「遊び心」 | |
「遊び心」 皆さんは仕事に「遊び心」を持って臨んでおられるだろうか。ここで言う「遊び心」とは、いわゆる「遊びほうける」ということではなく、仕事の中に「厳しく・楽しく・逞しく」という言葉があるならば、いわゆる「楽しく」という意味での「遊び心」である。 もう40年以上も昔になるが、既に時効であると思うのであえてこの場でお話をしようと思う。大学4年生の時に、岩石鉱物学の専門課程の教室において新任の助教授と初めて会話をする機会があった。そのとき、助教授は、私を含めて数名の学生をどの程度のレベルの学生と思って話したのかは定かではないが、「君たちはまだ4年生であり専門の鉱物のことはほとんど知らないでしょう。しかし、私は鉱物や結晶のことは何でも知っているので粉末X線回折パターンを見れば、一目でどんなものかはわかるよ。」と言われた。 鉱物学が専門である方はご存知の通り、40年以上前でも粉末X線回折による結晶の回折パターンは何万種類もあり、特定の岩石に含まれる鉱物のX線回折パターンと言われれば同定できる可能性もかなり高いが、「何万種類の中の単なる結晶では決してわかるまい」と思って実験室にある角砂糖のX線回折パターンを測定して見せたことがあった。もちろん、岩石鉱物学の新任助教授には蔗糖(Sucrose)のX線回折パターンはわからず回答できなかったが、その事件を契機に助教授が我々学生とも真剣に議論をしてくれるようになったのは大きなメリットであった。今でも測定データが物語る結果というものを非常に強く感じるようになったのもこのようなきっかけがあったからであろう。 話は変るが、私流に考えてみると、研究や仕事に「遊び心」を持つことはある意味での「ひらめき」や「心の余裕」を持つことにつながり、その中から新たな展開や枝葉の成長や発見があるものだと思っている。だから、納期の迫った「背水の陣」のような状態になっても、常に大逆転を秘めている「遊び心」は大切にしたいと思っている。むしろ、こうしたことで、今まで伸ばそうとしていた幹よりもちょっとしたきっかけで見つけた枝葉の方が大きく成長したりすることもあるようだ。 「遊び心」を持つためには、いつも多くの現象や結果に積極的に興味を持たなくてはならない。しかし、このようなアクションや姿勢は、いわゆる通常とは異なった現象(例えば異常現象とか言われる)や、全く反対の結果などを生じさせる可能性もある。しかし、このようなときには、それらの結果を「誤り」であると思って廃棄してはいけないと思っている。こうした結果の中から、今までの常識を打ち破る大きな発見があると思っている。 私が、助教授に行った「遊び心」は、いわゆる不純な動機によるものであるが、こうした新しい発見は純粋にアプローチして行っても良いものであると思っている。「遊び心」の中には、異分野の友人との議論も含まれる。案外、自分では「できない」と思っていることも、異分野から見れば大した垣根ではないらしい。すなわち、これらのハードルをいくらでも低くしてくれる。そして、実際に行動すると案外上手くできるものである。 仕事や研究は、もちろん顧客や企業のためにするように思うが、もうひとつ、自分自身の成長のために利用することが最終的にはビジネスの目標に向かっても大きなメリットを持つものであると思っている。常に、自分自身を磨くためには、磨くための未熟な部分を持っていることが必要である。これが「遊び心」であり、そのような活性の高い部分を表面に持ちながら、その内部には成長した部分(考え方や技術や技能など)やさらに内部には確立させた部分(自分の固有技術)を持ちながら、常に新しい技術に向かってアプローチをして行きたいものである。 *本文は、著者が現役時代(2016年頃)に執筆した原稿に加筆修正を行った文章です。 2022年11月28日 |
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オフとオンは大切です オフで思いっきり好きなことをする。ストレス解消はこれに尽きます。 写真は作製中のNゲージのレイアウトです。 |
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