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 ダッタンソバ (韃靼蕎麦)

ダッタンソバの特徴
 ダッタン(韃靼)ソバは、普通ソバと同じタデ科ソバ属の一年生草本の植物で、どちらも原産地は中国雲南省からヒマラヤ周辺が起源とする説が有力である。
普通ソバの花は白く、異型花柱性)自家不和合といって虫媒による他家受精植物であるのに対してダッタンソバの花は淡緑色で、雌しべとおしべの長さが同じで自家受精植物という遺伝的な違いが認められる。また、花や実は普通ソバよりも小さく、その粉は黄色で苦味があるのも特徴である。
 日本では、ダッタンソバの栽培について多くの記録はみられないが、世界で見渡すと、中国では四川省や雲南省、東チベット、ネパール、ブータン、ロシアなど多くの国々で栽培されている。
「ダッタンソバ」は日本固有の名前(*注:)
 ダッタンソバという名前は日本だけの呼び方で、中国では「クーチャオマイ(苦ソバ)」、チベットでは「ギャブレ」、ネパールは「ティート・バーバル」とそれぞれの名前で呼ばれている。
ラテン語の学名は「ファゴビラム タータリカム、ゲルトネル(Fagopyrum tataricum Gaertner)」で、ラテン語の「タータリカム」を日本語に訳した「タタール人の:ダッタン人の」が日本での呼称となった。
ファゴビラム」は「ソバ属」、ゲルトネルは命名者の名前。
(*注:以降は、柴田書店編・片山虎之介著 「ダッタン蕎麦百科」から引用した。)

ダッタンソバの栄養  ルチンとケルセチン
 中国の四川省(や雲南省)には、ダッタンソバを主食にしている高地の少数民族がいて、生活習慣病の発生率が極めて低いことからにわかに注目を浴びるようになり、苦味のある特徴から「苦蕎麦・ニガソバ」ともいわれ、このソバに含まれるルチンが普通ソバに比べて数10倍〜100倍も多いことがわかってさらに注目されるようになった。
  ルチンは、生活習慣病の予防に効果があるといわれる成分で、高血圧予防効果や抗酸化作用、血流改善効果などが期待されている。
 いささか各成分の効能を強調しすぎるかたちになるが、これらを説明している記述では、まずルチンは血管の脆弱性を矯正し毛細血管や動脈の弾力性を高め血圧の上昇を抑える働きがあるといわれている。
さらに、最近の研究では、ルチンを分解するルチナーゼという酵素によって生成されたケルセチンの機能性(抗酸化作用や血糖値の上昇を抑えるなど)が注目されはじめた。

ダッタンソバの普及
 日本では一般的に、脱皮して煎ったダッタンソバ茶としての飲用と、そば粉と同じように麺にされることも多くなっている。ただ、ダッタンソバ粉だけでは苦味が強いので普通そば粉と混ぜるのが一般的であるが、乾麺はもちろんのこと手打ちのダッタンソバも話題のひとつである。この他にも菓子類、パン類など健康食品としての効果を期待しての利用法が増えている。
さらに、品種改良による国産種でスプラウト(もやし・発芽野菜)や乾燥粉末原料としての用途も広がっている。

ダッタンソバの栽培
 正徳2年(1712)頃の和漢三才図会」という類書(百科事典)につぎのような記述がある。
「苦蕎麦(にがそば)〔俗に田蕎麦という〕『本草綱目』に次のようにいう。苦蕎麦は南方に産する。・・緑色を帯びた花を開く。実も蕎麦に似てやや尖っているが、稜角をつくるほどにはとがっていない。味は〔甘・苦、温で小毒あり〕。・・磨き搗いて粉にし、蒸して・・黄汁を滴りおとして取り去る。」とあり、食べ方としては団子にして食べるが、色は猪(ぶた)の肝のようである。穀類としては下等で、飢饉のときの飢餓を救うためだけのもので、今は栽培する者はいない。恐らくはこれは今いう田蕎麦のことであろうか・・・。と記録されている。
この書物は大坂の医師寺島良安によるもので中国の『三才図会』を範として書かれている。
 「苦蕎麦=田蕎麦」には疑問をはさむ余地があると思われるが、江戸時代の早い時期に「ダッタンソバ」が凶作・飢饉のための救荒穀物として一部で栽培されたことのある記録だろうと考えられる。

日本におけるダッタンソバの栽培について
 *以下は北海道ダッタンそばの会」が発行する冊子・第4版のなかから引用させていただいた。(ほとんど、丸写しです。)
 日本でダッタンソバが文献に登場するのは、正徳2年(1712)頃の「和漢三才図会」であり、栽培の記録では「小石川植物園草本目録」(東京大学・1877)でいずれも「苦蕎麦」の名で書かれているそうです。
実用栽培の起源は必ずしも明確ではないそうだが、岩手大学の笠原順二郎名誉教授によって、1988年に岩手県九戸郡軽米町で始まったとある。
 「北海道におけるダッタンソバの栽培の現状」について
 北海道で初めてダッタンソバが栽培されたとされるのは1995年で、札幌の長命庵 森清氏によって札幌市西区で無農薬有機栽培をめざして試験栽培したのが始まりで、さらに厚田、蘭越、当間、砂川、八雲方面などの契約栽培で広がっていった。
現在では、道北の留萌郡小平町、紋別郡雄武町、旭川市、砂川市、上川郡美瑛町、十勝地方では河東郡上士幌町、上川郡新得町、十勝郡浦幌町、それに道東・北見市や道央・札幌市、さらに胆振地方では勇払郡安平町、道南・茅部郡森町など広範囲で栽培されているという。
なお、ダッタンソバの栽培面積は平成22年で約250ヘクタールと推定されわが国のダッタンソバ栽培面積の大半を北海道が占めるそうです。ただし、普通ソバの国内自給率が約22・3%であるのに比して、ダッタンソバのそれは10%強程度だそうだ。

 *「北海道ダッタンそばの会」について
 ダッタンソバの移入栽培に尽力してきた薬膳そば「長命庵」森氏の呼びかけががきっかけで平成15年に札幌市で設立された。ダッタンソバの普及活動を行っている。現会長・川端習太郎氏、会員数108名。

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