最終章:旅立ち


いつの間にか寝ていたようだ。目が覚めると朝になっていた。

体も動く。……時間は!?あまり遅いと、村人が集まり出発しにくい!

「ようやく起きた?ギルバートの荷物はこれだけよね?」

声のしたほうを向くとアイリスが立っていた。外に出る扉のすぐ前だ。

「俺の分も支度してくれたのか!?」

「これからお世話になるんだもの、これぐらい私がやらなくちゃ!」

……笑って言ってるが……俺の荷物はかなりあったはずだ。

有給三か月、その期間山ごもりができるほどの荷物を持って、組織を出た。

特に食料は全部出して、アイリスの家に有った物と一緒にしていた。

アイリスは、それどころの騒ぎではすまない。今まで住んでいた所から必要な物をすべて運ぶ。

しかも一度外に戻ると、戻る事はできない……。

一体いつから……支度を始めたのか………。

「早く行きましょう!思ったより時間がかかっちゃった、もうすぐ村人が起きて来るはずよ!」

「もうそんな時間か!?」

感傷に浸っている場合じゃない。今この村を出るのは最優先事項だ!

アイリスはもう、この村では生きていけない。障害が多すぎる。

「悪い、すぐに行こう!」

立ち上がって扉を開け、外に出た。まだ薄暗い。

「………」

「行こうぜ!」

扉を開けて外に出た後、アイリスは家の中を眺めていた……。

「そうね……。行きましょう!」

無理してるな……。今まで住んでいた所から、急に知らないところに住まなければならない。

その不安は大きいはずだ。なのに……俺にそのそぶりをほとんど見せない。

「一言、言っておく。いくらでも俺を頼っていいからな」

「大丈夫よ!ありがとう」

元気そうにそう言ったが……辛いのは隠したままか……。レグルスには、話すんだろうか。

「アイリス……」

前を見ると、レグルスがいた。アイリスがレグルスを見る。

「僕のやった事で、こんな事になって……ほんとうにごめん!」

突然座り込んで頭を下げた。……彼も原因を作ったとはいえ辛いはずだ。

アイリスのためにした事が、完全に裏目に出た。幸せになったのは自分1人だけ。

自責の念に苦しむはずだ。そして、たぶんアイリスは。

「私の為にやってくれたんでしょ!?どうして謝るのよ!?

私こそ、お礼を言わないといけないじゃない!」

やっぱり、責めない。それ以前に、レグルスのせいで追い出されるなんて思っていないのか……。

「追い出されるのは私の責任よ!こうなるのはわかっていたわ!」

いや、責任は無いだろ……。むしろレグルスに感謝されるべきだ。

「感謝するのは僕のほうだよ……このままにはしないから」

「え?それって……」

「早くせんか!村人は見送るなんてやさしい事はしてくれんぞ!」

アイリスが口を開いたところで、長老の声がした。こっちに走ってきている。

「村人が起き出す頃じゃ!話している暇は無い。走るのじゃ!」

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