「この頃、天気晴朗なれども波高し」 | |
「この頃、天気晴朗なれども波高し」 今回の表題は、あの大日本帝国海軍の東郷平八郎の率いる連合艦隊が、明治37年に日本海でロシアのバルチック艦隊を撃破した折に、艦隊参謀であった秋山真之海軍中佐が大本営に通信した「・・・本日天気晴朗なれども波高し・・・」の銘文を引用してみました。結局は、至近距離まで迫ったバルチック艦隊の主力戦艦を訓練を重ねた正確な砲撃で打ち破った訳ですが、今回の投稿では、こうした意味もちょっと加えてみようかと思います。 よく、科学者や技術者に対しては、自分たちが長年に渡り調査や研究をしてきたことは、1つずつきちんとまとめて、論文や報告書に記載して、1つの仕事を完遂したとすると言われます。私が、大学や大学院の教育課程を通して学んできた指導教官がいつも話されていたことは、「ちょっと仕事をかじっては、きちんとまとめないで、次の興味のあることだけを摘み食いする。これでは、本人も周囲に対して認めてもらえない。」と言うことであったと思います。 自分自身を振り返ってみると、恩師の言われた技術者や研究者としての基本を何とか維持しようとしてきたつもりだったような気がします。すなわち、出張したら必ず報告書を提出する。1つの調査や研究が終わったならば必ず技術報告書を提出する。こうしたことが、技術の裾野を広げ1つ1つの技術内容のレベルを上げ、また自分自身の存在を周知させ、結果的には自己の評価につながると信じて、従来の60歳定年越えた雇用延長の62歳の現在も行っています。 私は、不思議と50歳頃から、技術報告書を執筆することが好きになりました。というか、自然に考えがまとまり、次々と文章が湧き出てくるようになったと思います。丁度、脳が、「準備できたら書きなさい」とキーボードを操作する指先に指令を出しているようです。技術的な内容の論理展開(ロジック)を書いていくことが面白くてたまらないような状態なのでしょうね。最近は、同時に、異なる技術分野の論理展開を2〜3報で交互に執筆しているようです(パソコンのキーボードを叩く手先の動きが追いつかない感じがします)。現在の年金制度との絡みでは、65歳の本当の定年まであと3年ちょっとになりました。さあ、あと、いくつの技術報告書を執筆できるだろうか? とにかく、今は、書くことが非常に楽しい。得られた結果に基づいて論理展開をして考察して行く。仮説が実証され、さらに高度な論理展開が進められる。そして、その結果が実業に対して効果をもたらし、あるいは少しでも役に立てれば、「やって良かった」と思う。もちろん、そうした意味での成功の打率は、それほど高くないと思う(多くは将来の事業開発の糧となっている)。こうした中でも、原稿を提出した相手に、「ありがとう」と言われたら、自分自身の次の糧(パワー)となる。 そんな訳で、雇用とか待遇とか世間の厳しい現実はあるが、「晴れ渡る空」に向けて技術の論理展開を打ちまくっているのであろう。まさに、「天気晴朗なれども波高し」と言った感じである。 1つの仕事が完遂したらきちんとまとめよう。それが、結果的には、自らの成果となり、自分自身の技術レベルを着実に向上させていく。そして、成果がまとまれば、1つの世界となり、自然と自己増殖が行われる。 上記の文章は著者が62歳の現役時代に執筆したものです。 2023年8月15日 |
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「天気晴朗ナレドモ波高シ」 秋山真之(日本海軍の参謀)名言の一部 |
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