確率で実現しそうなものであった。ただし、それは横島本人の大いなる努力を必要とするはずなのだが、それは当てにならないかもしれない。現時点でキヌという少女が横島に落とされているのである。第2、第3の犠牲者?がでないとは限らないのだ。


(つづく)

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注)GS美神 極楽大作戦は漫画家の椎名高志先生の作品です。






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