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GS美神 リターン?

 Report File.0012 「可愛い彼女はゆうれい!? その2」
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 一仕事を無事終えた美神達は『美神令子除霊事務所』へと戻ってきていた。令子は早速、仕事で掻いた汗を流すべくシャワールームへと行った。

 横島はチャンスとばかりに令子のシャワーを覗こうとチャレンジする。ここ最近、美神令子除霊事務所で見られる光景である。

「くそっ!通算で14回目だ。そろそろ成功させねば」

 横島は抜き足、差し足でシャワールームへと近づきドアを開けようとする。いささか慎重に行動しているのは台詞からも分かる様に今まで失敗しているからだ。失敗して見つかる都度、冷めた目で見られるがそれ以上の事はない。流石に令子も色気を世間を渡っていく上での武器としているのか高が覗きぐらいではビクともせず騒ぐ事はない。第一ガードが固いので覗けるものなら覗いてみろ、みたいな所があった。それに横島を飼いならすのに色気は有効と見たのか、見れそうで見れないという微妙なコントロールをしている節があった。もっとも、そんな事を横島が知る由も無い。

ごくっ

 自然と横島は生唾を飲み込みシャワールームへと続くドアに手を掛けようとしていた。

ガチャ

ドコッ!!

「ブッ!!」

 その瞬間、手に掛けようとしたドアが不自然なほど勢いよく開かれた。その結果、横島は頭を強打し仰向けに倒れた。

「毎度、毎度、みっともないマネしてんじゃないの!」

 ドアを勢いよく開けたのはご存知通り令子であった。但し格好はバスタオルを一枚、体に巻きつけただけと言う何とも言えない格好であったが。

「(くっ、見えそうで見えん!)ずみ゛ません・・(だが・・いい・・すごくいい。これだからやめれんのだ!)」

 ほとんど同じような事を繰り返す学習能力の無い横島であった。もっとも今の令子の際どさは実の所、ボディコンに身を包んだ時と何ら変わりはなかった。

 まあ、衣服ではなくバスタオルであると言う事が際立たせているのかもしれない。令子はそんな横島をため息を吐いて見た後、着替えるべくドアを閉めた。

(ま、負けん!絶対、成功させちゃるっ!)

 未だ床に倒れながらも決意を新たにする横島であった。

     *

「あーさっぱりした。それにしてもボロもーけの後は気分が良いわね。ほんといい仕事だったわ」

 ご機嫌に笑いながら令子は言った。見るからに顔が緩んでいる。横島はそんな令子の様子をじとめで見ていた。令子はそんな視線も気にせず手に持ったビールを飲んだ。

(しかし、このねぇちゃんもお金が好きやなー。そこまでお金に執着するのはなんでなんや?)

 横島は色々と令子には思う所が有るのだがこの面はあまり好きにはなれなかった。まあ横島も令子の金銭欲を色欲に変えれば同レベルにあるので人の事は言えないのである意味、同類だ。。

「そんなにボロかったんですか?」

 そう言いながらも所長用の椅子にゆったりと座る令子の胸元に視線が行く僅かでも奥を見ようというのか背伸びさえしようという涙ぐましいまでの努力をしていた。というのも令子が着ているTシャツが胸元近くが広く開いているからである。

「相手は大企業よ?あの件で1億ね」

 令子はさらっと言った。

「い、一億っすか!?」

 まさかそれ程の額とは思ってもいなかった横島は驚いた。

「そ、半日で一億なんてほんとボロいでしょ?」

 令子はニコニコとしながら事務机にあった未処理の依頼書に目を通し始めた。

「・・で、俺の給料は10万なんすか・・・」

 横島は自分の給料とえらい違うなー、何か空しいなーとぼやいた。

「まあ、それは仕方ないでしょ。君はまだお試し期間中なんだから・・あっこれ何か良さそーね!」

 そう言ってチラッと横島を見た。

「!」

 横島はその意味ありげな視線に令子を見た。

「人骨温泉ですって! 露天風呂に霊が出て客が激減か・・・ギャラは安いけど温泉でのんびりできそうよ」

 令子の言葉に横島は頭に浮かんでいた内容が一気にピンク色に塗り変わった。

(ろ、露天風呂・・・裸のねーちゃん・・・うまく行けば混浴!)

 横島の頭に現実には起こりにくそうな妄想が浮かんだ。

「ところで給料がどうかしたって?」

 令子は事務机に肘を置き手を組んで横島を見た。

「給料がどうかしましたか?」

 横島も令子を見て先程までの不満なんぞ知らぬといった感じで問い返した。

「じゃ、明日朝から出発だから。遅れるんじゃないわよ?」

「へい」

     *

 大自然に囲まれ清涼な空気を満喫するには格好の場所と聞こえはいいのだが、乗り物なしで目的地へ向かうにはいささかきついものがある。そんな山道を陽光が照らす中、歩く二人がいた。おなじみの令子と横島である。

 例によって令子は手ぶらで横島は通常の荷物の1.5倍はあろうかという重装備を背負い、両手もトランクで塞がっていた。さすがにこれはきつかったらしく横島は息を荒くしながら必死に令子の後を着いて行ってた。

ぜぇーっ!ぜぇーっ!ぜぇーっ!

 横島は流石に何時もよりも荷物が重い上に空気までが薄いため、呼吸困難というか高山病の一歩手前まで行っているのではないかというぐらい消耗していた。

(ぐっ、き、きつい、これは流石に来るものがある今まではこの微妙な傾斜で美神さんの見えなさそうで見えそうなパンティが見える事を期待してここまで来たが力尽きそうだ)

 しかし、横島は何とか自分の煩悩による脳内麻薬によってかは分からないがここまで耐えてきた。

「大丈夫ーー!? 横島クーン」

 最後の語尾を甘い声に乗せて令子は横島に声を掛けた。

「大丈夫っス!!うわははーー」

 その声を聞いて横島は反射的に見栄を張りやせ我慢して言った。

「さ・・酸素ーーっ!!」

 ばたっ!

 だが笑ったのがいけなかったのかそれが止めとなり、横島はめまいを起こして倒れてしまった。そして、追い討ちを掛けるように重い荷物が横島にのしかかった。

「ぐえっ!」

 横島は荷物に押しつぶされてへばった。

「標高高いもんねーー」

 令子はそんな様子の横島を見ても助けようとはしなかった。

「し・・死ぬ・・!!」

 そう言って横島は助けを求めて令子のほうへ手を伸ばした。

「若いんだからがんばって!」

 令子はその為に10万も大金払っているのよと内心付け加えて言った。

(こ、このアマ・・鬼かっ!!・・・って、おおぅ!!)

 この時、横島は倒れ伏したお陰でチラリと見えたのだ。横島は感動に打ち震えた。

「く、黒か…」

 横島は呟いた。幸いにも令子は横島が倒れている間にどんどんと先に進んでいたし、呟きとしてはいささか大きい声であったが距離があったためか聞こえてはいなかった。知れたら折檻は免れまい。

「先に行くわねーっ!」

 令子は横島を置いてどんどん先に歩いた挙句に横島に告げた。ご丁寧にも片手をあげてさよならの合図までつけて。

「・・・あんた、俺の命、へとも思っていないでしょ」

 横島は令子の態度にあきれつつも先ほどの煩悩により噴出した気力で立ち上がった。しかし、直ぐに片膝を突いた。

「うっ、い、いかん!女っ気が無くなってますます意識がモーローと・・・・早く美神さんにおいついて気力を補充せねば・・」

 横島は何とか立ち上がり一歩一歩を気力を振り絞って進み始めた。

ぜぇーーっ!ぜぇーーっ!ぜぇーーっ!

 相変わらず息は荒いままで酷くなる一方だった。このペースでは本人の言った気力を補充する(令子に追いつく)事は無理だろう。それでも、律儀に荷物を運んでいる横島を天晴れというべきなのだろうか。

 そんな横島を山道から少し離れた林の中、見詰める者がいた。

”あの人・・あの人がいいわ・・あの人ならきっと・・ようし・・・”

 横島を見詰めていた者の目が怪しげに光った。見詰めていた者は人というか生者では無かった。霊であった。それもそんじょそこらのように一般人には見えないような存在が希薄なものではなくはっきりと見えるぐらいにまで存在感のある霊だった。その姿は15,6ぐらいの少女であり、何故か巫女服を着ていた。また、霊である為か髪は鮮やかな青色であり、顔立ちはかわいらしかったが今は邪念を持っているのか、本来の可憐さが損なわれおどろおどろしい雰囲気になっていた。

 少女の霊は横島を見て何かを決心したらしく彼の先回りをするべく行動した。

”・・・もうすぐここに来る・・”

 少女の霊は横島が来るのを待ち構えた。近づいてくるにつれ緊張が高まり、あるはずのない心臓の音がドキドキ聞こえてくる気がした。あるいはそれがこの少女の霊が他の霊とは異なる証左であるのかもしれない。

 そうっと覗き込むと少女の霊が待ち望んでいた横島が息を荒げながらも何とか一歩一歩前進してくるのが見えた。横島は殆ど映画に出てくるようなゾンビの如き状態であった。

 そんな様子の横島を確認すると少女の霊は目をくわっと広げて、気合を入れ行動を開始した。

”えいっ!!”

「わっ!?」

 即ち体当たりである。当然ながら殆ど意識が朦朧としていた横島に突然のこれは回避しようが無く、また受け止める事も出来ないほど消耗していたので勢いよく仰向けに倒れこんだ。何気にこの少女の霊は体当たりをかましているが普通の霊には出来ない真似である。

”大丈夫ですかっ!? お怪我はっ!? 私ったらドジで・・・”

 少女の霊は慌てたように横島に言った。

「おい、今「えいっ!」とか言わんかったかっ!? コラッ!!」

 横島は突然の出来事に驚きながらも何とか起き上がろうとした。しかし、重い荷物が邪魔をして足をじたばたと動かすのみだった。その様は重い荷物を甲羅に見立てればひっくり返された亀の如くであった。

 そんな横島の様子を見て少女の霊は横島の腕を掴み助け起こした。

「!!」

 この時、初めてパニックを起こしていた横島が少女の霊を見た。

ズキッ

「くっ!」

 横島は急に頭痛に襲われ頭を抑え込んだ。

”だ、大丈夫ですか!?”

 状況の流れから自分が引き起こした事であり、少女の霊が目的を果たすのであれば気にしなくてもいいのだが根本的に人がいいのか心配そうに声を掛けた。

(うぉ! な、なんだ。この頭が割れそうな程の痛みは・・えっ!)

 そう思った瞬間、さっき一瞬見た少女の姿が脳裏に思い浮かんだ。それは自分がその少女と親しそうに話したり、騒いだりしている光景だった。

おキヌちゃん・・・

 唐突に横島の脳裏に少女の名が浮かぶ。それは自分にとって心が非常に暖かくなるものだった。

 はっとして抑えていた頭を上げた。そこには先ほど自分の脳裏に浮かび上がった少女がいた。ただし、違和感を感じた。何故なら脳裏に浮かんだ少女は目の前にいる少女よりも若干大人びた印象があったからだ。

「お、おキヌちゃん!?」

 横島は確認すべく少女に脳裏に浮かんだ名前を言った。

”えっ!? あの・・・そのぅ・・・確かにあたしはキヌですけど・・・”

 少女の霊は突然、自分の名前を言われて戸惑った。彼女の記憶には目の前の人物の記憶が全然無かったからだ。それにこの目の前の少年の言い方は、かなり親しみの思いが込められていた。

「やっぱり、おキヌちゃんでいいのか?・・あれっ!しかし、なんで俺はおキヌちゃんを知っているんだ!?さっきの俺の中にある記憶は何だ!?・・まさかこれが唐巣神父が言っていた記憶喪失!?・・でもあれは数日の間のものだったはず。ここら辺に来た記憶なんて全然ないぞっ!? どういう事だ!?」

 横島は完全にパニックになった。それも当然なのかもしれない、何せ自分に覚えは無いのにはっきりとした知らない記憶があるのだから。それだけではなく浮かび上がった記憶さえもまだ片鱗でしか無いのだと漠然とながら感じた。それが不安へとつながりパニック状態を助長していた。

”あ、あの・・・もし?・・・だ、大丈夫なんですか!?”

 少女の霊・・キヌも只ならぬ横島の様子に心配して声を掛けた。

「ああ、大丈夫だよ、おキヌちゃん。でも何でこんな所に?学校は行かなくていいのか」

 全然大丈夫じゃなかった・・・横島は記憶が混迷し自分で何を言っているのかすら把握していなかった。


(つづく)

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注)GS美神 極楽大作戦は漫画家の椎名高志先生の作品です。






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