「状態図を読む」 | |||
状態図を読む 第1回目:状態図元年 「状態図」とか「相図」、あるいは「状態平衡図」は”Phase Diagram”と言われますが、皆さんはどれだけ理解していますでしょうか?理化学辞典(岩波書店)で調べると、「物質系の状態変数の間の関係を示す図」と説明されておりますが何かこの説明だけでは十分に理解できないですね。すなわち、固相(solid phase)、液相(liquid phase)および気相(gaseous phase)と温度(temperature)や圧力(pressure)などとの関係を物質の化学組成や状態変化に対してそれらの共生や共存あるいは安定状態を示す図と説明されているようです。一般的には、横軸に組成(化学成分の割合)をプロットして、縦軸に温度をプロットした2成分系の状態図が色々な解析に用いられます。 多くの方は大学の専門課程で学んだことと思います。最も理解しやすい1成分系の水(H2O)の馴染みのある「状態図」から複雑な多成分系の「状態図」の解釈まで奥深い技術の理解が必要になります。水の状態図の場合には、氷、水そして水蒸気がどのような温度と圧力で安定であるかを知ることができ、これらの3相が平衡状態で共存する特定の温度と圧力を示す3重点を知ることができます。 鉄鋼業界などでも状態図の正しい理解は非常に重要であるので、特に鉄(Fe)に炭素(C)を含有させて鉄鋼の強度や物性を調節するためにその理解や解析などにも使われます。もちろん、火山の噴火に伴う溶岩の源であるマグマの安定性やその物理学的な性質に対しても状態図の理解は極めて重要となりますね。高温・高圧で地殻下部やマントル付近において固相状態で変成作用を受ける広域変成岩に対しても状態図を用いた解析が非常に重要であり、岩石を構成する鉱物の化学組成やマグマの結晶分化作用などを理解するためには必要不可欠な解析技術となっています。 著者は、大学2年生(関東では2回生とは言わない)の時にこの状態図を初めて知りました。当時は専門課程の岩石学の講義の中で久城育夫先生と都城秋穂先生の共著の岩石学T〜V(共立出版)で勉強しました。岩石学Tでは偏光顕微鏡の理論やその使い方を学び、また岩石学Vでは状態図の見方を定量的に丁寧に学びました。その後、修士課程に進んでから、1979年にW. H. Freemanから出版されたW. G Ernst著書の“Petrologic phase equilibria”を何度も読み直して状態図を用いた解析方法を学びました。 大学の授業ではケース・スタディとして色々な組成に対して、反応関係や相転移などについて平衡状態と非平衡状態を想定しながら定量的な解析方法を習得しました(つもりになりました)。大学院の修士課程の試験は大学4年の9月と翌年の3月に2回ありましたがどちらも惨敗でした(9月は勉強不足そして3月は大風邪で絶不調ため)。そして学部4年で留年を決意して翌年の学部5年生の9月に再挑戦して合格しました。状態図の定量的な解析については何度も特訓してついに全問正解にたどり着きました。それ以降は博士課程の時もまた民間企業に就職してからもどんなときにも自然と状態図が頭の中に出てきて三角図を用いたケース・スタディをしながら実験を行い顕微鏡を覗きながら理論的な詰めを完成させていきました。 やはり研究室の先輩や同期には状態図や相平衡での解析のプロフェッショナルのような者ばかりでしたので、紙面に描ける1〜3成分系の状態図から実体視をしながら解析する4成分系以上の多成分系の状態図までとことん詰めていきました。1986年に民間企業に就職しました。 さあ、そこから状態図を用いた解析法の実戦での活用です。その2に続きます。 下図は実体視ができますので挑戦してみて下さい。
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