「今が旬」 NTR NEWS No.15 | ||
「旬」という言葉は、私にとっては背筋が伸びて引き締まる感じを受ける。魚に例えるならば、脂の乗り切った歯ごたえと甘みのある生き造りのような感じであろう。 私たちの日常生活では当然のこととしてあまり意識していないと思うが、消費者が「旬」を感じ、また生産者が「旬」を提供することは、消費者のニーズや生産者の日々の努力だけでなく、「旬」を届けたいというプロ意識や仕事に対する拘りや、さらにやる気に支えられているのではないかと思う。例えば、冬季限定の関東の「アンコウ鍋」や関西の「フグちり」は、厳冬期に荒波をかいくぐって出漁した釣果が花開いた結果である。生活面での漁もあるかと思うが、漁師の「獲るぞ!」というプロ意識無しに「旬」は私たちの食卓に来ないと思う。 現在では、多くの食品が養殖や温室栽培に代表されるように、昔からの「旬」の時期を逸脱して食卓に出されることが多い。例えば、クリスマスケーキのイチゴなどがいい例であろう。しかし、そのような便利さの中でも、私たちはやはり初春の「露地栽培のイチゴ」を欲し、ある者はイチゴ狩りに行き舌づつみを打つ。秋の果物も同様であり、低温保存したリンゴよりも酸味があってもその場でもぎ取ったリンゴの方が新鮮さや栄養面と美味しさでは優れている。 このように、「旬」は昔から私たちに栄養と幸福感を与え、また来年も食べようといった目標すらも与えてきたと思う。 ここで、「今が旬」という言葉を我々の仕事に比較して当てはめてみよう。それは、「タイムリーにお客様に対応できた」と言うことではないだろうか。仕事では、春や冬のような季節感はあまり無いように感じるが、その都度「旬」があると感じている。「旬」を逃すと、美味しさも、栄養も、また食べようとする気持ちも薄れてくると思う。如何にして、荒波をかいくぐるプロの漁師になれるかが重要なポイントである。 そのためには、熟練者によるプロの育成も大切であるし、荒波に負けない船も必要だ。また、顧客とのやりとり(例えば魚信や生育状況の観察)も重要な項目である。そしてさらに大切なことは、「旬を食べていただきたく」というプロの意識を持つことである。 試験分析の仕事を通して、如何にしてお客様に喜ばれ、次の仕事につながるかもっと考えていかねばならない。「今が旬」をお届けする分析会社を目指して、プロの育成と革新的な組織と風土作りをしていきたいと思う。 2021年7月28日
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