第33回国語研究集団合同研究会提案内容
「説明文の世界」のおもしろさを見つけよう(5年)
川 那 部 隆 徳

 説明文のおもしろさの一つは、「未知なる世界」を言葉を通して疑似体験したり、言葉を通して事物や人物にふれたりすることができるところにある。また、「筆者の世界」つまり、筆者の考えにふれ、さらに自分自身の考えとを摺り合わせながらテーマについて考えるところにも説明文のおもしろさがある。本学習では、「未知なる世界」「筆者の世界」を包含したものを「説明文の世界」としてとらえ、そのおもしろさに気付かせることをねらいとして構成した。

 薬師寺は、1300年前に建立されたが、戦国時代、戦火のために東塔を除く全ての建物が焼失した。1970年、400年来の悲願であった大規模な再建計画がスタートし、日本各地から一流の職人たちが総動員され、叡智と研ぎ澄まされた技術を結集した。

【授業展開の流れ】
第一次 「千年の釘にいどむ」(光村5年上)や「幻の金堂 ゼロからの挑戦」(NHKフプロジェクトXジュニア版)を読んで、「薬師寺再建の世界」に関心を持つ。(4時間)
第二次 薬師寺再建に関する読み物を選択して読む。「鉄、千年のいのち(抜粋)」(草思社)を読んで鍛冶職人白鷹幸伯氏、あるいは、「木のいのち、木のこころ・天(抜粋)」(草思社)を読んで宮大工棟梁西岡常一氏の思いにふれて、それぞれ感想をまとめる。(2時間)
第三次 読み物の感想を交流しながら、「説明文の世界」のおもしろさを見つけ、薬師寺再建を例として、「説明文の世界」を解説したり、他のドキュメント作品を読んだりする。(5時間)

【「説明文の世界」のおもしろさについての話し合い場面】
T 今回、薬師寺の再建に関連していろいろな読み物を読んだことから、「説明文の世界」のおもしろさはどんなところにあると思いますか。
C ○○の作り方などであれば、様々な発見、例えば、作るコツなどの発見があること。
C 説明文には新しい発見や意外な発見があり、1つの話題について詳しくわかる。
C 問いと答えがあって、問いを読んだときに先が読みたくなる。
C 物語には、登場人物の気持ちがよくあらわれているけれども、説明文には、「かなしい」「楽しい」「うれしい」などの人物の思いが直接書かれていなくても、言葉の一つひとつにその人物の思いがかくれている。(後略)

 「説明文の世界」のおもしろさへの気付きが、主体的に様々な読み物や筆者の考えにふれようとする子どもの育成につながるだろう。
(滋賀大学教育学部附属小)