2.鉱物の組成分析 |
クロマイト(Chromite)の化学組成
クロマイトはFeCr2O4の化学式(理想式)で示されます。すなわち、2価の酸化鉄(FeO)と3価のクロム酸化物(Cr2O3)の化合物の結晶相です。Fe2+はMg(2+)と置換し、またCr3+はFe3+などと置換して完全固溶体を形成します。
クロマイトの組成は、岩石の形成条件(温度や圧力など)によって変化するので、化学組成を知ることは岩石の形成された条件を明らかにするために非常に重要です。
EPMA分析やSEM-EDX分析では正確な化学組成を知ることが出来ますが、高真空装置内にサンプルを挿入することやサンプル表面の導電処理が必要なために短時間での分析に対しては適していません。
顕微ラマン分光法による測定では、クロマイトのラマン分光のピーク位置が系統的にシフトして、化学組成の僅かな変化を系統的に示すことができることがわかります。 |

クロマイトの顕微ラマン分光のプロファイルの比較 |
右の図は、異なる地域のクロマイトに対してEPMA分析装置を用いて測定した化学組成をCr3+/(Cr3++Al+Fe3+)として縦軸にとり、また顕微ラマン分光によって測定された720cm-1付近のピーク位置を横軸にとって相関関係を見たものです。
クロマイト中のCr3+の含有量がラマン分光プロファイルのピーク位置と非常に良い相関を示すことがわかります。クロマイトの組成はFeCr2O4であり、スピネルはMgAl2O4の組成で示され両者の間には完全固溶体が存在します 。Fe2+-Mgの置換だけでなく、Cr3+-Alの置換がラマン分光のピーク位置を決めていることがわかります。
クロマイトA、B、Cの組成はそれぞれ以下の通りです。
Cr/Al :7.48(A)、1.34(B)、0.95(C)
Mg/R2+:2.03(A)、2.30(B)、3.08(C)
クロマイトのCr含有量が多いとラマン分光のピーク位置が低波数側に連続的にシフトします。ピコタイトと呼ばれる中間組成では、スピネル(MgAl2O4)よりも低波数側にシフトしします。中間組成のクロマイトに対しても以下の組成を示します。
Cr/Al :0.17(No.1)、0.28(No.2)
Mg/R2+:3.38(No.1)、3.11(No.2)
これらの結果から、検量線を作成することによって、ラマン分光のプロファイルから迅速にクロマイトの組成を明らかにすることができることがわかります。 |

クロマイトの化学組成とラマンバンドのピーク位置 |
顕微ラマン分光法によって720cm-1付近のピークを正確に測定します。クロマイトのピーク位置には、シリコン(Si)のピーク位置で校正された値を使います。いっぽう、化学組成はEPMAを用いて2価と3価(例えばFe2+とFe3+)を化学量論的に計算して求めた化学式に基づいて決めます。
それらの得られた値をそれぞれ横軸と縦軸にとって、産地(組成)が異なるクロマイトのピーク位置と組成の相関関係をグラフに示します。 |
顕微ラマン分光の正確な測定につきましては「ガラス分析技術ラボラトリー」にお問い合わせください。また、EPMA組成分析についてもお問い合わせください。外部(自治体などの工業技術研究所)で測定しますが、得られたデータの正確な解析は「ガラス分析技術ラボラトリー」で行います。
是非、一度、弊社にお問い合わせください。
弊社は「地球年代学ネットワーク」の正規会員となっております。地質、岩石および鉱物の研究や調査においても顕微ラマン分光法が活用できることがわかっております。是非、一度ご相談ください。 |