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GS美神 近くて遠い夢

 Report File.0004 「大逆転シナリオ その4 再計画編3」
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*注意)このお話はオリキャラが主体で既存のキャラは名称でしかでて来ません。
    それがお嫌な方は読まないことをお勧めします。



「さて、次はドクター・カオスだが」

「ああ、あの”ヨーロッパの魔王”と呼ばれた男か」

「今じゃ見る影も無いんだな」

「確かに。今じゃ喰うのも困って日雇い労働やっているぐらいだからな」

「カァ、だが、油断はできない。元始風水盤の時の事を思い出せ。それにあのヌルも一目置いていた男だ」

「そうだったな」

 魔族達はそれなりにドクター・カオスを評価していた。

「彼、ドクター・カオスは良くも悪くも人間としての倫理観には強く縛られていない。最近はそのなりを潜めてはいるがね」

 彼等は今までのドクター・カオスがやってきた行いを回想した。

「でなければ”ヨーロッパの魔王”とは呼ばれないか」

「今の彼は、生きるため日々の糧を得るのが精々で余裕が無い」

「そうだな」

「そこで、彼には援助をし、我々にとっても有益な研究をしてもらおうと思う」

「つまり、ドクター・カオスを利用するのか」

「大丈夫なのか?ドクター・カオスに我々の意図がばれないかという事もあるが・・」

 アンカー兄が心配そうに言った。

「まあ、何が言いたいかは解るが。その辺はまあ成果が上がればラッキー程度にしか考えていないよ」

「カァ、何を研究させる?」

「対魔族用装備」

 イルは質問されてサラッと答えた。

「おい、それって危険じゃないか!」

「む、無謀なんだな」

「カァ、それはまずい」

 口々に危険な試みだとイル以外の者が言い出した。

「まあ、確かに我々の首を絞めるようなものかもしれない。が、メリットも一応ある」

「それは何だ?」

「一つは、開発元になるからどういう手段によるものか解るからそれなりに我々には対処の仕方がわかること」

「それから?」

「もう一つはそれがそのまま、対神族装備であることだよ」

「そう言う事か」

「なるほど」

「結構忘れがちになる事だが神族だ、魔族だと言ってはいるがその成り立ち上、対極にあるとはいえ根は同じ存在だからな」

「ああ、そうだな。俺達の武鬼は魔族だけじゃなく神族にだって有効だもんな」

「そういうわけだ。ドクター・カオスには研究をしてもらうということで暫くここより離れて山奥にでも篭ってもらおうじゃないか。活動資金と研究ができるなら多少胡散臭くてもドクター・カオスなら食いつく」

「気になるんだがドクター・カオスの助手と言うか所持品のマリアはどうするんだ?」

「マリアについてはさほど気にしていない。確かにその存在は半ばロボットという枠組みを飛び出した存在になってきているとはいえ未だ、機械的な思考から抜け出すことはできないでいるからな。ドクター・カオスの命令が無い限りは助手として側にいるだろう」

「そうか」

「カァ、どうしたのカァ」

「いや、最近の様子を見るとかなり自我があるように思えたんでな」

「・・まあ、気になるなら多少警戒するようにしよう。これがドクター・カオスへの対策だ」

「わかった」

「了解なんだな」

「承知」

「次は西条輝彦だ」

「別に対策は必要ないだろう」

「カァ、横島を嫌っている」

「今までにも横島が酷い目に遭うのを見て喜んでいたぐらいなんだな」

「だな、そう思って私も考えていない。横島に悪いことが起きると感じても無視するだろうからな。関係者で唯一、策を考えなかった」

 何気に魔族達に酷い扱いを受けている西条だった。

「で、次は?」

「魔鈴めぐみだな。彼女は最近、横島の最後の生命線と認識できるような立場にある」

「ああ、給料日近くなると苦しくなる金の遣り繰りでひもじい思いをしていたのを見るに見かねて手を差し伸べたんだったな」

「まあ、そういう意味では花戸小鳩も同じような位置にあるが彼女の場合は横島と同じような理由があるので横島にとって最後に頼れるというものではない」

「氷室キヌは?」

「氷室キヌの場合は不定期に食事や掃除等をしに来るので最後の生命線とは少し違う」

「まあ、なんだな。俺達が言うことじゃないが美神令子は酷いな」

「あの横島を未だに時給255円でこき使っているみたいだからな」

「一応、手当てはついているみたいだ1万5千円・・・」

 魔族達の間に隙間風が吹いた。

「あ、哀れだな。今時のバイトなら最低でも時給5,6百円は有るだろうに」

「何を好き好んでやっているのか、わからんな」

「前にGS見習いとして仕事を任されたことが有ったんじゃないか?」

「結局、利益を出せないとかでうやむやになったんだな」

「そのまま、ずるずると・・・今に至るわけカァ」

 横島のあまりの立場のなさに魔族達も自分の立場を忘れてもらい泣きしてしまいそうになっていた。

「オホン、気を取り直して魔鈴めぐみについては本物の”魔女”の情報を流す」

「へえ、まだ生きているのが居たんだな」

「ああ、彼女は魔女の中の魔女だ」

「魔女狩りで殆ど生き残らなかったと聞くが」

「中途半端な魔女はな。真の魔女ともいえる者達は深い闇にいたから見つからなかったのさ」

「よくそんなの知っていたな」

「彼女とは契約を交わした仲だからな。もっとも彼女はドクター・カオスと同じく不老不死に成功してしまったので魂を取りそこなっているがね」

 そう言ってイルはため息を吐いた。

「なるほど」

「で、その彼女が魔鈴めぐみの存在を知ってね。弟子として欲しいと言ってきたんだ。正に渡りに船だ。私は喜んで協力を申し出た」

「ま、確かに魔女とは我等魔族とも密接に関係のある存在だからな。本物の魔女となるなら歓迎すべき事だ」

「でも、弟子にならなかった時はどうするんだ?」

「その時は決行する時に彼女が経営している店に客をいっぱい入れてそこに釘付けにしておく。それに、一応は魔女だから能力封じの法は良く知っているからそれも施す」

「まあ、そんなものか」

「妥当だ」

「どこまで魔鈴めぐみが魔女になりたいと思っているかがカギなんだな」

 魔族達はこの案について納得した。

「次に六道冥子だ」

「ああ、あのプッツンの六道か」

「あの家系の者は力は強大なのにそれを上手く制御できない者ばかりだからな」

「カァ、昔、酷い目にあったことがある。あんまりカァカァわりたくない」

 そういって、カークは思い出したのか体を震わせた。よっぽど、大変なめに遭ったのだろう。

「気持ちはわかる。・・・私もできればあの家系とは係わりたくない。だが、係わらねば望みを果たせないのだ!」

「か、覚悟を決めるか」

「仕方ないんだな・・」

「・・クッ」

 魔族達は六道という名の者に係わればろくな目に遭わない事が解っているだけに躊躇したがそれでもやるしかなかった。望みを果たすために。

「で、どうするんだ。生半可な事ではアレは俺達の思うようには動かないと思うぞ」

 何気に六道冥子をアレ呼ばわりするアンカー兄。

「当然、それは計画に折込み済みだ。それでも運頼みな面があるがそれは計画の主旨にもあるので仕方ないだろう」

 イルは祈るように言った。

「それは仕方ないんだな」

「カァ、アレではな」

「最悪、プッツンさせれば最低限の目的は達成できる。そして、プッツンさせるのは簡単だからな」

 ある程度、行動は読めなくとも結果は何となく想像できてしまうだけに、この場にいた者の全てがどんな計画であろうとも失敗するであろうと考えていた。

「一応、計画はあるがこれには鬼道政樹も含める」

「鬼道政樹か、当代のアレに係わって人生が変わってしまった輩なんだな」

 それに追い討ちをかけるのかさすがだなと感心するアンカー弟。

「カァ、最近、横島忠夫が鬼道政樹より陰陽術の師事を受けている」

「陰陽術?横島忠夫がか?文珠があれば事足りるのではないか?」

 カークの放った発言にアンカー兄が疑問を述べた。

「確かに文殊であれば陰陽術にできる事は全てできるだろう。それ所かどんな術でも再現できる。だが文珠は大量の霊力を消費する為、効率が非常に悪い」

「で、陰陽術な理由か」

アンカー兄がイルの答えを聞いて納得する。

「陰陽術は色々な系統の術を取り込み系統立てた広く浅いものではあるが、その分色々なことができるからその応用性は多岐にわたる。態々、文珠を使わずともできる事が多くなるし、文珠を使うほど霊力の消費が激しくないと横島忠夫にはぴったりのものだろう」

「前世が陰陽師であった事も関係しているか」

「そうだろうな。特に横島の場合は前世の記憶が浮き出たことがあるから、飲み込みも早いかも知れん・・話しが逸れたな」

「ああ、そうだな」

「で、計画は?」

「六道の遠縁にあたる高島家を利用する」

 イルは自信満面に言った。

「高島?どこかで聞いた名だな」

 アンカー兄はどこかで聞いたなと考え込む。

「アニキ、横島忠夫の前世の名前なんだな」

 珍しくアンカー弟が兄に教えた。

「おお、確かにそうだ。しかし、遠縁なのか」

 アンカー兄は思い出して納得し、アレと横島に縁が少しでもあった事に関心を向けていた。

「カァ、ああいったカァ系は能力保持の為にどこカァで血が交わっていることは良く有る事だ」

「まあその高島家は血筋的には良いんだが昔に先祖の誰かが下手を打ってから廃れていった様でな細々と家業を継いでいたんだが跡を継ぐに相応しいものが何十年か前に殺されたらしくってな」

「ああ、それは覚えがあるんだな。確かその頃、アニキとはぐれて日本まで流れてきて悪さした時にその時の当主が退治しに来たんで殺して喰った覚えがあるんだな」

 あれは自分の中でもベスト3に入るぐらい大変、美味であったとアンカー弟は思い起こしていた。

「そうなのか、まあ、それ以来相応しい後継者が現れず今や死に損ないの爺が一人だけだ」

 イルは意外な事実を聞いて少し驚きながら言った。

「それをどう利用するんだ?」

「高島家は式鬼使いだ」

「式鬼?」

 アンカー兄は聞きなれない言葉に聞き返した。

「陰陽術には使役する術、”式”があるがそれを大別すると式神と式鬼になる。なぜ、そうなるかというとその成り立ちが違うからだ。式神は・・そう俺達のような西洋系魔族に解り易く言うと精霊を基にしてできる。逆に式鬼は妖怪や魔族を基にしてできる」

「なるほど、精霊は力を持ってはいるが自我が希薄な存在だ。それ故に術者が全制御する必要があるわけか」

「そうだ。逆に式鬼は一個の独立していた存在を使役することになるので術者は明確な指示さえ出せばそれだけで済む。基本的には式神よりも式鬼の方が強力でもある」

「じゃあ、なんで式鬼の方が便利なのに今はないんだ?」

「それは術者が使役する式鬼に相応しい力を持っていなければ死ぬからさ。式鬼は最低のものでもかなり強力な力を持っている。当然だな、基になるのが人間とはかけ離れた存在なんだから。それを自由に使おうとするなら当然それに相応しい力を必要とするのさ。昔ならそういった強力な術者が幾らでもいたが今は科学が発展してきた為に術といった素養の有る者でなければ使えないようなのは廃れてしまったのさ」

「ああ、イル持論の科学と魔法は相容れないってやつが適用されるわけか」

「カァ、たしカァに、今は昔に比べれば強力な霊能者がいない分楽だ」

「そうなんだな、西洋の方とかは昔は生きにくかったけど、今は楽なんだな」

 昔はそういえば、道具なんかに頼らずに退治しようとした剛の者が多かったと思い出した一同だった。

「また、逸れてしまったな。で、高島はもう爺がくたばれば断絶になる。それを理由に高島に伝わる法や道具を譲るということでアレ等を呼び出す」

「そこを襲うのか?」

「”譲るのに相応しいかと試しの儀だ”とでも言って高島の爺にな」

「といっても、その高島の爺も術者だろ。そう簡単に操れるのか?」

「その為という訳ではないが何かに使えないかと2年前より高島の爺に対して準備していたのさ。抜かりはない」

 イルもこんな所で活用できるとは準備していた甲斐があったと思った。

「まあ、呼び出せた時点で計画的には成功だから良しとするか」

「でも、上手くいったら逆にアレらの力を付けさせることになるんじゃないか?」

「高島家に伝わる法の多くは人の闇に係わるものが多い。それを使うとなると相当の覚悟が要るんだ」

「闇にかかわれば堕ち易いか・・・」

「そういう事だ。もしそうなれば愉快じゃないか」

「そうだな」

 彼等はあの忌々しい六道が自分達の側に加わったときのことを想像した。

「「「本当に愉快なのか?」」」

「カァ、あんまりカァんがえたくない」

 それぞれが同じ結論に達した。

「・・・ちょ、一寸、休憩しようか?」

「そ、そうだな」

 嫌な考えを払拭すべく、一同はリフレッシュすることにした。


<続く>

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注)GS美神 極楽大作戦は漫画家の椎名高志先生の作品です。






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