again 「アゲイン」


 again 「アゲイン」

 
“again”は、英和辞典で調べてみると、「再び」とか「もう一度」とかに訳されている。そして、”never again”とは、「二度とない」という意味であるらしい。

 そういえば、私が子供の頃に、多分、小学生か中学生の頃だったと思うが、正確には1970年から2年間にわたって週刊少年サンデーに連載された楳図かずおさんの漫画で
「アゲイン」という物語があった。老人が開発された若返りの薬である「アゲイン」を風邪薬と間違えて飲んで、高校生の自分に戻って、恋愛とか遊びとか、過去に自分ができなかったことをやりたい放題するという設定であったと思う。個人的には、同じ漫画家の作品である「まことちゃん」的なキャラクターのイメージもあり(実際には「まことちゃん」は1976年から連載が開始されたので後の作品であるが)、作風に対する好みの問題から(なんとなく下品な場面が多かったように覚えている)、私は最後までは読んでいないのでその結末はわからない。

 そのような中で、
「バック・トゥザ・フィーチャー」は1985年に公開されたので、この映画の15年以上も前に似たような物語を漫画にイメージした作品が日本にあったことは、ある意味で誇るべきものではあるが、ジュール・ヴェルヌの「タイムマシン」の物語も当時はすでにあったので、過去や未来に瞬間移動するということは、多くの人の関心の高い題材であったのであろう。

 我々は、よく、「あの時にこうしていたら良かったかも知れない」とか、あるいは、「こうあって欲しかった」などと思うことが多々ある。もちろん、私も、皆さんと同じように「過去の反省」や「過去の行動に対する後悔」をよく考えたり感じたりするであろう。

 よく例題として出されるのであるが、第二次世界大戦の太平洋戦争において、「あのミッドウェー海戦で日本の航空母艦が4隻とも沈められなかったならば、日本は敗戦しなかった」ということもある。また、こうした題材を用いて、if(もし)という設定で書かれた小説やコミックも沢山出版されている。

 しかしながら、よく考えればわかることであるが、もう過ぎ去ったことは二度と戻って来ない。楳図かずおさんの漫画の
「アゲイン」のようになれば、それ自身は面白いことではあるが、本当に奇跡が無ければ歴史を遡ることは起こらないであろう。さらに、若返って、そして子供の頃の自分に戻って、自分自身の人生がやり直されるので、さらにその段階から、100年近く生きることは肉体的には同じように若返るので良くても、その反面、精神的にはかなり厳しいと思う。まるで、200年以上も生きている仙人や魔女のようになってしまいますね(冗談ですが・・・)。

 さて、皆さんは、「過去」、「現在」そして「未来」の中で、何が最も大切であると思いますか?その答えは、間違いなく「現在」であります。しかし、「現在」は、瞬間的に「過去」の結果になってしまいます。すなわち、私たちは「過去」には戻れませんので、その反省を「近未来」で生かして、そして「現在」を生きて行くしかないのです。

 そのためには、5年や10年先の「未来」の自分自身の立ち位置を大まかに想定して、私たちの手か届くような「近未来」(どのくらいの未来かは個人によって異なるとは思いますが)に対してきちんとした計画性を持って、「現在」を楽しむことが大切であるし、また重要であると思います。どんな場合でも、「現在」は、
”never again”であり、また1度しかありません。そんな訳で、やはり、「過去」に対する悔やみは残ります。しかし、自分自身の人生に対しての大局(立ち位置)を大きく変えなければ取りあえずは「よし」とします。そのような積み重ねで、「未来」の自分が「現在」から「過去」への流れの想定した中に存在していれば、「良いんだよ」、と、私は信じておりますし、また信じたいです。

「近未来」を見据えて、”never again”となる「現在」を楽しもう

 *本文は、著者が現役時代に執筆した原稿に基づいた文章です。

 2022年3月22日

アゲイン(全3巻)
著者・作者:楳図かずお
掲載雑誌:週刊少年サンデー、発行元:小学館
アゲイン(全3巻)
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