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GS美神 リターン?

 Report File.0009 「初仕事! 洋館に住む悪霊を除霊せよ!! その3」
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「・・・くそ、期待させるだけ、期待させといて・・・なんか美神さんの色気で良い様に扱われているような気がするな。色気をちらつかせれば何でもすると思いやがって・・・その通りだよ、ちくしょうめ」

バリバリ

 横島は不貞腐れ横になってお菓子を食っていた。

「でも、一応ちゃんとGSとしての指導はしてくれているんだよな・・・」

 横島は今までのことを振り返って思い直した。

ボゥ

 その時、気配が発せられ横島がそれに反応してそちらを見ると青白い人魂みたいなものがだんだんと大きくなり薄っすらと人の形をとり始めていた。

「な、なんだ!?」

 悪霊の事があるので警戒する横島。その内にエプロン姿で正座して両手で顔を覆いしくしく、しくしくと泣いている女の姿をとった。

ゾクッ

 ここに来てから何度か感じた悪寒が横島の体を駆け巡った。

”助けて・・・助けてください・・・”

 手で覆っていた顔を上げ女は横島に言った。

「うわわ・・・(そ、そうだ今俺は結界の中に居るんだ。ここから出さえしなければ大丈夫なんだ)」

”聞いてくれます!? 私って可愛そうな幽霊なんですううっ!”

びとっ

 女は泣きながら横島の方へやって来たが丁度、結界の境界辺りでガラスに張り付くようになった。

「ひええっ! お、落ち着け、俺っ! け、結界が効いている」

 横島は少し後退った。少しちびったのは内緒だ。

”私は近所のラーメン屋の店員でした・・・それがある日出前を運んできて・・・ここの主人にラーメンを渡そうとした時に手が滑って・・・それっきりでした。まだまだ人生これからだったのに・・・・”

しくしく、しくしく

女は再び顔を覆った。エプロンには来来軒とあり、確かに横島がここに来る途中で見かけた中華屋がそんな名だった。

「・・・・何や、理不尽な目にあったんやな・・・」

 思わずほろりと横島はもらい泣きしてしまった。

”ところであの女の人やな女ですね”

「な、なんだ?」

 急に先程の嘆きとは打って変わった様子に横島は戸惑った。

”あんな女にアゴで使われて、男として情けなくないですか?”

(なんだ? なんか変だ・・・何が・・・?)

 横島は何か違和感を感じた。確かに令子は自分をこき使ってはいるが、それだってよくよく考えれば、多少行き過ぎてるようにも思うが一応、なぜそうするかと説明もしてくれるのだから、この女に言われるほどではないと感じている。

”で、ものは相談なんですが、私があの女に取り付いてあなたと二人幸せになるというのはどうでしょうか?”

「(あっ!)・・・し、幸せとはどの程度の・・・?」

 そう言って横島は結界の境界の直ぐそばにいる女に近づいていく。

”そりゃーもー絵にも描けないほどの幸せですわっ”

(やっぱりな・・・こいつさっきの悪霊、鬼塚ってオッサンだ・・)

 近づいたお陰で女の顔を見る事ができた。右頬のところに薄っすらとだが横島が踏みつけたときの靴底の後が残っていた。女は横島が自分の正体に気づかれたことに気付かず話を続けていた。

”体はあのムチムチプリンプリンのボディ!! 心は尽くすタイプのこの私!! 出血大サービスをお約束しますわっ!!”

 そう言って女は自分の胸をわっさわっさと揺らした。

「(ド畜生っ!!こいつが・・こいつが鬼塚ってオッサンでなければーーーっ!)・・・確かにそれは良いかもしれない・・・・」

”そうでしょ!! だからとっととそこから出てあの女の結界を崩すのよ!!”

「そうだな、てめえが鬼塚畜三郎でなければっ、なっ!」

ゲシッ!

 横島は前の時の要領と同じようにして女に蹴りを入れた。その蹴りは横島の怒りを反映しているのか輝きが強かった。

”きゃあっ!! な、何をするの?”

「白々しいんだよ。手前が鬼塚ってオッサンなんだって事はばれてんだ。とっととおとなしく成仏しやがれ!!」

ゲシッ! ゲシッ!

 そう言って横島は蹴りを入れる。

「くっ、この純真な俺の心を踏みにじりやがって・・・地獄に落ちろっ!!」

 横島は止めを刺そうとした。が、悪霊がそれをかわし反撃に転じた。

”ちっ、騙せたと思ったのに!!死ねっ!”

「うわっ、しまった」

 あわや、横島に悪霊の攻撃が命中しようとしたとき矢が悪霊に突き刺さった。

バシュッ!!

”う゛あ゛っ!!”

 見事に悪霊の額の部分に突き刺さる。悪霊は悲鳴をあげてその場を去っていった。ただし、矢尻に糸状のものがついている為、それが足跡となっていた。

「ふう、危なかったわね。横島クン。追うわよ!!」

 手にしていたボウガンを置いて悪霊を令子は追いかけ始めた。

「美神さん! さっきのは?」

「あれは特性の霊体ボウガンよ。刺さったら最後、成仏するまで抜けない代物よ。さあ、いよいよ大詰めよ」

「どういうことっすか?」

「あの手の悪霊は強力なものほど何かの妄執に捉われているの。それを取り除けば悪霊は存在場を失って成仏するわ。今回は横島クンのお陰で突き止めるのを早める事ができたわ」

 令子と横島は結構広い屋敷を駆け抜けた。

「こっちね」

 令子は悪霊についている糸を頼りに追跡し上へと続く階段を見つけた。それを二人して駆け上がっていくと途中の壁にへばりついている悪霊を見つけた。

「「!!」」

”う・・・うがああああっ!! あ゛あ゛あ゛っ!!”

 悪霊は令子等をみて声にならない悲鳴をあげた。

「ははーん。その壁の裏にあんたの妄執する何かがあるのね。残念ね・・矢が邪魔で入れないんでしょ! 年貢の納め時よ」

「さっきはよくも騙してくれたな、焼き入れちゃる!!」

「悪霊は人間の弱い部分を狙ってくるからね。でも、よく気付いたわね横島クン。あのまま騙されていたら減給モノよ?」

 令子はニッコリと横島に微笑んだ。

「げ、減給って・・・(本気だ・・この人は本気でやる・・・)」

 横島は令子の目を見て冗談ではないと悟った。これからも何かヘマする毎に減給を言い渡されそうな予感がした。

「さてっと、何があるのかなーっと。楽しみよね」

”あっ! 何にも無いわい。あ、開けるな、開けるなったら開けるな!!開けたらぶっ殺すぞっ!!”

 悪霊は令子が何かを探しているのを見てあせっていた。

「あらっ!スイッチみっけ!」

 令子は意地悪そうに言ってスイッチを押した。

ギ、ギ、ギ、ギギィィーー

 何かの仕掛けが動いたらしく壁が動き隠し部屋が現れた。

”わーーーっ! 見るなーーーっ! やめろーーーっ!”

 悪霊の声がむなしく響く。そんなか令子達は隠し部屋を見渡したそこには本棚がありそこにはずらりとノートが並んでいた。

「何?」

「何すかね?」

 それぞれ手にとって見てみた。

「・・・『鬼塚畜三郎 愛の詩集 第568巻』?」

「『愛・・・それは僕の心をせつなくぬらす朝露の輝き・・・』」

「「・・・」」

 しばし、令子たちの間に沈黙が訪れた。その間も悪霊は呻いていたのが実にシュールである。

「何これ?」

”し、知らん!! わしゃ知らんっ!!”

 どう考えても自分のものだと言うのに白を切ろうと悪霊はしていた。

「知らないわけ無いでしょ! ここに逃げ込もうとしたって事はあんたにとって物凄く大事な所だって事じゃない」

「大体、このノートには自分の名前がしっかり書いているじゃないか。なにしらばくれってんだよ・・・あー何々『夢で出会ったスイートハート、君はいったい誰?』・・うっぷぷ」

 横島は悪霊を追い詰めるべく詩集を読み上げた。余りの悪霊と詩のギャップの差に笑いがこみ上げてくる。

”やめてくれーーーっ! 読まないでくれーーっ!”

「あんた、これを世間に知られるのが恥ずかしくて成仏できなかったわけ? ん?(使える・・使えるわこのネタ・・・)」

”う゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!”

 悪霊は情けなくも滂沱の涙を流した。

「・・・これを世間にばらされたくなければ隠し財産のありか、とっとと吐きなさい。そうすれば武士の情けでこれらは処分しといてあげるわ」

 令子はニッコリと悪霊に笑って脅した。

(み、美神さん・・・あんたは鬼や・・・)

 横島は令子の態度に戦慄した。

”ほ、本当か?”

「本当よ、ただし無ければ公表するわ」

”ぐ、ぐぉーーー、わ、わかった。わかった、隠し財産はある・・・この部屋の突き当たりに隠し金庫が・・番号は・・・”

 悪霊は血の涙を流した。

「ひ、悲惨やなー」

 横島も余りの哀れさに同情した。

「あら、ここね。番号はっと・・・開いた・・・ふーん、結構なもんじゃない」

”ああ、約束は果たした。後生だからこれは・・・”

「わかっているわ。しっかりと処分してあげる。でも、鬼塚・・・あんた、バカだわ!」

 令子は悪霊に彼の遺した詩集を広げて見せニッコリと女神の微笑を見せて本音そのものをズバリと言った。

”ぐわわーーーっ!!・・・・あ・・・あ・・・”

 悪霊はそれまで気力で存在していたのだろうか、令子に心の拠り所であった詩集の事で止めを刺された。悪霊はたちまち存在力を失い消えていった。

「よし、成仏したわね」

「む、むごい!(この女は骨の髄までしゃぶるんか・・・こええ、うちのおかんと同じ位にこええ・・・)」

 横島は令子に恐怖心を植え込まれた。これは令子の弟子に対する教育だったのだろうか・・・

「さて、後は不動産屋に掛け合ってギャラを吊り上げるだけね。楽勝よっ!」

 そう言って令子は伸びをした。

「あのこの詩集はどうするんです?」

 横島は不安そうに令子に言った。

「別に相手は成仏しちゃったからどうでもいいんだけど武士の情けよね」

 令子はそう言ってニッコリと笑みを浮かべた。

「そうですか、はは、はははは(い、嫌な予感)」

「悪いけど処分しといてくれる?」

「そ、そんなー(やっぱりーーっ!)結構量があるんすよ」

「お・ね・が・い」

 そう言って令子は投げキッスを横島にした。

「ぐはっ! くっ、不肖、この横島、やらせていただきます」

「そう、がんばってね。それから今回は強力な悪霊だったから経費が結構掛かると思ったけどそうでもなかったわ。横島クンのおかげね。ありがと」

ちゅっ!

 令子はそう言って横島の右頬にキスをした。

「うぉーーーっ!(美神さんが俺にキスをーーっ!)」

 横島は暴走機関車のように詩集を玄関先に運び出した。そこで焼却処分するつもりであった。はっきり言って体良くこき使われているのだが横島的にはささやかな煩悩を満たすことができたので収支的には+の感覚があったのだ。

「じゃ、お願いね。処分は任せるわ。悪いけど私は休ませて貰うわ、お肌にも悪いし」

 令子は詩集の処分に明け暮れる横島を尻目にもう一眠りする事にした。

(まあ、何にせよ、横島クンもそこそこ使えるとわかったし儲けもかなりのものになりそうだし言う事無いわね今回は)

 令子は伸びをして寝袋のある部屋へと戻っていった。


(つづく)

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注)GS美神 極楽大作戦は漫画家の椎名高志先生の作品です。






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