補足資料

人工授精と受精卵移植(過剰排卵処置による)―岩手県での研修を基にー

 人工授精は精子を購入して行なうが、様々な血統のものが価格あり、その中から最適なものを選ぶ。これは、血統によって生まれ

てくる子牛の能力(乳量や足腰の強さなど)がある程度決まってしまうからである。


 一般に雌牛は一生涯で10頭程度しか子牛を産めないため、どんなに優れた能力を持った雌牛であっても、その子牛を短期間に

量に増やすことは難しい。そして、雌牛側からの品種改良は困難であった。それを変えたのが受精卵移植という技術である。諸外

と比べて土地や資源、高賃金等の制約の多い日本の畜産経営が、今後とも消費者に高品質で安心できる国産畜産物をより

安い価格で供給していくためには、重要な技術となっている。


 受精卵移植は、ホルスタインの受精卵を移植してから1週間後くらいに取り出して、性別を調べ雌であれば、他の妊娠可能な状態

の牛に移植する方法である。過剰排卵処理(注)をして一頭の牛から多くの受精卵を取り出し、一度に20〜30頭くらいに移植できる

ため、乳量の高い牛の子供を多く産ませることができるという利点がある。ただし、この方法で移植された牛の受胎率は人工授精よ

低く、3〜5割くらい(人工授精は5~8割)である。受精卵を回収する技術や性判別技術、移植技術など、人工授精よりも高い

技術が必要なので、経費は高くなる。また、より価値の高い和牛を多く産むために和牛の受精卵をホルスタインに移植するF1種とい

うものもある。これは受胎率、経費とも人工授精と普通の受精卵移植との中間の値である


(注)過剰排卵処置   

 自然排卵の場合、牛は通常1回の発情で1個の卵子しか排卵しないため、卵巣に多数の卵胞を発育させるホルモンを注射する。

次に排卵を促すホルモンを注射して卵子を排卵させる。

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