そば関係の史料とデータ (その1)  < サイトへ

江戸時代の穀物相場と蕎麦の相場を比較する
 
米・小麦・大豆と蕎麦の相場を比較する資料
     江戸時代の蕎麦の相場(値段)や米や小麦などの値段がわかる資料は極めて少なく、とりわけ、具体的な数値を挙げてそれらを比較対比して論じたものには出くわさなかった。ここではわずかな史料の寄せ集めではあるが当時の穀物相場の比較を試みている。蕎麦を基点にして米・小麦・大豆・粟・砂糖など江戸時代の主要物価の動態でもある。

1.米・小麦・大豆の比較資料

    「主たる参考文献」
      近世後期における主要物価の動態[増補改訂] 
              三井文庫編
      三井大阪両替店の旧帳簿「諸相場之控」より 
             東京大学出版会

  金一両=銀60匁=銭4貫(4000文)寛永の頃
          銭5貫(5000文)明和の頃
          銭10貫      慶応年間

                              
 年代     
肥後・加賀・筑前
一石に付き 銀匁
 小麦  


一石に付き 銀匁
   蕎麦 
信濃・佐久郡


 そば

もり・かけ 
 文 
享和 1801〜   60〜65   55〜60 


文政4年 金一両につき
一石七斗   二石


(23.5〜20文/一升)





.
 16文 
文化 1804〜  60〜65   50〜55   〃 
文政 1818〜  55〜60   40〜50   〃 
天保 1830〜  70〜130   70〜130   〃 
弘化 1844〜  70〜100   55〜70   〃 
嘉永 1848〜  85〜120   〜80〜   〃 
安政 1854〜  85〜120   〜85〜   〃 
万延 1860〜 130〜170  100〜150   〃 
文久 1861〜  〜150〜   〜140〜   〃 
元治 1864〜   150〜    150〜   〃 
慶応 1865〜  〜1400   〜 800   24文 
           
蕎麦の項については      
     長野県史(近世3)  長野県編平成元年刊
     風流大名蕎麦より


2.江戸期の貨幣相場
 混在する種々の貨幣と貨幣相場江戸時代は金貨・銀貨・銭貨からなる貨幣が使われ、三貨幣制度と呼んでいる。
三貨それぞれの交換相場(比率)が各地で独自に立てられ、時代によって変動した。
幕府がきめた公定相場
慶長14年(1609)に 金一両=銀50匁=銭4貫文
元禄13年(1700)に金一両=銀60匁=銭4貫文と定めている
度量衡    量(容積)
一石=10斗 1斗=10升 1升=10合

   小麦  蕎麦
 一石につき
  銀 60匁 
 一石につき
  銀 50匁 
 

3.天明3年(1783)11月 兎園日記(曲亭馬琴など編)
          日本随筆大成
 奥州三戸郡南部内臓頭殿領分八戸の恵比寿屋善六よりの書状
玄米 一升に付 二百五十文    大豆 同 百五拾文  搗粟 同 弐百三十文
蕎麦 同 百廿文    片舂(ツキ)麦 同 二百文     粗稗(アラヒエ) 同 百文
当地凶作前代未聞御座候、相場は市毎に引上ゲ、右之通何品によらず、
食物に相成候類、過分之値段に御座候間・・・・
4.天明年度凶歳日記(日本近世飢饉志所収)
     日本食物史< 下 > 近世から近代
  現・青森県西津軽郡の状況より
  値段甚だ高値にて
  一匁に 米は三合五勺  大豆は六合
  蕎麦は九合  小豆は三合

5.安政6年10月
  惣御買入御品物直段附葉
  真米 三合に付 砂糖一斤替    栗 六合に付
  蕎麦 五合に付  小麦 二合五勺に付
  大豆 三合に付  砂糖一斤替

6.天正2年(1574)
  米三石八斗代銀一枚(甲斐国誌)
  素麺十二把代百文(多門院日記)

7.唐津藩  佐賀県 「唐津市史」近世(復刻版)より
*サイト「唐津にゆかりの城物語」の中から
米と主なる農産物の概算(課税の目安)

  大豆
  小豆
  蕎麦
  小麦
  大麦
  壱石参斗
  壱石弐斗
  壱石
  壱石五斗
  壱石
 
  米壱石
    〃
  米五斗
  米一石
  米八斗


以上の資料を単純比較すると.
   蕎麦 小麦
天明3年(1783)
 一升につき
250

2.1
120
0.5
200
0.7
1.7
文政  (1818)
 一石につき
55

2.5
21.8
0.4
1
45
0.8
2.1
安政6年(1860)

  
3合

1.7
5合
0.6
2合5勺
1.2
唐津藩
 享保(1716) 寛政(1789) 天保(1830)など江戸期
1石  

2石  
0.5
1石5斗
0.7
1.3


8.永井荷風の日記   「断腸亭日乗」
        昭和21年7月26日から

 「札幌より其他の物価を手紙にて書越せし
     人あり・・・」とあって
  白米    一升     三十五円
  小麦粉   一升      十五円
  蕎麦粉   一貫目     六十円

 *但し 昭和20年10月1日
          熱海食料品闇相場では
  白米    一升      七十円
  小麦粉   一貫目     二百円

 *昭和22年2月20日 この頃の物価
  白米    一升      七十円

 *昭和22年4月14日 この頃の相場
  白米    一升      九十円

 *昭和23年4月7日  この頃の相場
  白米    一升      二百円
   いずれも「断腸亭日乗」から



蕎麦粉が小麦粉よりも高かった(小麦粉の方が安かった)としているケースは
藤村和夫著

旨い!手打ちそばに挑戦
老舗の元主人が教える
「江戸手打ち」の技法
    「その二」

江戸時代の文書では・・
  一升に換算
蕎麦粉

一升 百二十五文

うどん粉の約2倍
割粉用うどん粉

三升二百文(一升67文)

うどん粉よりも二割方安い
うどん粉80文?
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