水ベシ 選鋼

水ベシ

水ベシって何だと思いますか?
 刀などを作る時、鋼の質に応じて選別をするのですが、水ベシはその準備作業の名前です。「ヘス」と云うのは平らに延ばすことです。その前に水が付いています。これは水に入れて焼を入れる事を意味しています。

材料が玉鋼の場合
 いくら玉鋼といっても、必ずしも均質で「のろ」(鉄を作るとき出来る鉱滓=スラグ)のない物ばかりではありません。そこで材料の鋼の塊を火床で加熱して、厚さが5〜6ミリ位の厚さの板状になるまで薄く打ち延ばし、表面に出来た金肌を水打ちをして吹き飛ばし、最後に焼を入れます。こうする事で材料の地鉄を細かく打ち砕く事が出来ます。

材料が 卸鉄の場合
 卸鉄の作業で下り切った地鉄には、途中で出来た酸化鉄の「のろ」が含まれている場合があります。そこで「沸かし」(わかし=地鉄に藁灰や泥をつけて、火床の中で地鉄が溶ける寸前まで温度を上げること。)をかけて中の「のろ」を絞り出しながらまとめて行きます。この辺りが玉鋼とおおいに異なります。「のろ」を効率よく絞り出せるのは最初の塊の状態のときで、地金が崩れない程度に強い沸かしをかけるのには経験が必要です。四角い固まりの状態になれば更に強い沸かしをかけて、「のろ」を絞り出します。後は厚さが5〜6ミリ程度になるまで薄く叩き延ばし、表面をきれいに水打ちをして表面の金肌を取り除き、焼きをいれます。この辺りは玉鋼と同じです。


水ベシが終わった地鉄

選鋼

 水ベシの終わった地鉄は、金敷きの上で叩いて2〜3センチ角位に小割りにして、破断面を見ながら選別します。介在物が少なく十分な炭素を含む地鉄はきれいに割れ、その破断面は白っぽい鼠色です。炭素量が十分でない部分は焼きが入りにくいので、きれいに割れなかったりします。また、不純物を含む場合は破断面に層状にノロが見えたりもします。

 こうして簡単に割れて、破断面に「のろ」の見えない、きれいな鋼だけを選別して皮鉄用に集めます。又叩いても割れない、ねばい部分は芯鉄用に使い、不純物の多い部分は鍛錬用のてこ棒の燃えてしまう部分に使ったり、もう一度卸鉄の材料に回したりします。

 地鉄の品質を保つのには、この選鋼方法は最も原始的なやり方ですが、反面最も確実な方法です。自家製鋼で全ての地鉄をまかなう様になった今でも、下げを行った後、この行程は継続して行っています。


選鋼の様子

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