「物語の世界」のおもしろさを見つけよう(5年)
川 那 部 隆 徳

 「空想の世界」「筆者の世界」を包含したものを「物語の世界」としてとらえ、そのおもしろさに気付かせることを主眼とした学習である。(参照…本紙8月号、「説明文の世界」のおもしろさを見つけよう
 「『物語の世界』のおもしろさを見つけよう」は、年間を通した学習テーマである。物語としてのおもしろさが特徴的にあらわれた一つひとつの作品についてその世界のおもしろさを見出しながら、様々な物語を読み、最終的に、「物語の世界」のおもしろさについて解説文を書く計画をしている。
 今回は、「ちかい」(東書5年)から登場人物の心情や筆者の主張を読むことのおもしろさを考えることをねらいとして学習を構成した。一人ひとりが大事な言葉に着目しながら、そのおもしろさを見出し、「物語の世界」にひたることができるようにはたらきかけた。

【授業展開の流れ】
第一次 物語との出会いB 「ちかい」の世界に関心を持つ。
第二次 自力読みB 物語の読みどころを見出し、自分の読みをつくる。
第三次 相互学習B 各々の読みを交流して、考えを深める。

【「ちかい」から「物語の世界」のおもしろさを考える話し合い】
T 「ちかい」を読んで「物語の世界」のおもしろさはどんなところにあると思いましたか。
C 最初ヤミーナは、ハンターになりたがっていたけれど、ゾウとの出会いから、最後にはハンターにはならないと決心したように、出来事から人物の気持ちが変わっていくところがおもしろいところだと思います。
T ヤミーナはどうして、考えを変えたのだろうか。
C 最初ヤミーナは、ハンターの格好良さにひかれて、ハンターになりたいと思っていたけれど、子ゾウの母親がハンターに殺されたり、自分もハンターにねらわれたりして、獲物としてねらわれる動物の気持ちがわかったからだと思う。
C ヤミーナは、自分が母親のいない子ゾウを守ろうとする気持ちが強くなったのだと思う。
C 「そっと、自分自身にちかった」とあるように、みんなに言うんじゃなくて自分の心の中でそっとちかったわけで、口に出して言うよりも決心は固いと思う。 (後略)

 「物語の世界」のおもしろさにひたる過程で、場面の展開を読み取る力、登場人物の心情や筆者の主張を考える力を育成することができると考える。
(滋賀大学教育学部附属小)