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GS美神 近くて遠い夢

 Report File.0006 「大逆転シナリオ その6 再計画編5」
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*注意)このお話はオリキャラが主体で既存のキャラは名称でしかでて来ません。
    それがお嫌な方は読まないことをお勧めします。
    また、前作「大逆転シナリオ」シリーズを読まねば話の流れが掴みにくいと思われます。



「次だな・・・」

「ああ・・次に行こう」

 嫌な空気を払拭すべく話題を変えることにしたがその話題こそがこれからの行動における主題でもある。この場にいる者達の誰もがしばし、沈黙した。

「次は美神・・じゃない、学校妖怪の愛子の対策だ」

「学校妖怪?ならあまり気にしなくて良いんじゃないか?」

 アンカー兄がもっともな事を言う。なぜなら学校妖怪は学校という特殊な領域に括られた存在であるからだ。意味通り、学校でしか存在できないのである。

「・・彼女は特別だ。彼女は学校に縛られてはいない。だから自由に動ける。ただし、本体である机を持ち歩かねばならないようだが」

「じゃあ、愛子ってのは学校妖怪じゃ無いんじゃないか?」

「いや、彼女は学校妖怪さ。彼女は学校そのものを内包しているからな」

「ま、まさか!」

「本当かよ?」

「凄い!」

 それぞれがイルの言葉に反応した。イルも彼女の存在を知った時、最初は驚きを禁じえなかった。

「いやどっちかって言うと結果的に学校妖怪と分類されるといえるかな?」

 だが調べていくとそれは戦慄に変わった。

「ふーん、どう言う事だい?」

「訳を知りたいんだな」

「愛子というのは本体が机だ」

 イルは自分が確認するかのように言う。

「そうだな」

「だが、唯の机ではない。彼女は己のうちに学校と言う空間を持っている」

「それは分かっている」

 分かっているが合いの手を入れるアンカー兄。

「そして愛子はそこに生徒を、生物を取り込む事ができる」

「そうなんだ」

「その取り込んだ者達は延々と学校での生活を繰り返し行っていた。しかも、取り込まれたものは皆、意識操作が行われていた節がある」

 洗脳。

 この場に居るものはその言葉が脳裏に浮かんだ。

 ゴクッ。

 誰かが固唾を呑む。心を操ると言うのは魔族においても意外と難しい。通常、操るとなるとまずはその操りたいものに取り憑くのが魔族としては一般的な手段だ。遠隔で意識操作できる者はそうはいない。ましてや複数に対して。幸いこの場にはアンカー兄弟達がいるわけだが、その能力についてよく知るだけにその能力の恐ろしさとその凄さもまた知っている。

 その上、異空間をもっている。異空間をもつものはその空間を支配していると言い換えてもいい。そこに引きずり込む事ができればほぼ無敵といっていい。そこはその保持者にとって最も有利な場所であり、逆に敵対者にとっては最悪なのだ。その空間内では世界そのものが敵になっているから。そして保持者の空間への支配力にもよるが思いのままの現象を引き起こす事ができる。

「魔族においてもそうはいない意識操作ができる能力」

「その上、異空間をもっている」

「カァ、何者だ?」

 少なくとも妖怪でそのような力を持っているものなど、この場にいる者は聞いた事が無い。

「それだけじゃない」

 イルの言葉にその場の者はみな驚愕した。

−−−まだあるというのか。

みなそう思った。

「愛子の異空間に時間は存在しない」

「「「なんだって」」」

 それは驚くべき事だった。通常の異空間であれ時の流れは存在する。それが無いというのは大変な事であった。時の流れが無い空間など数えるほどしかない。それは何れも神族魔族の最高指導者たちの管理下に置かれている。

「確かだ。取り込まれた者達は様々な年代の人間たちだった。証言を何人かの体験者から取ったから確かだ。これに関してはひょっとしたら時間の流れが滅茶苦茶遅いだけという可能性はある・・・」

「そう言わない所を見ると確固たる理由があるんだな?」

「その通り。異空間というのは普通、支配者の思いのままの現象を作り出すことが可能だ。だができない事がある」

「何となくわカァた」

「なるほど、取り込んだ者だな」

「その通り、取り込んだ者自身を直接変えるといった事はできない。そして取り込まれた者達の証言から、ばらつきはあるがその空間でかなりの歳月を過ごしたらしい」

「・・人間は短い間に変化、成長するからな」

「そうだ。取り込まれた者の身近な人物に聞いても何日か行方不明になっていた事はわかっても外見が変わったとかいう話は聞かなかった」

「それだけじゃ確固たる証拠とはいえないぞ?」

「・・・取り込まれた者達は時代もバラバラだった。GS美神達によりその空間から開放される事になった。普通だったら開放された時点で全員が同じ時、同じ場所に出るはずだがそうじゃなかった」

「「「???」」」

「さっき言っただろ?取り込まれた者の身近な人物に聞いても何日か行方不明になっていただけだと。中には行方不明だった事に気付かないほどの誤差しかない者もいたようだ」

「ま、待てよ!!」

「そ、そんな事が可能なのか!」

「可能みたいだな。愛子本人はこともなげに皆を元いた時代の学校に戻したと言ったらしいし。その証拠も取れている」

「タ、タイムゲートの能力まであるのか・・・」

「例え学校に限定されていても、それだけできればもう妖怪の範疇じゃないぞ」

「カァ、同等の能力を持つものがいるとしたら、それは今や消えた古代のカァみしカァいない。、タイムゲートなら時の女神や運命の三女神、空カァんなら世カァい蛇」

 何れも神族、魔族を問わずそれ相応の実力を持った者達である。

「あえて言うなら、学校妖怪ではなく学校神だな」

 アンカー兄が言った。聞けば聞くほど妖怪ではありえないと感じての命名だった。

「学校神か・・そうかもな」

「で、愛子対策どうするんだ?」

「彼女に関しては確かに凄い能力を持っているがその性格などから行動をある程度、制御するのは簡単だ。そして、その手段となるキーワードは」

「青春なんだな」

 アンカー弟が横槍を入れた。

「・・・・その通りだ」

 イルは少しいじけてしまった。

「す、すまないんだな」

 イルのあまりのしょんぼりした姿をみて罪悪感が出たのか謝るアンカー弟であった。

「・・・愛子は基本的に学校を根城にしている。当然だな学校妖怪いや学校神だからな。そしてあの学校で妙に熱血している奴が一人いる。三振球道(みふりたまみち)・・夏の甲子園を目指す球児だ」

「なるほど、昔なつかしのスポ魂モノか・・・」

「そういう事だ。愛子には野球部のマネージャーの役割を振る」

 そう言ってイルは机の上、アンカー兄弟に見えるように台本を置いた。

「キャスト、シナリオは用意してある。後は実行するだけだ」

 そう言ってイルはにやりと笑った。アンカー兄は台本の中身を確認していく。

「確かにこの通り運んでいけば、暫く学校神愛子を学校に釘付けできそうだな」

 台本の中にある合宿要綱を見つめながら言った。

「実行には君たちの力が必要だよろしく頼む」

「分かった。やるさ、任せておけ」

 アンカー兄は力強く返事した。

「次がいよいよ本命といえるんだな」

 アンカー弟が緊張しながら言った。

「その通り。次は横島忠夫と最も近い位置にいる美神事務所の面々だ」

「一番、慎重に事を運ばねばな」

「カァ、小竜姫やワルキューレ等の神族魔族は?」

 カークは一応、話題にあまり出ていなかった自分たちの同族への対策について聞いた。

「基本的に神族、魔族は同族が関わっていない限り動く事は無い。人間界に来る事ですら許可を必要とするからな。そして、我々の動きは察知されていないし、日本で魔族が活動しているという情報はない。どちらかと言うとヨーロッパ方面で大物魔族が活動しているらしいとかの理由でそちらの方に目が向いている。これはかなり信用できる情報だ。心配する必要は無いぞ。まあ、比較的動きやすい立場にいるのが妙神山に括られている小竜姫だがこれに関しては比較的簡単に手を打っておく」

 イルはそんなカークの疑問に答えた。

「カァ、つまり本業をさせる・・修行者を送り込むのカァ」

「まあ、そう言う事だ。神族魔族は人間界においてはこと制約が多いからな、出し抜くのは容易い。それより警戒しなければならないのは人間であるというのは先の戦いで我々が学んだ最大の教訓だと思うが」

「カァ、そのとおり」

「確かにそうなんだな」

「侮っていたから今、俺達はこんな所でこそこそとしなくちゃいけない訳だからな。それよりさっき気になる事を言ったよな?」

「ん?何だ?」

「いや、ヨーロッパ方面で大物魔族が活動していると言っていたじゃないか。上級魔族が人間界で暴れてるとなると神界や魔界じゃ大騒ぎじゃないのか?」

「ああ、問題になっている奴は昔に魔導師だったかに封じられていた奴らしい」

「つまり、最近のデタントの流れとか規制とかを全然知らん奴という事か」

「だろうな、結構、好き勝手な活動をしてるらしいよ。ただ、復活したばかりだから元ほど強い訳じゃないみたいだけどな」

「おいおい、それじゃあ力が回復したら、色々問題が出てくるんじゃないか?」

「まあヨーロッパ方面の一般のGSやオカルトGメンでは手に負えないとなると当然、世界でも有数のGSがいる日本に声が掛かるだろうな」

 当然、トップクラスGSである美神達にもである。

「まあ、そうなる前に魔界軍より説得か捕縛又は討伐するんじゃないかな」

「それにしても、最近、封印されていた魔族達が彼方此方で復活しているようだな」

「多分、アシュタロス様が消えた事によるバランス調整のためじゃないかな」

「ヨーロッパ方面には多くの魔族が昔は活動していたからな」

「それはそうだろ、神界側の最高指導者の活動もそちらで行われたんだ、それを妨害する奴等も集中して当然」

「カァ、ひょっとしたらむカァしの知合いに会えるカァもしれない」

 カークは結構古い魔族なのだ。そうなると知合いも多い。

「まあ、この計画が上手くいかなかった時はそっちでスカウトして体制を整えるか」

「それもいいかもな」


<続く>

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注)GS美神 極楽大作戦は漫画家の椎名高志先生の作品です。






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